HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

プレスプレビューと店頭展開のギャップ。

2013-03-07 09:10:51 | Weblog
 ユニクロはこの春、「メンズ向けのレギンス」を発表した。といっても、トレンド名を借りた新種のカラージーンズ&パンツだ。
 一昨年あたりから欧米でもメンズのボトムに細身のカラーが登場し、モードライクに染まっていた。グローバルSPAを目指すユニクロとしてもついに、このマーケットに切り込まざるを得ないと判断したのだろう。
 まあ、欧米ではメンズのパンツにレギンスなんて名称はどこにも見当たらない。フランスもイタリアも英語の「slim」で統一している。デザインを一変すれば、アイテム名まで変えていく。ネーミングが変われば、新鮮だからお客も飛びつくだろうと、勘違いする。その辺が日本におけるファッション文化の底の浅さとも言えるのだが。

 レディスオンリーで来た筆者がメンズのパンツをあれこれ評論するのも憚れるが、業界はユニクロのメンズパンツに概ね高い評価を与えている。「最新のモードトレンドにアップデイトしたのには目を見張る」「薄くて軽いという機能一辺倒から、きれいでカラフルに変貌」「チノパンの時にも多少の片鱗は見えたが、新パターンを完成させた」etc.
 これまで辛口だった業界メディア&ファッションライターが一斉に褒めちぎっているのだから、柳井正会長も何となく面映ゆくこそばい心境ではないだろうか。かの某コンサル先生にも「国内のガラパゴス市場に閉じこもったままのジーンズカジュアルチェーンが依然として加工感の強いワークカジュアルに固執しているのとは雲泥の差がある」と言わしめたのだから、ユニクロが再び上昇気流に乗るのは間違いないと言える。

 ただ、当コラムの主旨からすれば、業界諸氏に右に習えをしてもしょうがない。プレスプレビューのレベルでは、スタイリストを付けてコーディネートで奇を衒い、照明を変えて写真映りを良くするのがファッション企業の常套手段。ただでさえ、メディアのテンションは高いのだから、企業側のツボに嵌るのはしかたない。それが提灯記事を生んでいるケースは往々にしてある。
 ただ、商品を売るのはプレスプレビューではない。あくまで店頭だ。しかもユニクロの場合、商品は旗艦店、ビルイン、路面店と各フォーマットに沿ったVMDに従って展開されている。プレビュー後の今月初め、キャナルシティ博多の旗艦店をたずねてみたが、同じ商品が相変わらずセンスを欠いたアバウトな手法で展開されていた。

 先日も正社員や店長の嘆き節がネットをわかしていたが、専門的な能力を持たないスタッフがただ品出しをする延長上で、マニュアル通りにVMDを構築しているだけなのだろう。カラーサイクルを無視したセンスレスな配列は、せっかく某スタイリストがコーディネートした作品を量販の藻屑と化していた。
 さらにストックの畳み方や吊るし方も従来通りで、レギンスのシルエットや柄を埋没させている。というか、本当にシルエットや質感を訴求する気があるのかと疑うような展開手法だ。ボトムトルソーにしてもディスプレイも、ただ着せるしかできないから、レイヤードもコーディネートもあるわけない。お客はレギンスをスニーカーやローファーと合わせて穿きこなすわけだから、それを提案できないのでは、販売する気構えを疑われてしょうがない。これではデザインした滝沢直己氏が可哀想である。

 航空会社のOL崩れで、宣伝会議で名前を売り、セレブ本を出したくらいの俄スタイリストを大枚はたいてプレスプレビューに起用する前に、マネキンやトルソーの選び方、ハンガーの形、パンツの畳み方、色の配列、陳列スタイルのリズム感で、もっとノウハウを蓄積するのが先ではないか。
 グローバルSPAを標榜するなら、ソフィスティケートされた売場とVMDで世界を驚かすくらいでないと、お客は商品を手に取らないし、販売にもこぎ着けないはずである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする