しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「七色の毒 刑事犬養隼人」  中山七里

2020年10月14日 | 読書
「七色の毒 刑事犬養隼人」  中山七里    角川文庫    
 
7編からなる連作短編集。

「赤い水」 
中央自動車道を岐阜から新宿に向かっていた高速バスが防護柵に激突。
1名が死亡、重軽傷者8名の大惨事となった。
運転していた小平がハンドル操作を誤ったとして逮捕されるも、警視庁捜査一課の犬養は事故に不審を抱く。
死亡した多々良は、毎週末に新宿便を利用する際、いつも同じ席に座っていた。
やがて小平と多々良の過去の関係が明らかになり……。
     <文庫本裏カバーより>

「黒いハト」
中学校の屋上から飛び降りて保富雅也が自殺する。
苛めを学校側は否定するが、雅也の親友の東良春樹が全校集会で訴え複数の生徒が証言する。
雅也の両親が高輪署に被害届を提出し、警察が介入することになる。
春樹は苛めの首謀者が父親が都議会議員をしている影山健斗だと犬養に告げる。

「白い原稿」  
ロック歌手で、ビブレ大賞という新人文学賞を受賞した篠島タクが公園脇のベンチでナイフで刺されて死んでいるのが発見される。
新人賞は出来レースだと噂され、受賞作の『うつろい』は話題となってベストセラーになる。
発見から3時間後、荒馬シュウトが自首して来る。
荒馬は作家のタマゴで、篠島のせいで自分がビブレ大賞を逃し作家になれなかったのを恨んでいて、ベンチで寝ているのを偶然見つけて刺したという。
しかし、死因は凍死と分かる。

「青い魚」
父親の後を継いで釣具屋になって帆村亮。
45歳でこのまま釣具屋の親父で一生を終えるかと思っていた時に出会った、20代の本橋恵美。
お客として店に来たのが始まりだったがあっと言う間に親しくなり同居。
その内、なんでも屋をしているという、恵美の兄由紀夫もいつの間にか居座っていた。
やくざな亮の弟照之は、そんな2人は財産目当てだから追い出せという。
そして、亮、恵美、由紀夫の3人でハギ釣りに船を出し事件は起こる。

「緑園の主」
河川敷のホームレスの男、黒沢公人のブルーシートの家が放火される。
黒沢は命は取り留めるが全身火傷で入院する。
黒沢は前から中学生の集団に狙われていた。
その集団での首謀者、小栗拓真が下校途中に毒により死亡する。

「黄色いリボン」
小学4年生の桑島翔は、授業で〈性同一性障害〉のことを聞いて、安心した晴れやかな気持ちになる。
翔はお化粧をして、ワンピースを着て女の子になるのが好きだったからだ。
その時の名前はミチル。
両親も認めてくれるが、外での行動は団地内と限られ他に人には秘密にする約束をしていた。
そんなある日、ミチル宛のDMが届き、知らない男に「桑島ミチルちゃんだね」と声を掛けられる。
翔は混乱する。
なぜ架空のミチルに。

「紫の供花」
タクシー会社に勤めていた高瀬昭文が自宅で殺害される。
高瀬は殺される前に、前に勤めていた会社の社長と何度か電話でやり取りしていた。
高瀬は1億円の生命保険に入っていて、受取人を樫山有希という20代の女性にしていた。
有希にとって高瀬は全く知らない人だった。





事件を捜査して、犯人を捕まえても、まだその先がある。
ドンデン返しの手法だが、この短編集に同じような、似た結末がある。
“これもそうなのだろう、きっと黒幕はこの人”と予想出来る。
それが勿体いない気もする。
始めから、この人が危ないだろうと思わせる物語も。
人を操り罪を犯させる悪人は、最も許せない人物として他の物語にも登場する。
ただ、その力が罪だけとは限らない。
人の気持ちの分かる“とても良い人”にもなれたのだ。あんな過去さえなければ。
「赤い花」の続編「紫の供花」。タイトルも続いている。
ちょっと毛色の違う「黄色いリボン」が面白かった。
翔が自分を乗っ取られると感じる所から、翔の気持ちが作られたものかもと思ったが。
あんな真実があったなんて。
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