カンボジアの観光名所アンコールワットは、とっても笑える遺跡です その3

2020年10月05日 | 海外旅行
 前回(→こちら)に続いて、楽しいアンコールワットのお話。
 
 私は常々
 
 
 「アンコール遺跡群は大爆笑のステキなところ」
 
 
 という説を唱えているが、前回はまずバイヨンの遺跡における「カメにかまれる男」などを題材に、それを語ってみた。
 
 こうなるとやはり、ご本尊ともいえるアンコールワット自体のゆかいなところも紹介せねばなるまい。
 
 こちらもバイヨンに負けない、極上の爆笑ポイントがあるのだ。
 
 ここに発動された「雷号作戦」により、アンコール遺跡を3日かけてじっくり見たが(ワットとトムは2回も見た)、やはりハイライトともいえるのは、アンコール・ワットの第一回廊に描かれた「乳海撹拌」のレリーフであろう。
 
 「乳海撹拌」とは古代インドの大叙事詩『マハーバーラタ』や『ラーマーヤナ』に出てくる、ヒンドゥー天地創世神話
 
 ざっくりいうと、神話時代には「アムリタ」という不老不死の薬があった。
 
 これをめぐって神様たちとアスラ(悪鬼)がチャカポコ戦っていたわけだが、いつまでたっても決着がつかないので、双方ともにヴィシュヌ神仲介を依頼。
 
 そこでヴィシュヌ神のいうことには、
 
 
 「どっちも、まあ一回落ち着いて。そこは協力して、海をかきまぜてみなさい。さすればアムリタは手に入るやもしれんね」
 
 
 町内のもめごとを、丸くおさめてもらおうと相談したら、ケンカはやめて、餅つき大会でもやって親睦を深めたらどないですやろ、と言われたみたいなものか。
 
 そうと決まってはりきったアスラは、大亀怪獣クールマを立て、大蛇ヴァースキを巻きつけてかきまぜ棒とした。
 
 日本の怪獣でいえば、惑星アップルから来た怪獣オニオンキングトータスカメーバでも可)に乗って、宇宙竜ナースを使って海をかきまぜるわけだ。
 
 で、アスラが大蛇の神々尻尾をつかんで、「いっせーのーせ!」でグリグリやると、大雨が降りだして、やがて海はミルクで一色に染まる。
 
 このあたりはいかにも「母なる海」のイメージだが、さらにかきまぜるとバターになって、中から太陽とかとか動物とか、要するに「今の地球」がそこから飛び出して、最後にとうとうアムリタがポンと出現。
 
 「それや!」の合図とともに、神々とアスラは第2ラウンドの戦いに。
 
 そこからは双方戦ったり、だましたり、かけひきがあったりして、最後は神々が勝つらしいんだけど、説明がめんどくさいので省略
 
 むちゃくちゃザックリまとめたけど、まあだいたいこんな感じなんですね。
 
 不老不死めぐって展開でバトルがあって、そのどさくさで地球が生まれた。
 
 で、「乳海撹拌」のシーンがアンコールワットの回廊に彫られているんだけど、これがどう見ても綱引きなんです。
 
 単に写真だけ見てもゴチャゴチャしてわかりにくいんで、明快にまとめたPEACE IN TOURさんの図を借りますが、
 
 
 
 
 
 
 
 
 右側神々左側アスラたちがバルタン分身みたいにズララララララっと50人くらい並んで(これだけでもスケールがでかい)、でかい大蛇代わりに引き合ってる。
 
 いや、写真を見ていただければわかるんですが、これがもう例えでもなんでもなく、ひたすらに「綱引き」。
 
 運動会とかで、先生とPTAの人たちが「オーエス!」いいながらヒーヒー引っぱってたのと、寸分変わらない光景なんですよ、コレが。
 
 まず、ここで大爆笑
 
 真ん中には仕切りヴィシュヌ神がいるんだけど、また、これがどこからどう判断しても「審判」なんですわ。
 
 双方の綱にそっと手をそえて、「ズルすなよ」みたいな顔でバトルを見下ろしている。間違いなくアンパイアです。
 
 上に「小ヴィシュヌ」みたいな神様が飛んでるんだけど、たぶんビデオ判定用の撮影をしてるね、アレは。テニスで言うラインズマン
 
 これを見たときの、私の感動はいかばかりか。
 
 世界の創世神話
 
 我々がこの大地に誕生したきっかけというのが、処女受胎でも神の声を聴いたのでもなく、「綱引き」というのがすばらしすぎるではないか。
 
 なんたるビジュアルイメージ。そういえば、日本もイザナギイザナミがなにかをぐるぐるかき混ぜてできた島らしいけど、元ネタはここか。
 
 すごい。壮大で、そして、どんなにかマヌケで笑えるんだ!
 
 みなが壁画と首っ引きで、
 
 
 「オー、グレイト……」
 
 「ワンダフル……」
 
 
 言葉を失う横で、ボンクラ日本人がひとり、腹をかかえて大爆笑。
 
 思わず、「ランランあかかて、しろもかてー」と歌いたくなる。なんてステキなんだ、アンコールの大遺跡よ。
 
 この光景を見て、カンボジアに来てよかったと、つくづく思った。
 
 不老不死をめぐり、ヴィシュヌ神の鶴の一声で大綱引き大会となり、そのどさくさに生まれた地球と生命。
 
 運動会の騎馬戦で、子供たちがあちこちでつかみ合って戦っているところ、ポケットからコロッと落ちたビー玉が、地球みたいなもの。
 
 ほのぼのと美しく、そして笑える
 
 アンコールワットといえば、
 
 
 「悠久の歴史」
 
 「悲惨な内戦を耐え抜いたシンボル」
 
 「おとずれたとき、感動で涙が止まらなかった」
 
 
 などといった感想で語られがちだが、やはり私としてはそういった重量感よりも、古代クメールの人からの1000年の時を超えた、
 
 
 「宇宙ができたのは、神と悪魔の運動会のおかげですねん」
 
 
 というキュートなメッセージにこそ、賞賛の念を送りたい。
 
 
 
 

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