しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「鏡の国」 岡崎琢磨 

2024年08月30日 | 読書
「鏡の国」 岡崎琢磨  PHP研究所  

2063年8月。
桜庭怜は叔母のミステリ作家、室見響子の担当編集者、勅使河原篤と叔母の遺作『鏡の国』に出版ついて、鎌倉の叔母の自宅で会っていた。
65歳で亡くなった叔母の最後の2年、世話をしたのが桜庭で、資産や著作権を相続していたからだ。
『鏡の国』は室見響子が小説家になる前に書いた習作で、ほぼノンフィクションだと言う。
勅使河原は、この小説には違和感があり、削除されたエピソードがあるのではと言う。
桜庭はもう1度、読んでそれを探る事になる。
『鏡の国』は、それぞれ苦悩を抱える同い年の4人の若者の物語。
元アイドルで小説家志望、今はウェブメディアで働く香住響、同僚の久我原巧。
配信者の新飼郷音。そしてイタリアンレストランのシェフ吉瀬伊織。
響と郷音は近所で、小学4年の時の夏休みに1か月だけ祖父母の家に来ていた伊織も加わり、3人は幼馴染だった。
しかし、その夏休みに郷音の家が火事になり、顔に火傷を負った郷音は引っ越し、3人はバラバラになる。
響はその火事の原因を作ったのは自分だと、ずっと罪悪感を抱えていた。
それから15年経って、響の仕事が縁で3人は再会する。
再び親友になれるのか、微妙な空気間の関係は、同い年と言う事で久我原も加わり、進展していく。
そして、ある会話から、あの時の火事が放火だったのではないかとの疑惑が浮かび上がる。




物語の中の物語がある。
それに違和感があり、削除されたエピソードがある。
それを探りながらと言う事で、自分も何か辻褄の合わない所が見つかるのかと気を付けながら読んで行く。
当然、作者は香住響なのだろうと思ったが、わりと早い時に何となくここらへんかなと。
ミステリ作家と言う事だが、全然ミステリではないと思っていたら、15年前の謎解きが始まる。
それまでは、身体醜形障害や相貌失認、郷音が顔に火傷の痕があると言う事で、見た目や心の問題がテーマなのかと思った。
勿論このテーマも重要なのだが。
謎解きは丁寧だが、やはり15年たって真相が分かるのはどうも都合が良過ぎるというか、証言が滞ることなく現れて、あっという間にたどり着く。
やっぱり犯人が動き過ぎるが良くない、藪蛇。
物語が終わってもその後にもう一つ、現実の謎があるのだ。
削られたエピソード、隠された謎。
それが長々と書かれるのだが、どうもそれがピンと来ないというか、それがどうしたと言う感じになってしまった。
驚きもなかった。
相手の印象が、自分が2年接していれば、他人から本当はこうだったと言われて変わるものだろうか。
本当の所も垣間見える時はあっただろうに。
自分の感覚が正しいと思えないのだろうか。
不思議に思ったのは、自分の夢を託すのに、アイドルというのはあるかも知れないが、作家になると言う事を託すだろうか。
作家になりたかった人は、それで書くことを止められるのだろうか。
ちょっと違うような気がする。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「蜘蛛の巣の罠」 ラーシュ... | トップ | 「朽ちないサクラ」 柚木裕子 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事