時は第1次世界大戦のさなか、神童と呼ばれた主人公が祖国フランスを裏切り、ナチス・ドイツの秘密警察に力を貸したのはなぜか?
「海と毒薬(§8)」や「沈黙(§10)」を形づくる原石のひとつだと思います。
自らの容貌にコンプレックスを抱きながら、まわりからの期待に応えようとする主人公の姿はまさに、「自我」の芽生えだったのかも知れません。
しかしながら、敬虔なカトリック教徒である母親から厳格な躾を受け、期待に背くことが許されない少年期を過ごすなか、その「自我」の芽生えと引き換えに、抑圧されてきた様々な欲求が幾重にも潜む「影」。
信仰のために生きようとする神学校の友人を拷問に陥れたのは、まわりからの期待に背いてまでも、自分らしく生きてみたいという「影」に潜む欲求、もうひとりの自分を証明しようとしたのかも知れません。
とはいえ、自らが犯した罪は決して拭い去ることはできるはずもなく、罰を受けてでも自らが得ようとしたのは、本当の自分「自己」だったような気がします。
初稿 2019/11/17
校正 2021/12/17
写真 鳩山会館
撮影 2019/11/09(東京・音羽)
「海と毒薬(§8)」や「沈黙(§10)」を形づくる原石のひとつだと思います。
自らの容貌にコンプレックスを抱きながら、まわりからの期待に応えようとする主人公の姿はまさに、「自我」の芽生えだったのかも知れません。
しかしながら、敬虔なカトリック教徒である母親から厳格な躾を受け、期待に背くことが許されない少年期を過ごすなか、その「自我」の芽生えと引き換えに、抑圧されてきた様々な欲求が幾重にも潜む「影」。
信仰のために生きようとする神学校の友人を拷問に陥れたのは、まわりからの期待に背いてまでも、自分らしく生きてみたいという「影」に潜む欲求、もうひとりの自分を証明しようとしたのかも知れません。
とはいえ、自らが犯した罪は決して拭い去ることはできるはずもなく、罰を受けてでも自らが得ようとしたのは、本当の自分「自己」だったような気がします。
初稿 2019/11/17
校正 2021/12/17
写真 鳩山会館
撮影 2019/11/09(東京・音羽)