水曜日は当直だった。午前5時すぎに近くの温泉施設に宿泊している61歳男性が腰痛と右下肢のしびれで救急搬入された。
2~3日前から腰痛があったが、定期的に来ているその施設に車を運転して予定通りにきていた。来た時から腰痛に加えて、右下肢のしびれがあり、食事もとれず、温泉にも入れなかった。
朝方になって症状がひどくなったので、救急要請した。当院の検査は夜間は呼び出しになるので、緊急性がなければ実施しない。またMRI検査は夜間は基本的に頭部しか実施しないことになっている。
検査は通常の診療が始まったからになりますと伝えたが、それでもいいという。患者さんは痛みで考える余裕がなかったのだろう。
搬入されると意識は清明で、右上肢の症状はない。右腰部~臀部~大腿部の屈側にかけての痛みがある。左下肢は普通に挙上できたが、右下肢は30~45度の挙上で痛みが誘発される。
症状からは椎間板ヘルニアなどが疑われた。気になったのは救急隊到着時の体温測定で37.4℃の発熱があった。救急隊でも搬入依頼の時に報告はなかった。病院で測定すると38℃あった。他に炎症巣・感染巣がなければ、化膿性脊椎炎?。
点滴ラインを確保して、アセリオ注1000mgを行った。午前8時30分になったら、画像検査と血液検査を行うようにオーダーした。
診療時間直前に見に行くと症状は軽減していた。血液検査の結果は炎症反応は陰性だった。発症初期のためなのかはわからない。
腰椎MRIではL2-3、L4-5 で椎間板の後方突出を認めた。L4椎体の前方下部に脂肪抑制T2高信号を認める。炎症はあるのは間違いないが、化膿巣かどうかは確定できない。
この方はたまたま当地の温泉施設に来ていただけで、住所は県庁所在地にある。当地に入院しても不便なだけだが、痛みがあると車で帰ることもできない。
自宅近くの整形外科のある病院を受診したことがあり、全国チェーンの総合病院も近くにある。可能ならそちらで診てもらうのが 都合がよい。
高齢の整形外科医に相談すると、硬膜外ブロックをしてくれた。その後診に行くと、まだ効果今ひとつのようで、ジクロフェナク座薬50mgも使用した。
しばらくして救急室に行くと、患者さんは整形外科からNSAIDなどの処方を受けて帰ったそうだ。歩けるくらいにはなったようだ。