しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「きのうの世界」  恩田陸  

2010年01月20日 | 読書
「きのうの世界」  恩田陸    講談社

「塔と水路の町」M町は昔の佇まいを残した静かな田舎町。
町には三つの塔があったが、一つは壊れたままで放置されていた。
その町はずれにある“水無月橋”で1人の男の刺殺体が発見される。
その男は色川と名乗り東京から地質調査にやって来ていたと話していた。
しかし実際は1年前に、失踪した38歳の会社員市川吾郎、だった。
市川はこの町でゆったりと過ごし、町の歴史に興味を示していた。
その市川がなぜ殺されたのか、謎のまま犯人も捕まっていなかった。
そして、市川のことを調べに、M町に1人の女性がやってくる。



恩田さんの世界らしく、謎めいた雰囲気。
時間は前後しながら、登場人物が語ることによって、少しずつM町のことや市川吾郎のことが分かっていく。
分かって行くと同時に謎も深まって行く。
調べに来た女性の正体も始めは分からないし、殺人事件の真相や、三つの塔のこと。
他にも謎めいた町で、その雰囲気だけでもわくわくする。
きっと最後まで、はっきりとしたことは分からないだろうと予想した。
何か不思議な現象が起こるのだろうとは思っていたが。
それが恩田さんの世界だと。
ところがその予想に反して、一応説明の付く物語になっていた。
殺人事件もしっかり説明が付くのだが。
納得が行くような気もするが、反対に気持ちはすっきりしない。
今までの好きだった雰囲気と違ってしまった感じがする。
隠したい真実と、塔の使い方もいまひとつな感じ。
隠すならもっと上手い方法がありそうな。
曖昧なままでも良いから、怪しげな雰囲気を残して欲しかった気がする。

M町の秘密は、ちょっと似たような感じが京極夏彦さんの「百物語」にあったこと思い出す。
こう言うことは昔からあるのかも知れない。

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