右後頭葉の脳梗塞による同名半盲を発症した87歳女性は、糖尿病で内科医院に通院していた。土曜日の救急外来受診から入院したので、紹介状はないが、最近糖尿病の血糖コントロールが悪化していると言われていた。
昨年7月に当院の眼科で白内障の術前検査をした記録があり、HbA1c6.0%と良好な値だった。DPP4阻害薬+SU薬(グリクラジド)なので、減量した方がいいくらいの値だ。今回はHbA1cが9.4%に上昇していた。
教科書的に、糖尿病の悪化は膵癌の発症を疑うが、さらに入院してから心窩部痛も訴えた。認知症もあり、間欠痛のような訴え方だったが、よくよく訊いてみると持続痛らしい。
膵癌の検索として、腹部CTと腫瘍マーカー測定を行った。CA19-9が272350、CEAが305.8と著明な高値を示していた。CT画像では膵体部に腫瘤(腫瘍)を認めて、肝臓内に転移巣が散在していた。膵癌・肝転移だった。
認知症のある87歳なので、膵癌の治療対象にはならないだろう。家族に来てもらって、その話をした。インスリン注は家族がすることになるので、1日1回のトレシーバのみにする。心窩部痛は癌性疼痛になるので、アセトアミノフェンから開始するが、医療用麻薬を使用することもあることを説明した。
今回はいったん退院して、できるだけ自宅で過ごして、癌の進行による全身状態の悪化時に再入院の方針とする。癌があると通院中の内科医院に治療依頼もしにくいので(いやがるだろう)、当院の内科外来に通院してもらうことになる。