61歳女性が日曜日に心窩部痛・食欲不振で救急外来を受診した。内科医院に関節リウマチで通院している。メトトレキサートとプレドニンが処方されていた。PPIなどは処方されていない。
内科日直の先生(非常勤)が診察して点滴が開始されていた。入院になる患者さんを診に行ったときに、この患者さんも診察した。2日前の金曜日に発症して、その後は食事をとっていないという。腹部は平坦・軟で心窩部に圧痛がある。
この方は当院には通院していないが、毎年春に当院で個人健診を受けていて、胃のバリウム検査を受けて異常なしだった。腹部エコーは胆嚢腺筋症と胆嚢ポリープと診断されていた。再検すると、胆嚢壁が確かに肥厚していて、有茎性のコレステロールポリープが1個だけあった。心窩部痛の原因にはならなさそうだ。胃の症状と思われた。
独身のひとり暮らしで、親戚とも仲が悪くて疎遠だという。入院しての検査を勧めたが、家で飼っている4匹の猫の世話があるのでできないという。点滴終了後に帰宅として、今日再受診してもらうことにしていた。
今日上部消化管内視鏡検査を行うと、胃粘膜が萎縮してコアグラのついたびらんが数か所あった。この程度かと思って内視鏡を進めると、十二指腸球部の上十二指腸角から下行脚にかけて、白苔のついた斑状~線状の浅い潰瘍が多発していた。いかにも痛そうだ。
この形の病変は特殊だが、原因はなんだろうか。リウマチの治療薬は以前からの処方で、最近のものではない。胃酸の問題かというと、胃粘膜萎縮からみて違うような気もする。結腸だったら虚血性腸炎と表現するような形態だが、血流の問題なのか(ウイルス性?全くわからない)。以前高齢者で十二指腸下行脚の多発性潰瘍の患者さんがいて、これといった確実に効きそうな処方はできなかったが、なんとなく治った。
内視鏡中にアルサルミン(内用液)を出してみたいと思ったので、まずそれを出して、タケキャブとムコスタも処方した。点滴中に1回分内服してもらった。やはり猫がいるからと入院に同意せず、今日も外来で点滴して明日また外来受診とした。