「昭和のアイドル映画」
というジャンルで最強なのは、『怪盗ルビイ』である。
映画の楽しみはストーリーやアクションとともに、ヒロインの魅力というのも大きい。
『カサブランカ』におけるイングリッド・バーグマンの可憐さや、『アパートの鍵貸します』のシャーリー・マクレーンのファニーな顔。
他にも『ローラーガールズ・ダイアリー』のドリュー・バリモア姐さんにホッケーのステッキで尻を叩かれたいとか。
『裏窓』のグレース・ケリーに、足が折れて動けないことをいいことに、靴にそそいだトマトジュースを無理矢理飲まされたいとか
あと『ヒット・ガール』のクロエ・グレース・モレッツ(広瀬すずちゃんでも可)に「おまえはゴミ人間だ」とののしられながら、高速アクションでボコボコにのされたいとか、そういったヒロインの活躍が作品を大いに盛り上げてくれるのだ。
そんなわけで(どんなわけだ)、魅力的なヒロインというのは、すぐれた映画には欠かせないファクターなのだが、その中でも「アイドル映画」というジャンルになると、「ヒロインも大事」ではなく、むしろヒロインこそが大事。
というか、それがすべてで、極端な話、アイドルがかわいく撮れていたら、あとはへっぽこぴーな内容でも充分に成立しているのだ。
何度もリメイクされている『時をかける少女』や『セーラー服と機関銃』なんかがその代表だが、個人的な1位をあげればこれが『怪盗ルビイ』。
私はミステリファンなので、原作であるヘンリー・スレッサーの『快盗ルビイ・マーチンスン』を手に取った方が先だが、短編の名手で大好きなスレッサーを、『麻雀放浪記』の和田誠さん(先日亡くなられたそうで吃驚しました、ご冥福をお祈りします)が監督するとなれば、これはもう見るしかあるまい。
となったのだが、これが鑑賞後、思わず声をあげてしまったものだ。
「いや、これはなんか、小泉今日子メッチャかわいいやん!」
私は昔から、アイドルという存在にさほど興味がない。
もちろん、単純に見てかわいい、というのはわかるけど、どうもそれだけでなく、その後ろにある「業」(吉田豪さんの『元アイドル!』の世界的な)みたいなものが苦手なのだ。
なにかこう、「光と闇」のギャップがすごすぎて、ひいてしまうというか。
だから、昭和のキョンキョンだナンノだおニャン子だというのは、名前と顔くらいは知ってても、歌やドラマ、映画などはほとんど知らない。
当時の数少ない「推し」といえば、『月刊コンプティーク』に連載を持っていた小川範子さんくらいで、このチョイスを見ても私がいかにメジャーロードのアイドルから離れていたか、わかろうというものだ。
だが、そんなアイドル音痴をして、ただただ「かわいい……」と絶句させたのだから、この映画のキョンキョンの破壊力はすごい。

丸顔で、ジーンズが似合う。ぱっつん前髪はあざとくて好きじゃないけど、この映画のキョンキョンだけは例外。
セクシーなシーンとかもまったくないけど、それがまた上品でよい。髪型のバリエーションも豊富で、もう全部かわいい。
今の自分は新垣結衣さんが好きなんだけど、そことくらべてもホントいい勝負だ。どちらを選ぶべきか、優劣はつけがたい。
いやあ、すばらしい映画だぞ『怪盗ルビイ』。内容自体は、まあ、たわいないっちゃあたわいないんだけど(原作もライトなノリだしね)、
「アイドル映画は、アイドルがかわいく撮れてることが命」
なわけだから、その意味ではまさに、ライムスター宇多丸さん流に言えば100点満点で5億点の出来だ。
ちなみに、引越のシーンでちょこっと映るキョンキョンの愛読書は、
ヘンリー・スレッサー『うまい犯罪、しゃれた殺人』
ロバート・ブロック『血は冷たく流れる』
コーネル・ウールリッチ『夜の闇の中へ』
レイモンド・チャンドラー『湖中の女』
山田宏一『美女と犯罪―映画的なあまりに映画的な』
小鷹信光編『ブラック・マスク 異色作品集』
ロバート・ブロック『血は冷たく流れる』
コーネル・ウールリッチ『夜の闇の中へ』
レイモンド・チャンドラー『湖中の女』
山田宏一『美女と犯罪―映画的なあまりに映画的な』
小鷹信光編『ブラック・マスク 異色作品集』
『ブラック・マスク』ってアータ!
それ以外もハヤカワ・ミステリ文庫にポケミスも山ほど持ってて、シェリイ・スミス『午後の死』とか、レイモンド・ポストゲートの『十二人の評決』とか。
レスリー・チャータリス『聖者ニューヨークに現る』とか、クレイグ・ライス『居合わせた女』とか、もっかい読みたいから貸してくれないもんか。
こんだけかわいくて、こんなディープなミスヲタなんて、素晴らしすぎる。もう結婚して!