なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

解剖に回りました

2017年07月03日 | Weblog

 昨日の日曜日は日直が終わった後、病院に泊まって待機していた。午前2時に救急室から連絡が来た。

 80歳代後半の男性が心肺停止で救急搬入されていた。当直の外科医が心肺蘇生術を行ったが反応はなく、死亡確認になった。AIとしての頭部CT・胸腹部CTに死因になるような病変はなかった。普通なら、ここで心疾患とするところだが、この患者さんは体中から異様な臭いがしていた。

 午後9時ごろ家族が異臭に気付いて、自室で倒れているのを発見したそうだ。すでに警察で着ていたが、現場に薬物・毒物は見当たらなかったので、何を飲んだか不明だった。

 救急室に行ってみると、部屋中に異様な臭いがしていた。警察官が口を開けると強い臭いが出ますよという。どんな臭いかというと、昔のクレゾールのような消毒薬の臭いだった。虫よけの農薬だと思うが、何だろうか。

 研修医の時と、昔前の病院にいた時に、有機リン製剤の農薬を飲んだ人が救急搬入されて、その時の臭いと同じかと思ったが、記憶が定かではない。そもそも有機リン製剤は臭うのか。

 当直医が大学から出張の医師(要するにバイト)なので、常勤医に確認してもらいたいということだった。事件性はないと警察でも言っていたので、飲んだ薬物・毒物がわかれば、地元の警察の検死で終わったのだろう。大学病院の法医学講座に遺体を送って、日中に解剖を行うことになったそうだ。法医学の先生が診断書(検案書)を書くのかと思ったが、結果が当院に報告されて当院で発行するようになるのだという。

 さっき連絡があって、解剖は夕方から始まるので、結果は時間外に出る。明日当院に結果が送られてくるので、それを見て検案書を書くようにという指示だった。

 救急室に行った時に当直医はいなくて、救急外来の看護師さんから、今シャワーを浴びに行ってますと言われた。気持ちはわかるが、救急蘇生の時に気体となった薬物を長時間吸入しているので、シャワーを浴びてもしょうがないと思う。肺は洗えないので、何度も新鮮な空気を吸うしかない。

(翌日記) 大学病院法医学教室での肉眼解剖の結果は、内臓全体に異臭がすることと、消化管粘膜が混濁していること、何らかの独特の臭気をもつ物質による急性中毒の疑いというものだった。急性薬物中毒(死因は自殺)と記載するだけなので、これだけでは参考にはならない。さらに生化学的な検査をするらしいので、原因薬物が特定されるのかもしれない。

コメント
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