グレゴリ青山『深ぼり京都さんぽ』 バックパッカーと、インターネットの今昔

2022年09月30日 | 海外旅行

 「オレはネットがなかったら、海外旅行とかそんなに行かへんかもなあ」
 
 先日、近所の焼肉屋で、そんなことを言ったのは友人ヤオ君であった。

 海外旅行にかぎらず、なにをするにもインターネットを利用というのは、現代では当たり前の話である。

 旅をするにも、宿の予約から安い航空券の情報。現地情報も検索すればいいから、重いガイドブックを持っていく必要がなくなった。

 果ては、グーグルマップのナビで迷子にならないとか、翻訳機能で言葉の壁まで飛び越えて、海外に対するハードルがものすごく低くなったのはたしかだ。

 私も旅行好きだが、若いころはネットこそもうあったものの、スマホなどはなく、インターネットカフェを利用する必要があった。

 ただそれも、日本語対応のパソコンがなかったり、予約なども英語や現地語でやらないといけなかったし、場所によってはそもそも店がなかったりして、そんなに実用的でもなかったのだった。

 それとくらべると、今はもう別世界かというほど便利になったというか、キミとかネットなしで、よう外国とか行ってたな、てなもんである。

 そんな、新旧旅行者比較文化論のような話題になったのは、グレゴリ青山さんの『深ぼり京都さんぽ』という、エッセイマンガを読んだのがきっかけ。

 その中で、グレゴリさんがバックパッカー仲間の友人と、こんな会話を交わすのだ。

 

 「若い子に、インターネットもない時代によくバックパッカーしてましたねって言われてん」

 

 同じことを言われている。

 私はグレゴリさんより歳はだけど、ネットのあるなしでいえば、どちらも体験しているわれわれ世代だと、ジャンル問わず、こう言われることが多いらしい。

 続けて、グレゴリさんたちはこうも話すのだ。

 

 「でもウチらが若いころインターネットがなくてよかったと思う」

 「うん、ネットのない時代に知らん国歩けてよかったよね」

 

 

 

 

 

 

 

 「未知」のおもしろさか「便利」の快適さか。

 まあ、好みや意見はあるだろうが、これは時代によって色々と変わってくるだろう。

 「なにに影響を受けて」旅に出たのかというところでも、個性が出るところで、たとえば旅本の古典である『深夜特急』の沢木耕太郎さんは、小田実さんの世界放浪記『何でも見てやろう』に押されてユーラシア横断に出かけている。

 グレゴリさんの世代はNHKシルクロード』からアジアにというパターンをよく聞くし、そのグレゴリさんの育ての親である『旅行人』編集長の蔵前仁一さんは、仕事からの逃避でインドに行ったら、そこで「インド病」(なんでもかんでも「インドではこうだった」とくらべてしまい、日本での日常生活に支障をきたしてしまう状態)になってしまい、そのままバックパッカー兼旅行作家になってしまった。

 このあたりの人は、時代的にネットなど、本当に影も形もない時代に飛び出したパターンなので、旅とはある程度「体当たり」なもので、それが魅力であるという考え方が強いと思われる。

 私なんかは、2000年代初頭くらいによく旅行していたけど、先も書いたようにネットはまだ不便で、どちらかといえば場当たり的な旅行になれている方ではある。

 ただちょっと違うのは、自分の場合そもそも、旅行に出るようになったきっかけというのが少々変則的で、

 

 テニスのグランドスラム大会を観戦するため」

 

 そこから、スポーツだけでなくの魅力に目覚めたわけだが、ことこれに関しては絶対に昔よりの方が良かった。

 なんといっても、チケットを取るのが大変で、オーストラリアンオープンなんかはセンターコートにこだわらなければ、結構当日券とか取れたけど、他の大会はそういうわけにはいかなかった。

 なんで、友達のパソコン借りて英語で(グーグル翻訳なんてない時代です)申込書を書いて印刷してファックスで送ったり。

 朝イチで当日券の列に並んだり、現地の日本語代理店で高い手数料を払ったり、ローランギャロスでは前売り券やキャンセル待ちの情報を会場(パリ郊外のブローニュの森にある)までわざわざ尋ねに言ったら、

 

 「英語で受け付けなんてしてないボン。ここはフランスなんやから、フランス語でしゃべれビヤン!」

 

 けんもほろろに追い返されたり(まあ、正論ではありますが)、メチャクチャ大変だったのだ。

 それが今では、ネットで申し込みとか、空き情報調べたり、にいながらキャンセル待ちをチェック出来たり、まー便利なことこの上ない。

 こういうのを見ると、タフに旅していた先輩方には申し訳ないが、やっぱ

 

 「ネットっていいね!」

 

 となってしまう。時代の変遷、おそるべしである。

 

 (続く


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