11月4日(振替休日)の日直の時に、80歳代後半の男性が救急外来を受診した。10日くらい前から息が苦しくなるということだった。安静はよいが、労作時(トイレに行く)に息切れがする。ご本人は受診するつもりはなく、妻が心配して連れてきたということだった。
両側下腿の浮腫があるが、それは何年か前から続いているという。脳神経内科(昨年春に常勤医退職)の外来でも相談したことがあるが、原因はいわれなかったそうだ。
当院の消化器科の外来に通院して、脳神経内科の処方(抗血小板薬、降圧薬=ARB)も併せて処方してもらっている。昨年消化器科で行った胸腹部CTには胸水貯留はなかった。
胸部X線・CTで確認すると心拡大・両側胸水貯留を認めた。
心電図ではV1-3でST上昇様に見える。胸痛は特になかったそうだ。無痛性に心筋梗塞が発症して、心不全症状で気が付くということがある。現在当院は時間外でトロポニンは測定できない。上室性期外収縮はあるが、心房細動ではない。有意な心雑音はない。
入院させて酸素吸入と利尿薬で治療を開始して、翌日の心エコーで判断することにした。(心エコーは外部の検査技師が週1回月曜日に来ている)酸素吸入は2L/分で十分だった。
点滴静注薬は使わず、内服でエンレスト(100mg分2)とアゾセミド30mg・スピロノラクトン25mgとした。翌日まで1400mlの排尿があり、両下腿浮腫は軽快していた。
心エコーではdiffuse hypokinesisとされ、画像を見ると確かにそうだった。V1-3のST上昇で前壁中隔梗塞ということではないようだ。駆出率(EF)は37%とされた。
11月12日の胸部X線で胸水は減少してきている。1週間治療を継続(血圧はいいのでエンレストは増量へ)することにした。ご本人は早く退院したいといっている。
11日の採血では、BNP 1922.6と著明に上昇していた。トロポニンIは314.0と高値だが、CK/CK-MBは正常域で炎症反応は陰性だった。