鳥越規央『9回無死1塁でバントはするな』を読む。
野球の世界では「バッティングの基本はセンター返し」や、「左打者には左投手」といったセオリーがある。
この本は、そういった「常識」が本当に正しいのかどうか、マイケル・ルイス原作の映画『マネーボール』で有名になった「セイバーメトリックス(野球統計学)」によって検証していくというものだ。
本書を手に取ったのは、野球に関して、昔から不思議に思っていたことがあるからだった。
それは、「高校野球、バントしすぎではないか」。
私はとりたてて野球好きというわけではないが、子供のころは夏休みのヒマつぶしに、甲子園の試合などテレビで観戦することがあった。
そこで気になるのが、バントである。
とにかく高校野球ではバントをする。ランナーが出れば送りバント、バント、バント、バント。
これが、いつも不思議であった。いくらなんでも、バントしすぎではないのか。
『和をもって日本となす』のロバート・ホワイティングさんのように、
「バントはつまらない。日本野球はバント禁止令を出したらどうか」
とまではいわないけれど、それよりも根本的に、
「この場面でバントって、どう考えても損なんじゃね?」
と、つっこみたくなるケースが、多々あるのだ。
たとえば、ノーアウトのランナーが出る。すかさずバントで送る。これはまあ、いいとしよう。
これが1死でランナーが出ても、バントさせる。
そりゃ、スコアリングポジションにランナーを進めたい気持ちはわかるが、当然ツーアウトになるわけで、それって得なのかいな?
時には4番バッターにもさせる。打率3割とか4割とかでも、平気で1打席捨てさせる。
しかも、9回裏の負けているときとかにも。なんてもったいない!
これが1点を争うシーソーゲームならまだしも、高校野球の場合はそれ以外のケースでも送りバントを行う。
中盤くらいで大量リードをされていても、バントするのはどうなのか。そんな悠長なことで間に合うのか。
私が見た甲子園での試合では、6点リードされてる試合とかでも、ノーアウト、ときにはワンアウト1塁でもバッターはきちんとバントしていた。
どう考えても利敵行為だと思うが、解説の人は、
「いいですね。まずは1点ずつ返すことですよ」
感心したように語っていた。
まずは1点って、そんなの全然遅すぎる気がするし、ワンアウトをタダであげて相手は楽ではないか。
27アウトの「寿命」を減らしてるってことだと考えると、ずいぶんとリターンが少ない気がする。
そもそもバントしたからって確実に点が入るとは限らないし、1点返した次の回で2点取られたら(だいたいが今負けているんだから、その可能性も大いにある)いつまでたっても追いつけないし、それってホンマにええ作戦なんかいな。
実際、その試合では、バントで返した1点など焼け石に水で、その後も点を取られて、12-2くらいで負けていた。なんだか、見ていて物悲しいものがあった。
などなどといった、私のような素人が思いつくような基本的な疑問を、本書ではわかりやすく解き明かしてくれる。
「先頭打者にヒットと四死球ではどちらが悪いか」
とか
「ノーボール2ストライクで1球はずすべきか」
などの、やはり「昔から気になっていた」お題も、データを見ると「あー、やっぱそうなんやー」と興味深い話が多いが、ことバントに関してもやはり……。
(続く→こちら)