Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

#84「もうひとつの事前課題」

2024-02-04 | Liner Notes
 此の春、社会人一年生になる長女のもとへ就職先から入社前の事前課題として一冊の本が届きました。

 例に漏れず、長女はまとめたレポートを読んでほしいとのことで、私もその「7つの習慣」なる本を読んでみました。

 とかく、処世術と捉えると方法論に陥りがちですが、名声や肩書きといった何処ぞの何某ではなく、まずはじめに"私が〈わたし〉であるということはどういうことなのか"と考えることが大切のような気がします。

 また、まったく分からないはずの社会人生活にも関わらず、あたかもあたりまえの素振りで分かっているかのように振る舞おうとすると、まわりからどう思われているかとか、失敗しないようにとなりがちな気もします。

 ひょっとしたら、ありのままの〈わたし〉をいたわり、あるがままに歩もうとすることが主体的であることかもしれず、〈あなた〉を分かろうとすることによって、〈わたし〉のことを分かってもらえるのかもしれません。

 これから結婚など人生の様々なステージで自らの責任で判断していく必要がありますが、例に漏れず事前課題があれば相談してほしいと思います。

初稿 2024/02/04
写真 「晨」朝倉響子, 1966.
撮影 2023/04/23(東京・都立図書館)
出典「7つの習慣」スティーブン・R・コヴィー, 1996.

§83「もうひとつの成人式」

2024-01-28 | Liner Notes
 少し前の話ですが、大学二年生の長男は思うところがあってか成人式には行かないとのこと。

 サッカー一筋で頑張ってきたものの、大学ではサッカーをやらず居心地のよい自由と裏腹に孤独な時間を過ごしているのかもしれず、久しぶりに会える同級生に誇れるものがなかったからなのかもしれません。

 学ぶつもりがなければ、大学なんて辞めてもいいよと言うと、そもそも学ぶとはなにかが分からないと言う始末。でも、放っておいてほしいと言いながらも、どこかしらちゃんと僕をみてほしいという気持ちがみえ隠れするようにも感じます。

 親にとって子供達はかけがえのない存在だからこそ、ちょっとした心配から口を挟んでしまいがち。でも、親が口を挟めば挟むほど大きな不安に駆られ、子供の成長や可能性を阻んでしまうのかもしれません。

「やりたいことがぼんやりと分かってきたのなら具体的な人生設計をしよう。そして必要な考え方や手段をちゃんと学ぼう。君はかけがえのない存在だから惜しみなく支えるので遠慮なく相談してほしい」

 まわりからどう思われようと、ありのままの自分を大切にすることができれば、きっと交わる人も大切にできるし、いつしか納得できる道を歩めると思います。

 親子水入らずでそんな話をした後の彼の言葉を聞くと、これもまたもうひとつの成人式だったような気がします。

「やっぱり、成人式には行かないよ。だって、たったいま成人式が済んだばかりだから」

初稿 2024/01/28
写真「SUMMER」朝倉響子, 1984.
撮影 2022/12/17(東京・墨田川テラス)

#82「もうひとつの卒論」

2023-12-16 | Liner Notes
 佐賀でのリモートワークのかたわら、仕事の都合で東京の職場に出社した際に、大学4年生の長女からめずらしく連絡がありました。

「明日夜どんな感じですかー?もしよかったら夜ご飯食べに行こう〜」

 でも、どうやらPCの不具合を直して欲しいとのことでしたが、そんな理由はさておき頼られることはいいもので、内定式も終わって大学生活も充実している話を聴くとホッと胸を撫でおろしてしまいます。

「もう、ほぼ卒論は書いたんだ。一度、パパに読んでほしいんだけど。。」

 国際関係を専攻した彼女の卒論テーマは〈ジェンダー〉。なぜ、そのテーマを選んだのか?世界中で存在する問題や課題をどう捉えているのだろうか?など読みながら話は尽きず、なんの疑いもなくごくあたりまえに男性らしさや女性らしさを意識するとはいえ、そもそも、〈わたし〉らしさとはいったいなにか?を考えるきっかけを与えてくれました。

 ひょっとしたら、「あなたが〈あなた〉であるということはどういうことなのか?」ということを〈わたし〉が両手で耳を澄まして知ることが共感に他ならず、そんな〈あなた〉を知ろうとすることが、〈わたし〉らしさなのかもしれません。※

初稿 2023/12/16
写真 「晨」朝倉響子, 1966.
撮影 2023/04/23(東京・都立図書館)
注釈 ※)α44F「晨」朝倉響子, 1966.

#81「もうひとつの法要」

2023-12-09 | Liner Notes
 生前にお逢いできればと思いながら叶わなかった、妻の祖父の法要に参列しました。

 二十五年の歳月が経つなかで、お経を唱えるご住職も孫に代わり、とかく上人の人生や言葉を紹介するのが当たり前と思っていた法話も様変わりした印象でした。

「生命を終えると浄土に導かれると申しますが、残念ながら私は生きている以上、浄土なるところは正直なところ分かりません」(法話より引用)

 "浄土なるところ"は、私たちがそう考える死後の〈世界〉の一つであれ、そこにもまた〈わたし〉と〈あなた〉と〈それ以外〉が存在するのかもしれません。

 ひょっとしたら、祈りとは、決して分かることのないその〈世界〉へ〈わたし〉を導いてくれるであろうまだ逢ったことのない〈あなた〉を存在させることなのかもしれません。

初稿 2023/12/09
写真 大地と天空の境界にて
撮影 2022/11/19(東京・高尾山)

#80「もうひとつの新人戦」

2023-10-15 | Liner Notes
 佐賀へ引越して約半年ほどが過ぎ、バスケ部に入った中学生の次女は同級生の友達もできて、三年生卒部後はじめての新人戦を迎えました。

 小学生からミニバスを経験しているレギュラーメンバーの同級生とはまだまだ差があるようにも見えますが、それとなく観ていると彼女なりの努力の跡もうかがわれるので、差というよりは違いなんだなと思います。

 ところで、佐賀県を本拠地とするプロチームは3つあり、バスケットボールB1リーグの佐賀バルーナーズもそのひとつ。来年開催の国スポとあいまって新設したアリーナをホームグラウンドとして多くの観客を魅了しているのを見ると、約三十年前の高校時代には考えられなかった世界です。

 新人戦で優勝したらそのアリーナでバルーナーズ U-15とのエキシビションマッチができるとは聞いてはいましたが、本当にそうなるとは思ってもみませんでした。

 試合には出場できなかったものの、トップリーグの舞台に立った経験はきっと彼女にとって新しい世界が観えたと思います。

初稿 2023/10/15
写真 エキシビションマッチ
撮影 2023/10/14(佐賀・SAGAアリーナ)