脳塞栓症(心房細動あり)で地域の基幹病院に入院した67歳男性が、11月半ばに当院回復期リハビリ病棟に転院してきた。
担当は神経内科だが、糖尿病の治療を内科に依頼された。もともと内科クリニックに通院して、SGLT2阻害薬(ジャディアンス10mg)が処方されていた。
先方の入院時のHbA1cが7.1%なのでそう悪くはない。外来ならば、DPP4阻害薬を追加してHbA1c6%台に持っていくというところだ。
しかし入院後の血糖が200~400mg/dl台で推移したので、糖尿病科で治療されて、インスリン強化療法が開始された。持効型インスリンを定期で入れて、食事摂取量が安定しないため、食事摂取量に応じて速効型インスリン(ヒューマリンR)を使用していた。
糖尿病の治療は急性期の状態で転院してきたので、神経内科医としては面倒だと思ったのだろう。とりあえず、先方と同じで数日血糖を見てもらって、その結果で調整することにした。
当院転院時はHbA1c7.8%になっていた。先方での外注検査で血中Cペプチドが3.30ng/ml(空腹時)と正常域だったが、当院で再検すると0.4ng/mlと低下していた。0.6ng/ml未満だとインスリン依存状態相当になる。
短期間でそんなに変わるかと思ったが、インスリンは中止にしがたい。先方の病院入院時は腎機能障害(血清クレアチニン2mg/dl)だったが、その後回復している。脱水症としての悪化だったようだ。
DPP4阻害薬、メトホルミンを入れて、ヒューマリンRで補正は使用しないくらいにはなった。インスリンは持効型だけ少量使用している。あとはSGLT2阻害薬を入れて、可能ならば持効型インスリンも中止できるかだが、もう一度血中Cペプチドを見てからの方がいいようだ。
インスリン依存状態だと、インスリン量が少量なので中止できると思ってやめると、血糖がぐっと上昇する。それにしてもCペプチドは安定しているはずで、こんな変化はしないはずだが。送られてきた胸腹部CTの画像を見ると、膵臓自体にとくに異常はない。
もう1回1か月くらい間をあけて、血中Cペプチドを測定して、前回より増加していればインスリンを中止する方向で調整したい。本人のためもあるが、施設入所の予定なので、施設で治療しやすい形を目指す必要がある。