11月4日(月、振替休日)は当直だった。午後5時前に、日直の先生から大腿骨頸部骨折と思われる救急要請を受けたのでよろしくと申し送られた。
次に低血糖の救急搬入があった。続けて3台目の救急搬入は、上背部の激痛を訴える80歳代前半の女性だった。
後頚部ではなく、高さは肩の位置になる。正中から左右にかけての痛みだった。台所で作業をしていて、突然の発症だった。ただ持続はしているが、少し程度に波があるという点が血管性の痛みとしては合わなかった。
通院している内科医院から降圧薬2剤が処方されているが、搬入時の血圧は230/110と著しく高値だった。心電図は完全右脚ブロックだけでST-T変化はない(CRBBBはST-変化があれば読める)。酸素飽和度は正常で呼吸苦はなかった。突然発症からは大動脈解離が疑われた。
点滴をして採血結果を待っていると、右下肢がつって痛いという(正確には叫んだ)。最近こむら返りが頻発していたそうだ。主には夜間だが、昼間もあったという。自分で調べて漢方薬が効くということを知っていたそうだ。
搬入後に疼痛に対してアセリオ注(アセトアミノフェン1000mg)を点滴している最中だったが、芍薬甘草湯を薬局から持ってきて内服してもらった。10~15分で効いたようだ。ペルジピン注で血圧も150程度になった。
頸部~腹部の造影CTを行ったが、大動脈解離はなかった。他にも異常所見はない。上背部の症状は軽減していたが、また軽度の痛みと違和感があるという。血液検査は異常なしで、炎症反応も陰性だった。降圧薬内服(ベニジピン4mg1錠)を内服させて、入院で翌日で経過をみることにした。
翌日には違和感があるような気がするというが、ほぼふだんの状態に戻っていた。夜間にこむら返りは起きなかった。頭部CTは搬入時に検査して異常なしだったが、頭部MRIで椎骨脳底動脈を確認したが、解離などはなかった。
家族の迎えの都合でその翌日に退院した。結局筋肉痛だったのだろうか。降圧薬追加を定期内服といて、こむら返り時の芍薬甘草湯も持たせて、通院している内科医院に診療情報提供書を提出した。