なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

「陰性感情」

2017年07月09日 | Weblog
 CareNeTVの「内科インテンシブレビュー2017」の加藤温先生の講演を繰り返し見ていた。昨年はパニック障害の講演だったそうだ。ご著書もあるので、CareNeTVでの加藤先生の精神科シリーズを希望します。スライドをメモした。
 
「陰性感情を考える」
 国立国際医療研究センター病院 
  総合診療科/精神科 加藤 温
 
診察場面における感情
 治療者と患者の間で、お互いに陽性感情・陰性感情をもつ
 
精神分析では
転移(陽性/陰性)~患者が治療者に向ける感情
逆転移(陽性/陰性)~治療者が患者に向ける感情
 
治療者の無意識的な葛藤が患者に向かうこと→治療の妨げになる
治療者は自己分析により葛藤の解決努力を(とされてきたが、最近は)

患者に対する治療者の感情や態度全般をさす
・治療者の無意識的葛藤
・患者とのコミュニケーションに連動
→治療に生かすことができるのでは?(そういう感情があるものとして対応すればよい)
 
陰性感情を抱いたら (ここが講演のキモと)
1.陰性感情はあってもいい 消すことは不自然
→抱いた自分自身に自覚的であること
→俯瞰する目を持つ
「離見の見」けんのけん 世阿弥の言葉~能役者が観客からどう見えるかを考える
2.患者の行動にも何か理由があるのでは?
→立ち止まって考える
・治療者側の問題
・器質因、薬剤など
・環境因(仕事、家族)など
3.すべてを請け負わない 解決しようとしない
→できることは何か?
 自分にしかできないと思わない
 無理せず長く付き合っていくことも
4.ひとりで抱えない 共有する
→同僚に話す 愚痴でもいい(医局の机の配置が大事 向かい合ってあるいは横並びで雑談)
 書いてみることも有効
 
話の長い患者
 もともとそういうタイプ(病的ではない)、器質因(迂遠、保続)、双極性障害(躁状態)など
(対応方法例)
閉じた質問 「よく眠れてますか?」「何時間?」
共感して区切る「・・・ところで・・・」
・後回しとする「・・・それは後ほど・・・」
時間を区切る あと診察できる時間は10分
物理的 身体診察を始める、血圧測定をする(舌圧子でおさえても話続けたら、躁病?)
 
身体症状へのとらわれ
・いわゆる身体表現性障 医学的に説明がつかない→苦痛、反応性の異常重視へ
(対応の基本)
「症状がある」ことを認める
命にかかわる重篤な身体状態でないことを保証
症状を持ちながらも生活を意識していく
 
(ここで著書の宣伝をされた 購入済)
「内科で診る不定愁訴」
「状況別に学ぶ 内科医・外科医のための精神疾患の診かた」
 
アルコール多飲
・アルコール依存患者は自己評価が低く、注意されることに敏感に反応しやすい
(対応の基本)
飲酒継続の害、減らした場合の効果を説明
専門医療機関が必要なことを伝える→無理なら継続通院としてタイミングを
完全断酒→節酒という方向性もあり
 
いわゆるボーダー系
・境界性パーソナリティー障害
 情動不安定 理想化とこきおろし 見捨てられ不安
・留意すべき情報
 年齢性別、自傷・過量服薬歴、多剤処方、病院を転々
・ボーダーと診断されているなかには
 軽度知的障害、未熟性格、双極Ⅱ型もまじる
・本物は本物の顔をしていない(最初は素直な感じで、そのうち無理な要求してくる)
 陽性感情のち陰性感情(お互いに) 
(対応の基本)
普段から安定した診療の構え(態度、枠)(患者の要求に振り回されない 感情的にならない)
俯瞰する目
「治療」だけではなく「援助」の視点(治ることはないので、見守る)
→あらゆる患者に対する基本的構えと同じ
 原則論をふまえつつも治療者なりの「型」
コメント
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