Sofia and Freya @goo

イギリス映画&ドラマ、英語と異文化(国際結婚の家族の話)、昔いたファッション業界のことなど雑多なほぼ日記

ミケランジェロと理想の身体

2018-08-18 21:15:00 | いろいろ
上野の国立西洋美術館へ久々に行きました。特別展「ミケランジェロと理想の身体」展に興味がありまして。

実は勘違いして「理想の身体の黄金比」みたいな追求かしらと思っていましたら(しかもそういう学問的な研究しそうなのはレオナルド・ダ・ビンチでした)、

ミケランジェロの彫刻が2体と、古代ギリシャ・ローマとルネサンスの男性裸体作品を集めた、テーマがわかりにくいながらも、

男性美を追求した美術の企画展でした。これってありそうでなかったような・・・同じ男性美の切り口で「時代別」とか「階級別」とか「国別」とか色々もっともっと企画していただいてもいいんじゃないでしょうか?

展示作は、古代ギリシャ・ローマ時代のものと、そこから影響を受けたルネサンス期のものがあり、そのことは中学校の美術でも習いましたが、

下の写真は撮映可だった「ラオコーン」(トロイの神官の名前)像で、古代作品が1506年に発掘されミケランジェロもその場に立会い、その後多くのラオコーンの絵や彫刻がその時代に作られました。当時の芸術家たちがすごい衝撃を受けこぞってそのテーマで作品を作った、ということが実感されました。



映画「君の名前で僕を呼んで」でエリオのお父さんとオリヴァーも古代美術品の発掘研究をしていましたが、ルネサンス時代にもああやって古代ローマやギリシャの美術品を興奮しながら発掘したのでしょうね。


全体の作品数は70点で、彫刻を中心に絵画や食器もありました。食器とは古代ギリシャの絵が描かれた壺やお皿ですがあれ、テレコッタなんですね?!しかも紀元前500年くらいのものが残ってるなんて改めて驚きです。

で、彫刻といえば大理石が思い浮かびますが、今回の展示を見て、磨かれた白い石のお尻の形は、ほんとうに生きた美しいものを閉じ込めたような幻想を抱けるなあと思いました。人により人体のどこに目がいくかはそれぞれなんでしょうけれど、私は顔から首とお尻、脚と足です。(道理でバレエやフィギュアスケートが好きなわけです)

大理石に比べ、ブロンズ像というのは20~30センチくらいの小さなものがほとんどで、迫力もなく黒くてよく形が見えにくいじゃないの、となんでこんなのも作られたのか不思議だったのですが、

実はコレクターに人気があったそうで、物によっては燭台だったり、ドアストッパーだったりと実用品も兼ねたものもあったことが解説を読んでわかりました。

そしてその題材は、天使の姿をした「幼児」「アスリートと戦士」「神々と英雄」です。

アスリートとは、ほら、オリンピックの発祥の地アテネはギリシャですし、古代ギリシャの社交場は男性オンリーで、スポーツ大会は全裸だったそうです。解説で知ったのですが、古代ギリシャでは外見の美は内面を表したものという考えだったそうです。きっと市民は美しさ強さをスポーツで競い合ったのですね。男性ばかりで。いいことだ、もっとやれ。(しかし一体いつから外見の美が虚栄心や軽薄さと結びついたのだろう)

神々と英雄で多いのは、「ヘラクレス」「バッカス」「アポロン」でした。

ヘラクレスといえばハムレットの理想像だったなと思い出すのですが、シェイクスピアも16世紀の人、ギリシャ・ローマの神々を理想とする風潮はこの時代ヨーロッパに広まっていたのか。単にヨーロッパの知識人の源は常にギリシャ・ローマなのかも知れませんが・・・・

アポロンといえばヴェルサイユの発明者、ルイ14世が自分と重ね合わせて宮殿中にそのイメージを散りばめました。

でもバッカスはただの酔っ払いと思ったら大間違いですよ。ローマではバッカスで、ギリシャ神話ではディオニューソスという名前です。「バッカイ」という古代ギリシャ悲劇はベン・ウィショーがディオニューソス役で2015年にロンドンで上演されました。

というように、これまでのオタク活動のピースが「理想の男性像」展であちこちピタッと合致しました。お尻や首筋を眺めながら脳も少しは使ったようです。


実は今まで、西洋の美術品はできることなら本家の美術館で見るに限ると思っていたのですが、本家に行くとまず街そのものが私たち外国人にとっては博物館のようなもの、すべてが目新しく興味を惹かれてしまう、そして美術館の建物自体がまた古くて豪華である場合が多く、そこでもあちこちに注意を引かれてしまい、肝心の美術品をじっくり鑑賞する脳内情報処理能力を情報がオーバーしてしまうんではないか・・・と思い当たりました。

西洋美術館の特別展会場は、白い壁と天井しかなく床に至っては色さえも覚えてないという無地っぷりですので、その分展示品に集中出来るのですね。国内展示侮るなかれ。



国立西洋美術館は、金、土曜日は夜9時までで、特別展のチケットで常設展にも入れますので、早めの時間に行き、どちらかを見たらカフェかレストランでゆっくりパワー回復と情報整理をし、もうひとつの方に後半戦に向かうことをお勧めします。