カンボジアの観光名所アンコールワットは、とっても笑える遺跡です その2

2020年10月03日 | 海外旅行
 前回(→こちら)の続き。
 
 カンボジア観光の目玉である、アンコールワットに出向いた私。
 
 ここに発動されたオペレーション「インドラの雷」だが、出動前から、ひとつ危惧があった。
 
 それはズバリ、
 
 
 「アンコールワットのこと、よく知らん」
 
 
 私はこう見えて、アジアの歴史にくわしくない。
 
 大学受験は世界史で受けたが、日本の偏った歴史教育のせいで、欧米列強中国のそれはそこそこ知っているものの、アジアやアフリカといった地域や国については空白である。
 
 カンボジアとか、ぶっちゃけ一ノ瀬泰造カメラマンの『地雷を踏んだらサヨウナラ』や映画『キリング・フィールド』など、戦争虐殺のネガティブなイメージしか持たないのだ。
 
 そこで、ガイドブックと首っ引きになって回ることになる。
 
 最初は、そんな本の通りに歩くなんて楽しくないのではと思っていたが、あにはからんや。
 
 他の街や遺跡はいざ知らず、ことこのアンコール遺跡群にかぎっては、絶対にガイドブックを読みこんで回った方がおもしろいはずだ。
 
 いや、もちろんアンコール遺跡の壁画なんかは非常に精密な技術により彫られているため、単に見ているだけでも面白いが、その内容というか、物語がわかると、格段に興味がわいてくる。
 
 さらにいえば、壁画の中にちょこちょこ入れこまれた「小ネタ集」みたいなのも理解できるようになる。
 
 で、このゲームにおける「隠しアイテム」みたいな小ネタが、私的には超おもしろかったのだ。
 
 たとえばバイヨン寺院には、昔のクメール人の軍隊日常生活などが表現された、歴史的意味の深いレリーフが存在する。
 
 
 「魚を焼く人」
 
 「海戦を戦う兵士」
 
 
 といった、当時の世相を表現していて歴史学的に意義のある情報がつまっているのだが、その中で整列している兵士たちにまぎれて、ひとりいぶかしげな表情で後ろを振り返っている人がいる。
 
 表情も、あきらかに「なんやねん!」といったツッコミが入っているのだが、これがガイドブックによると、
 
 
 「カメにかまれて痛がっている人」
 
 
 バイヨンといえば巨大な人面像とか、ヒンドゥーの神話、上座部仏教の仏像など、それはそれは貴重なアイテムが目白押し。
 
 まさに歴史ロマンの塊なのだが、そこにカメにかまれて痛がっている人。
 
 どんなセンスなのか。
 
 しかも振り返って、「カメかい!」とツッコミを入れている。
 
 これから戦争に行く大行進なのに、緊張感のないことおびただしい。
 
 他にも、
 
 
 「戦争に負けて泣いてるシャム兵」
 
 
 とか、もうめちゃくちゃガッカリしていて、すごい笑える。
 
 もう見ていて、「そない落ちこまんでも」と肩でもたたいてあげたくなるくらい。
 
 それはルーブルモナリザでも、ミケランジェロの「ピエタ」でも感じたことのない、圧倒的な親近感
 
 いやホント、思わず「元気出せよ、メシおごるぜ」って声かけたくなる。
 
 クメールの兵隊を見ても、整然と行進しているように見えて、ところどころ「おい、押すなよ」みたいに後ろに文句言ってる人とか。
 
 あとに乗ってたけど、振り落とされて「あーれー」みたいになってるエレファント・ライダーとか。
 
 よく見るとところどころ、ギャグというか、そういう「遊び心」みたいなものがあふれているのだ。
 
 これが実に楽しい。ただでさえ、ふつうに興味深いバイヨンの遺跡なのに、そこに
 
 
 「みんなで探してね!」
 
 
 といわんばかりの、お笑いポイントがあるのだ。これを見つけるのが、えらいことハマる。
 
 私は人間は文化言語などで様々に隔てられていても、その内実は日本でもアフリカでも南米でもあんまり変わらないと考えていて、「人類みな兄弟」ならぬ、
 
 
 「人類みなほどほどにマヌケ説」
 
 
 を唱えているが、このバイヨンの壁画はまさに、その哲学を補完してくれるものであった。
 
 今も昔も、人は勇敢に戦ったり負けて泣いたりする反面、カメにかまれたり象から落ちたりするし、それをイジって楽しむイチビリもいる。
 
 1000年前がそうだった、も大して変わらない、そしておそらく、1000年後も似たようなものだろう。
 
 この「歴史的遺産」「人類の宝」と位置づけられる場所も、かつてはクメールのスットコ職人たちが、
 
 
 職人A「今日も暑いなー、こんな日は仕事なんか、やってられへんで」
 
 職人B「せやなー、そこでこんなん彫ってみました」
 
 職人A「なんやこれ?」
 
 職人B「これはな、カメにかまれて痛がってる人や」
 
 職人A「アッハッハ、なんでそんなもん作った(笑)」
 
 職人C「こっちも見てくれ。これは象に乗ろうとして、ウッカリ落ちてるねん」
 
 職人A「マヌケなレリーフ作るなよ! きっと、この象使いは彼女かなんかが見学に来てて、イキってたんやろな」
 
 職人D「負けてられへんな。じゃあワシは悲しむシャム兵やな」
 
 職人A「いやいや、どんだけ泣いてるねん! 今にも甲子園の土を集めそうやな!」
 
 職人E「じゃあオレも、なんかおもろいもん彫ろうっと」
 
 職人D「やろう、やろう。で、みんなで写真撮って、boketeに投稿しようぜ!」
 
 
 なんて、やりとりをしていたのだろう。なんてステキな世界遺産。
 
 こうして私が、この偉大なアンコール遺跡群から受け取ったものは、
 
 
 「悠久の歴史」
 
 「悲惨な内戦を耐え抜いたシンボル」
 
 「過去と未来の架け橋になる想い」
 
 
 などと同時に、クメールのボンクラ職人たちによる、
 
 「見てくれオレのギャグセンス
  
 という古代からの中2病的メッセージなのであった。
 
 
 
 
 (続く→こちら
 
 

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