2015年が開けた。1月2日には初売りをリサーチしたが、ファッションビルに出店するメジャーなブランド、特にセレクトショップは「セール用に積み増したのでは」と思えるくらい、在庫の多さに圧倒された。
確かにお客さんは多く、ここ数年にない賑わいだった。でも、私見を込めて言わせもらうと、お客さんが多過ぎて試着しづらく、まともな接客は受けられない。商品もピーコートやセーターなど定番アイテムは、それほど動いてはいないように感じられた。
スーツコーナーになると、カジュアルとは対照的にお客さんがほとんどいない始末。値引きをしないショップは当然なのだが、季節アイテムは持ち越しになる。トレンドがないものは期中にプロパーで売らないと、期末の在庫消化は難しいと思った。
尤もトレンドとは言っても、14年の秋冬は実用衣料に近いベーシックなアイテムが大半を占め、セール在庫の多さはそれだけ売れ行きの鈍さを感じさせる。やはり、売れ筋追求型のMDでは、いくらセールにしてもお客は買う気にはなれないのだ。
そんなことを考えながら新年、事務所に出社の途中、年末年始に投函を断っていた繊研新聞を支局に受け取りにいった。1月1日付けの新春特集号、1面は「コムデギャルソン、川久保玲が語るクリエーション」である。
ネット版でタイトルは確認していたが、本紙を読むのは初めてである。繊研新聞でも業界を前出と同じように見ている。「この逆境を跳ね返すには、知恵や工夫を凝らしてビー・クリエイティブである産業を取り戻す」ことが必要だと強調していた。
業界にとっては言わずもがなである。でも、クリエイティビティだけを追っかけても、ビジネスにはならない。これもずっと言われてきたことだ。業界にとっての永遠のテーマであり、ジレンマでもある。でも、本当にそうなのか。
このソリューションを導くヒントを、同じ紙面で掲載されたコムデギャルソンのデザイナー、川久保玲氏が語っている。
コムデギャルソンは高校時代にその名を知り、大学生、社会人ではショップを訪れ、商品を幾度と無く買ってきた。
コレクションのイメージから、ブランド=奇抜さで見られているが、素材はほとんどオリジナルで、非常に質感が高い。シーズンごとの企画力も秀逸で、シンプルなデザインのアイテムは、数年間は着続けられるからコストパフォーマンスは良いと思う。
つまり、意外に思えるが、ビジネスもかなり意識しているブランドだと思う。
インタビューで川久保氏は、「コレクションを象徴として考えたいというのが最近の気持ちです」「クリエーションの象徴は精神的な部分も含めて強いものがあり、一方で、クリエーションをビジネスにする別の土台、別の部屋が必要です」と。
やや抽象的な言い方だが、コムデギャルソンというブランド企業、末端までのスタッフの生活、取引先の経営までも背負っているのだから、収益を上げる部分はきちんとして押さえておかなければならないというのは、当然だろう。
また「本当はビジネスもクリエーションです。究極のクリエーションをビジネスにしていくには、数字を追うだけでは意味がない。いかにクリエーションのビジネスを作り上げるか。これも私のすごく大きな仕事です」と。
これについては数年前、朝日新聞のインタビューで答えていたことと同じである。派生ブランドをいくつも作り、シンボリックな記号化で収益を上げる。往年のDCブランドのようにMDに注力しすぎたことによる同質化を避けるべく、それぞれに特徴を持たせる。
そのバランス感覚はさすがコムデギャルソンであり、コムデギャルソンのコムデギャルソンたる所以だろう。
川久保氏はインタビュー紙面の最後で、次のように語っている。
「この20年で新しいことに目を向ける価値観が段々薄れています。大きな企業や流通の仕事をしている方々に、そうした価値観をもっていただかないと先はない」
「上手に区分していけば、売れるものだけでなく新しいものを見せられる場はいくらでも作れると思います」「作っていただきたいですね」
クリエイティビティと新しいもの。売れ筋追求で、ステレオタイプな業態とMDが市場の溢れる中、取り組むべき最大のテーマでもある。
筆者は新しいものを作り出すには、別に難しく考える必要はないと思う。川久保氏が言うところの知恵と工夫を凝らせばいいのだ。企画の方向性として知恵を出すにはまず考え方、思考回路のパターンを組み替えてみることだ。それでアイデアはいろいろ生まれる。
例えば、デザインは基本形は決まっているから、まず素材を替えてみるのも良い。さらにそのクオリティを上げれば、それだけでフォルムにシャープさが出るので、デザインは変わってくる。きっと新しく見えるはずだ。
またデザインを大きくしてみる。この秋冬にあるコンテンポラリーブランドが発表したボディの一部を大きくしたコクーンシルエットがそうだ。当然、一部を大きくすると一部は小さくしなければ、全体のバランスは崩れる。
つまり、小さくすることもアイデアなのである。こうした種々の工夫がクリエイティビティの真骨頂と言えるだろう。
要はベーシックの基本形をどこまで「外し崩し」して新しさを表現できるか。コーディネートや売場編集でのそれが限界に達している今、デザインや素材、色そのものを変えていかないと、新しさは感じさせない。
その他のキーワードとしては、「他のディテールで代用できないか」「チェンジしたらどうなるか」「逆さまやバイヤスにしたらどうか」「合わせたらどうか」etc,発想法はいくらでもあるだろう。工夫とはそうして考え方を駆使することで達成できる。
Be Creative。これまでのマーケットにない商品。「エッジの利いたテイスト」「セレクトにはない色と素材感とフォルム」「このデザインだから、このプライスでもいいという価値観」。
誰もがチャレンジできると思うし、そうしたところが2015年はサクセスすると思いたい。いや、そう思う。
確かにお客さんは多く、ここ数年にない賑わいだった。でも、私見を込めて言わせもらうと、お客さんが多過ぎて試着しづらく、まともな接客は受けられない。商品もピーコートやセーターなど定番アイテムは、それほど動いてはいないように感じられた。
スーツコーナーになると、カジュアルとは対照的にお客さんがほとんどいない始末。値引きをしないショップは当然なのだが、季節アイテムは持ち越しになる。トレンドがないものは期中にプロパーで売らないと、期末の在庫消化は難しいと思った。
尤もトレンドとは言っても、14年の秋冬は実用衣料に近いベーシックなアイテムが大半を占め、セール在庫の多さはそれだけ売れ行きの鈍さを感じさせる。やはり、売れ筋追求型のMDでは、いくらセールにしてもお客は買う気にはなれないのだ。
そんなことを考えながら新年、事務所に出社の途中、年末年始に投函を断っていた繊研新聞を支局に受け取りにいった。1月1日付けの新春特集号、1面は「コムデギャルソン、川久保玲が語るクリエーション」である。
ネット版でタイトルは確認していたが、本紙を読むのは初めてである。繊研新聞でも業界を前出と同じように見ている。「この逆境を跳ね返すには、知恵や工夫を凝らしてビー・クリエイティブである産業を取り戻す」ことが必要だと強調していた。
業界にとっては言わずもがなである。でも、クリエイティビティだけを追っかけても、ビジネスにはならない。これもずっと言われてきたことだ。業界にとっての永遠のテーマであり、ジレンマでもある。でも、本当にそうなのか。
このソリューションを導くヒントを、同じ紙面で掲載されたコムデギャルソンのデザイナー、川久保玲氏が語っている。
コムデギャルソンは高校時代にその名を知り、大学生、社会人ではショップを訪れ、商品を幾度と無く買ってきた。
コレクションのイメージから、ブランド=奇抜さで見られているが、素材はほとんどオリジナルで、非常に質感が高い。シーズンごとの企画力も秀逸で、シンプルなデザインのアイテムは、数年間は着続けられるからコストパフォーマンスは良いと思う。
つまり、意外に思えるが、ビジネスもかなり意識しているブランドだと思う。
インタビューで川久保氏は、「コレクションを象徴として考えたいというのが最近の気持ちです」「クリエーションの象徴は精神的な部分も含めて強いものがあり、一方で、クリエーションをビジネスにする別の土台、別の部屋が必要です」と。
やや抽象的な言い方だが、コムデギャルソンというブランド企業、末端までのスタッフの生活、取引先の経営までも背負っているのだから、収益を上げる部分はきちんとして押さえておかなければならないというのは、当然だろう。
また「本当はビジネスもクリエーションです。究極のクリエーションをビジネスにしていくには、数字を追うだけでは意味がない。いかにクリエーションのビジネスを作り上げるか。これも私のすごく大きな仕事です」と。
これについては数年前、朝日新聞のインタビューで答えていたことと同じである。派生ブランドをいくつも作り、シンボリックな記号化で収益を上げる。往年のDCブランドのようにMDに注力しすぎたことによる同質化を避けるべく、それぞれに特徴を持たせる。
そのバランス感覚はさすがコムデギャルソンであり、コムデギャルソンのコムデギャルソンたる所以だろう。
川久保氏はインタビュー紙面の最後で、次のように語っている。
「この20年で新しいことに目を向ける価値観が段々薄れています。大きな企業や流通の仕事をしている方々に、そうした価値観をもっていただかないと先はない」
「上手に区分していけば、売れるものだけでなく新しいものを見せられる場はいくらでも作れると思います」「作っていただきたいですね」
クリエイティビティと新しいもの。売れ筋追求で、ステレオタイプな業態とMDが市場の溢れる中、取り組むべき最大のテーマでもある。
筆者は新しいものを作り出すには、別に難しく考える必要はないと思う。川久保氏が言うところの知恵と工夫を凝らせばいいのだ。企画の方向性として知恵を出すにはまず考え方、思考回路のパターンを組み替えてみることだ。それでアイデアはいろいろ生まれる。
例えば、デザインは基本形は決まっているから、まず素材を替えてみるのも良い。さらにそのクオリティを上げれば、それだけでフォルムにシャープさが出るので、デザインは変わってくる。きっと新しく見えるはずだ。
またデザインを大きくしてみる。この秋冬にあるコンテンポラリーブランドが発表したボディの一部を大きくしたコクーンシルエットがそうだ。当然、一部を大きくすると一部は小さくしなければ、全体のバランスは崩れる。
つまり、小さくすることもアイデアなのである。こうした種々の工夫がクリエイティビティの真骨頂と言えるだろう。
要はベーシックの基本形をどこまで「外し崩し」して新しさを表現できるか。コーディネートや売場編集でのそれが限界に達している今、デザインや素材、色そのものを変えていかないと、新しさは感じさせない。
その他のキーワードとしては、「他のディテールで代用できないか」「チェンジしたらどうなるか」「逆さまやバイヤスにしたらどうか」「合わせたらどうか」etc,発想法はいくらでもあるだろう。工夫とはそうして考え方を駆使することで達成できる。
Be Creative。これまでのマーケットにない商品。「エッジの利いたテイスト」「セレクトにはない色と素材感とフォルム」「このデザインだから、このプライスでもいいという価値観」。
誰もがチャレンジできると思うし、そうしたところが2015年はサクセスすると思いたい。いや、そう思う。