HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

百貨店の最上階に「コムサ」を 展開する意図が分からない。

2012-08-02 11:26:19 | Weblog
 先日、当コラムでキャナルシティ博多のファストファッション構想で、既存テナントが売上げ減の煽りを食ったと書いた。ただ、それ以前から苦戦が続き、ファストF導入景気で一気に撤退を余儀なくされたコムサストア。ここで展開されていたブランドを再編集した「コムサスタイル」が9月14日、天神の福岡三越に登場する。
 場所はギャラリー&催事場がある9階。ベビー・子供服の売場の一部を改装した550m2ほどのスペースに、キャナルシティ博多にもあったファミリー向けの「コムサイズム」と雑貨の「モノコムサ」、 50代のミセスに向けた「コムサマチュア」、ファミリー向けジーニングカジュアルの「パープル&イエロー」が加わる。さらに既存の飲食業態も「コムサカフェ」に転換するというから、さながらコムサフロアといった様相だ。

 三越伊勢丹グループでは、伊勢丹系の「岩田屋」との棲み分けを明確にする必要があり、ターミナル型百貨店の福岡三越は、乳幼児をもつファミリーや中高年のミセスを廉価な商品で再攻略する狙いのようだ。岩田屋がキャリアOLを主体にしたMDを組んでいることを考えると、この戦略は理解できなくはない。ことファッションに関して、伊勢丹主導で行なわれていることを考えれば、なおさらだ。
 また9階というフロアがこれまでイベント頼みの集客で、ベビー&子供服のテコ入れが必要だったことも考えられる。三越が開業時から自慢げに標榜して来た「シャワー効果」もすでに形骸化しており、ピンポイントで集客できるブランドが欲しいというのが本音だろう。

 しかし、実際にどれほど期待できるのだろうか。天神、しかも駅ビルという立地、三越という店舗イメージ、コムサスタイルでは中途半端なスペース、キャナルシティ博多での苦戦などを考えると、とても9階を活性化できるほどのコンテンツとは言い難い。
 まずコムサイズムは、郊外SCではメンズからキッズまでのフルラインナップだが、三越の売場スペースやMDの補完関係を考えると、ウエアはキッズとベビーがメーンになるのは想像に難くない。仮に雑貨を含めてファミリーを意識したとしても、3階には同じくフルラインナップで順調な売上げを誇るギャップがあるわけだから、どこまでファミリーを捕捉できるかは疑問だ。これはコムサイズムと並んでスタイルを構成するパープル&イエローにも言えることである。

 逆にベビーとキッズを主力にしても、先日、南充浩さんがご自身のコラムで記されていたように、子供服は「出産祝いや誕生日プレゼントであることが多い。その際に贈り主が重視することの一番はステイタス性のあるブランドかどうかである。知り合いの出産祝いとして贈るのにわざわざ低価格品として認知度の高いブランドを選ぶ人は、相当少数派だろう。やはり、高額イメージのあるブランドを選ぶ」のである。
 筆者も実際にこの経験をして来たし、業界関係者からも口々に同じことを聞いてきた。コムサイズムのクオリティや価格、そしてブランド力を見れば、とてもギフト商品足るとは思えない。
 乳幼児をもつ親をお客に設定するにしても、天神、ターミナル百貨店という立地、三越イメージからして、わざわざ買いものに行くとは考えにくい。三越には3階にギャップがあるわけだし、コムサイズムは郊外SCの方がはるかに充実しているから、お客がギャップより階上に上がるとは思えないのである。

 一方、もうひとつのウエアブランド「コムサマチュア」は、文字通り、熟年ターゲット、50代以上の中高年女性に向けたものだ。
 百貨店のお歴々からは、また「コムサイズムを購入するファミリーの親世代に位置づければ、3世代を捕捉できる」なんて安直な戦略が聞こえて来そうだが、このブランドにも疑問がある。
 なぜなら、マチュアはすでに岩田屋のミセスフロアで展開されており、商品はジャケットが16,800円、チュニックドレスが14,700円、 パンツが8,820円程度。グレード、価格帯、感度ともにコムサイズムよりはるか上のモデレートラインに入る。ヤングファミリー向けでポピュラー価格のカジュアルと一緒に展開すれば、必ず浮いて見えるだろう。
 第一、昨今のライフスタイルを考えたとき、乳幼児をもつ家族とその親世代が一緒に買いものするなど、考えにくい。やはり、岩田屋のような単独のハコ展開の方が集客、販売ともやりやり易いと考える方が自然だ。

 岩田屋では8月に入り秋物が展開されているが、猛暑が続く中で、他のブランドと同様に出足は相当鈍いようだ。でも、シーズンを通してみたときに、はたしてどれほどの顧客を引きつけるブランドなのか。
 DCブランド全盛期に一世を風靡した「コムサ・デ・モード」。そのデザインセンスやクオリティを知っている世代が50代に入っているが、コムサマチュアを見れば、「野暮ったいおばさんブランド」と感じるだろう。
 マチュアにコムサ・デ・モード の系譜はなく、かつてのファン客を取り戻せているとは思えない。 調達スタイルはイズム同様に商社丸投げに変わりはないし、企画の狙いは売れ線狙いというか、サイズ感重視と思われる。むしろ新たに開拓したい中高年女性向けで、「ド・コンサバファッション」の域を出ないとうのが率直な印象だ。

 岩田屋の店舗が福岡三越オープン後も継続されるのなら、コムサマチュアは天神2店態勢になる。はたしてそれほど期待されるブランドなのだろうか。筆者にはとてもそうとは思えない。
 岩田屋のマチュアはハコ展開だから、壁面什器をいじくる程度で容易に移転できる。もしかしたら、9月に福岡三越に一本化されるかもしれない。同じ百貨店グループなのだから、棲み分けや効率性を考えれば、そちらがいいはずである。
 もっとも、コムサマチュアが福岡三越に導入されたところで、ローカルメディアが好きな「九州初」「福岡初」ではないわけで、顧客にとっては新鮮さを欠く。以上のことから、コムサスタイルが福岡三越の最上階を活性化するようなコンテンツになるとは、とても思えないのである。
コメント
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