1990年ワールドカップ イタリア大会決勝 アルゼンチンvs西ドイツ&王貞治

2018年04月29日 | スポーツ

 ワールドカップ決勝戦といえば、思い出深いのは王貞治さんである。

 というと、野球ファンの方から、



 「あれは感動したなあ。あの強豪キューバ相手に勝った2006年でしょ」



 なんて熱く語られそうだが、そのことではない。

 私が語るのは1990年の決勝戦であり、いやいやそんな昔にWBCはないっしょ、と言われれば、それはその通りで、これは野球ではなくサッカーの話なのだ。

 舞台はサッカーW杯1990年イタリア大会

 というと、私と同世代くらいの方はニヤリとされるのではないか。

 なんとこの決勝戦のテレビ放映時、王貞治さんが特別ゲストとして実況席に招かれていたのである。

 サッカーのワールドカップに、元野球選手が出演。しかも、超がつく大物

 どういうチョイスなのか、当時でも違和感バリバリであった。

 なんで、こんなことになったのかといえば、今となっては考えられないことだが、当時の日本では、サッカーなどカポエラやポートボールにもおとる「ど」のつくマイナースポーツであったから。

 日本のW杯出場など夢のまた夢。Jリーグはまだなく、名作マンガ『キャプテン翼』の第一話では、大空翼君が「サッカーやろうよ!」というと変人あつかいされてハブられていた。

 そんなサッカー受難の時代だったので、

 

 「ゲストに大物野球選手」

 

 という売りで大衆の興味をひこうとしたのだろう。

 迷走感はバリバリだが、そういう時代だったのだ。

 そんな夢のサッカーと野球のコラボ企画だが、果たしてそんなものはうまくいくのか。

 王さんにサッカーを語れといっても、困るのではないかという声もあろうが、その危惧はかなり正しいものとなった。

 実際のところ、この「ゲスト王貞治」はかなり不思議な空気を醸し出していた。

 サッカーに関しては予想通りずぶの素人の王さんは、西ドイツ(これも時代だなあ)やアルゼンチンの選手が、どんなスーパープレーをしても、技術的にも思い入れ的にも、語ることなどないだ。

 まあ、ブッキングがそもそもおかしいのだから、王さんがうまく対応できなくても責任はないんだけど、なにやら気まずい空気が流れていたことはたしかだ。

 また、そのおかしさを助長させていたのが、実況の持っていき方。

 サッカーの素人、しかしスポーツ界では大御所どころか国民栄誉賞という超ビッグマンという、ふり幅が大きすぎるゲストをむかえて、アナウンサーもどうしていいのかわからなかったのだろう、話の振り方が

 むりくりに野球に例えようとするのだが、テニス卓球とか、柔道レスリングとか、多少似たようなところがある競技ならともかく、本質的に全然ちがうサッカーとベースボールでは、かみあうわけがない。



 「王さん、今の選手の動きはまるで野球のようですね」

 「王さん、野球は9人ですが、サッカーはそれより2人多い。なにかちがいは感じますか?」

 「王さん、野球には満塁ホームランという一発逆転がありますが、サッカーにはありません。そのあたりはどうお考えですか?」



 細かいところは適当だが、まあこういった内容のものばかり。

 話がつながってない。無茶ぶり方が、すさまじいではないか。

 もう私など、90分間ひたすらテレビの前で、



 「知らんがな」

 「どんなフリや!」

 「野球は関係ねーじゃん!」



 などと、つっこみを入れるのにいそがしく、試合内容がまったく入ってこなかったもの。

 スポーツ中継に芸人さんや旬のアイドルを呼ぶのは、正直ちょっとと思うことも多いのだが、その最たるである。

 ただ、偉いと思ったのは、王さんの対応

 普通なら、こんなトンチンカンなやりとりには、それこそ

 

 「なんや、この仕事は! ナボナはお菓子のホームラン王やぞ!」

 

 なんてムッとしたりしそうなところだが、ひとつひとつの質問に苦笑いしながらも、



 「ええ、同じスポーツとして共通するところは多いですね」



 みたいな、それなりの答えを返しておられたのだ。

 マジメというか、王さん大人やなあ。

 こんなこともあったので、ワールドカップ決勝戦といえば、私にとって思い出深いのは、リオネル・メッシでもアンドレス・イニエスタでもなく、王貞治なのだ。

 なぜかYouTubeに映像がなかったから(前はアップされてた記憶があるんだけど)、ロシア大会開幕前にでも再放送してもらいたいものだ。

 「世紀の大凡戦」と酷評された試合の方より、よっぽど王さんの方がステキです。




 ★おまけ 王貞治ファンといえば、この人。《コンバットRECさんによる【アイドルとしての王貞治】特集》は→こちらから




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