まずはトリビア的クイズをひとつ。
「吸血鬼ドラキュラ」
「ターザン」
「銭形平次」
「オズの魔法使い」
「火星人」
「クトゥルフ」
「切り裂きジャック」
「夏目漱石」
「アルセーヌ・ルパン」
これらに関係ある、ある世界的にも有名な人物とは誰でしょう。
ヒントはイギリス人。
最後の3つで、ピンときた人はいるかもしれない。
答えは、
「名探偵シャーロック・ホームズと競演したキャラクター」
並べてみると、「お仲間」といえるルパンや銭形はともかくとして、その他は文豪から邪神まで、笑ってしまうくらいに一貫性がない面々である。
主戦場がミステリのはずのホームズが、なぜにてこのようなボーダレスな、バラエティーあふれまくりのメンバーと、からむことになっているのかと問うならば、ここに「シャーロキアン」という言葉がかかわってくる。
「シャーロキアン」
ミステリファンには常識のワードだが、知らないという人に一応説明しておくと、彼ら彼女らはシャーロック・ホームズの世界に、ドップリとはまった人々。
タテヨコナナメ、あらゆる角度から研究している、マニアたちのことなのだ。
ちなみに英国では「ホームジアン」になる。
シャーロキアンたちは本で、ネット上で、いつものキャフェのテーブルで、様々にホームズ論を語っている。
そこでは、
「ホームズ物語を時系列に並べる」
「ホームズの食事リスト」
「名前だけ出てきた事件の内容を想像してみる」
といった楽しそうなものから、
「ホームズとアイリーン・アドラーには隠し子がいる」
「本当はホームズではなくワトソンが事件を解決している」
「ホームズとワトソンは実は男同士でつきあってまーす」
なんていう妄想まで、百花繚乱である。
もちろん、こういった説はガチな研究というよりは、どちらかといえば粋人の「遊び」であるが、そうした熱狂的ともいえるホームズフリークの方々が、その愛のために「俺ホームズ」の物語を書くと、これがカオスになる。
同人誌みたいなノリだけど、山田風太郎みたいな名のある作家でも
「ホームズもの書きたい!」
名乗りを上げているケースもあるから、あなどってはいけない。
そのたびにホームズは、切り裂きジャックと戦ったり火星に行ったりするわけである。人気者は大変だ。
ホームズにかぎらず、「名探偵」という存在は「パロディ」「パスティーシュ」と仲が良い。
北村薫先生はエラリィ・クイーン・リスペクトの驚愕バカミス『ニッポン硬貨の謎』(泣きました。北村先生、超カッコイイよ!)を発表し、芦辺拓さんは『明智小五郎対金田一耕助』を書いている。
そう、みんなやりたいんである。
私だって、友人と文芸同人誌作ってたとき、クラーク・キャメロンとかアンドリュー・ソープとかJ・J・レインの小説書こうかって考えたものなあ。
かように、ホームズをはじめ名探偵といえば、とにかくやたらと、そのパスティーシュ作品があるもの。
きっと他にも、私の知らない「ホームズ対〇〇」みたいなものが、探せば山のようにあるに違いない。
和製探偵との競演とかは基本か。
「シャーロック・ホームズ対はぐれ刑事純情派」
「シャーロック・ホームズ対片平なぎさ」
「シャーロック・ホームズ対女王陛下のプティアンジェ」
ベネディクト・カンバーバッチには、ぜひ来日して活躍してもらいたい。
あ、「シャーロック・ホームズ 対 アニメ版犬ホームズ」もあるかもなあ。
広川太一郎さんと露口茂さんの「ええ声」対決で大いに盛り上がりそうである。
一番見たいといえば、これか。
「シャーロック・ホームズ 対 世界のシャーロキアン」
なんか、すごいことになりそうである。番外編としては、
「コナン・ドイル 対 世界のシャーロキアン」
ドイル先生、いやがるだろうなあ(笑)。
どこか、腕のあるシャーロキアン霊媒師がいたら、ぜひ実現させてほしいものだ。
(続く→こちら)