連休にイタリアの児童文学はどうでしょう ジャンニ・ロダーリ『猫とともに去りぬ』

2018年04月25日 | 

ジャンニロダーリ猫とともに去りぬ』を読む。

イタリア文学というと日本ではさほどなじみはない印象だが、幻想文学ではイタロカルヴィーノ

 また『薔薇の名前』で、ヒットをかっとばしたウンベルトエーコなどなど、なかなかの実力者を擁している。

ジャンニ・ロダーリもそのひとりで、イタリア児童文学界の重鎮。

 この短編集も、主に子供向けに書かれたっぽいものだが、ページをめくるとなかなかどうして、大人が読んでもいけるクチである。

 ロダーリの武器は、そのフワッとしたユーモア。

 いわゆる大人の童話というか、やさしいホラ話というか、のほほんとしたボケがツッコミなしでフワフワとただよう、なんというのか「ええ塩梅」な物語たちなのだ。

 家に居場所がなくなったおじいさんが、になって第二の人生を過ごそうとする表題作をはじめ、この本に出てくる人たちは、とにかく独特なのだ。

 その設定からして不思議で、



 ★重量挙げの大会に出るのに、寝坊してはいかんと「急いで寝過ぎて」古代エジプト時代に目を覚ましてしまった男。
 

 ☆水没の危機に瀕した街で

 「じゃあ、みんなでになってしまえばいいんじゃね?」

 と決心して、水の中で暮らすようになった家族たち。



  ★銃の代わりに、ピアノで決斗するカウボーイ。

 

 なんか、おかしくて、かわいいのばっかり。

 「急いで寝すぎて過去に目を覚ます」って、すごい発想だよなあ。

 一番のお気に入りは『恋するバイカー』。

 文字通り、日本製バイクに恋した、金持ちのボンボンが主人公。

 世のマニアオタクと呼ばれる人は、その興味の対象を語るのに「恋する」と表現することはあろうが、この青年は本当にガチで「異性として」恋しちゃうのだ。

 なんたって、結婚まで決心してしまうというのだから、マジもマジも大マジメ。

 当然のこと、父親をはじめ周囲から大反対

 だが、そんなことで熱い想いを止められるはずもなく、恋する青年はついには「左のチェンジレバーのミーチャ」に乗ってかけおち(!)してしまい……。

 というドタバタ喜劇。

 トボけててバカバカしくて、それでいて読後感はほっこり幸せという薫り高い一品。もう読んでて、ニコニコが止まりません。

 この中で描かれる親子のやりとりが、私は大好き。

 ロダーリの持つ独特のフレーバーを、もっともよく表しているのではないかと思うので、ここに引用して本日の幕としたい。

 ステキな社長令嬢と結婚させたがっているパパとママに、キッパリと断りを入れる息子のセリフがコレ。



 「嫌だよ。バックミラーがないもの」

 

 

 

 


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