しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「湖の男」  アーナルデュル・インドリダソン 

2018年09月04日 | 読書
「湖の男」  アーナルデュル・インドリダソン   東京創元社   
 KLEIFARVATN       柳沢由実子・訳

干上がった湖の底で発見された白骨。
頭蓋骨には穴が空き、壊れたソ連製の盗聴器が体に結びつけられている。
エーレンデュル捜査官たちは、丹念な捜査の末、ひとつの失踪事件に行き当たった。
三十年前、一人の農業機械のセールスマンが、婚約者を残し消息を絶っていたのだ。
男は偽名を使っており、アイスランドに彼の記録は一切なかった。
男は何者で、なぜ消されたのか?
過去にさかのぼる捜査が浮かび上がらせたのは、時代に翻弄された人々の哀しい真実だった。
    <単行本カバー見返し側より>








湖が地震の影響で水位が下がる。
そして見つかった白骨には他殺の痕跡。
それは誰なのかを探すエーレンデュル警察犯罪捜査官。
失踪事件と言えば、エーレンデュルとなっているらしい。
30年程前の白骨と推定され、その頃、1970年前後の失踪者を調べ始める。
それと並行して語られるのが、冷戦時代東ドイツの大学に留学したトーマスの物語。
アイスランドは戦後、アメリカ軍が駐留していたが、それに反対する思想もあった。
そんな考えの若者に社会主義を学ぶ為に東ドイツに留学させ、自国に帰ったら共産主義の主導者となるように。
しかし、そんな大学にも相互監視があり、反対の思想を持つ者を警戒する。
社会主義の理想と現実の違いについて悩み始めるトーマス。
ハンガリー人の留学生、イローナと恋人になったトーマスはハンガリーの情勢も知る事になる。
そんなトーマスの物語と現代の物語との係りが少しずつ分かり始める。
白骨体が誰だったのかも、こちらには推理しやすくなる。
しかし、それらがあまり重要には感じられなくなる。
それは、東ドイツでのトーマスたちの生き方の方が興味深かったからかも知れない。
この頃の北欧の歴史は、冷戦時代の社会主義と民主主義の国の間で翻弄されている。
この時代の歴史を知っていれば、もっと興味深くなるのだろう。
エーレンデュル自身の物語も、なかなか大変な状態で進行中。
いつか、落ち着く時が来るのだろうか。

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