W杯誤審問題とトーマス・ブルスィヒ『サッカー審判員 フェルティヒ氏の嘆き』 その3

2014年06月23日 | スポーツ
 トーマス・ブルスィヒ『サッカー審判員 フェルティヒ氏の嘆き』を読む。

 W杯開幕戦での誤審問題がかまびすしいが、サッカーの審判と言えばこの本であろう。ということで、久しぶりに再読してみた。

 東ドイツの作家ブルスィヒによるこの作品は、タイトル通りブンデスリーガの審判を務める男が主人公。

 で、この人が審判という仕事の大変さについて、ひたすらボヤいてボヤいてボヤきまくる。

 ズルをする選手、ささいな失敗をあげつらうマスコミ、無責任に罵声を浴びせるファン、サッカーのことなど知りもしない頭カラッポの女子アナ、安い給料、などなどについてを、これでもかとグチりまくる。天に向かって叫ぶ。

 「世の中、アホばっかりやあ!」。

 物語はそうしたサッカー界の裏側をひたすらボヤきながらも、そのうちに失った家族や法の正義とは、人間の守るべきルールとはなにかという話へと転がって……。

 同じ作者のサッカーを題材にし、しかも社会派な展開を見せる作品には『ピッチサイドの男』がある(→こちら)。

 それとくらべると『フェルティヒ氏』のほうは、同じ暗めの展開ながらも、『ピッチサイド』には感じられた、どこか(自虐めいているとはいえ)ユーモラスな空気がほとんどんどなく、その点であまりオススメできなかったのだが、この「W杯誤審事件」のあとで手に取ると、なんだかものすごくリアルに感じられるなあ。

 あのプレーと判定には色んな意見はあろうけど、この本を一読すると「まあ、そらあっちはあっちで色々言いたいこともありますわな」と苦笑してしまう。

 特にサッカーみたいな世界的に注目度の高い競技は、さらに大変。まあ、次の試合で良い笛を吹いて取り戻していただきたいものだ。

 


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