HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

イベントだけでは認知されない。

2015-01-14 06:09:38 | Weblog
 福岡アジアファッション拠点推進会議が主催する「ファッションウィーク福岡(FWF)2015」 の概要が発表された。 今年はタイアップ企画として、「クリエーター・ポップアップショップ」が実施予定となっている。

http://www.fa-fashion.jp/index.php?action_detail_index=true&doc_id=270

 推進会議は「地元で活躍するクリエーターたちに場を与えることで、自らの才能を披露する機会を提供し、あわせて福岡独自のクリエイションを対外的に発信することを目的に実施する」とタイアップ企画の意図を触れ込む。

 具体的には「イムズ」「キャナルシティ博多」「博多阪急」「ソラリアプラザ」「アミュプラザ博多」「岩田屋」ほか商業施設内の「エスカレーターサイド」や「回廊まわり」を使用し、「期間限定の販売催事」にするというものだ。

 条件は「洋服」「ファッションアイテム」の販売に限り、出店先から「売上げ歩率15%」と「諸経費(水光熱費、複合端末使用料など)」を差し引かれるもの。什器類、装飾類・販売スタッフはクリエーター側で準備することになっている。

 また、店構え、品揃えに関しては商業施設担当者の「事前チェック」が必須で、MD内容がフロア・周辺店舗と検証された上で、OKとなる。出店にあたっては、出店者と商業施設間で「契約締結」が必要となる場合があるとのことだ。

 当然ながらクリエーターと言っても、商業施設で売場を借りる上では「メーカー」「販売業者」と見なされる。だから、売りっぱなしは許されず、アフターまでの自覚を求められるわけだ。でも、公金を使う事業の割に、何とも上から目線のもの言いである。

 昨年のFWFでは、福岡市役所横のふれあい広場を使って「ファッションマーケット」と銘打ったオープンイベントが開かれた。それも事前の「規定」では出店者には「バザーではありません。クリエーションの発信の場です」という条件が付けられていた。

 出店者はプロのクリエーターや学生などが対象とされ、前年の秋口から募集されたが、思うように集まらなかった。そのため、規定は大きく変更され、「専門学校生が古着を売るのもOK」といったフリマと何ら変わらないイベントに落ちてしまった。

 結局、ファッションマーケットは、商工会議所の部会に所属する地場アパレルメーカーに直営店を出店してもらったり、代理店がセッティングした企業のサンプリング、キッズファッションショーなどを抱き合わせて、何とか体裁と整えたのだった。

 結果として、これが「クリエーションの発信」かというと、大いに?がつく。

 さて、今年のイベントも、相変わらず専門学校のファッション部長である企画運営委員長が考えそうな内容である。昨年は所場代を要求したため、出店者が集まらず、イベント会場のキャパを埋め、規模を出すにはそれなりに苦労したはずだ。

 その反省もあってか、今年は商業施設内に場所を借りるローコスト企画に落ち着いた。これなら1カ所ではないから、インパクトの無さも解消されるし、集客が少なくても出店者だけのせいではない。まあ、売上げばかりは出店者の責任になるのだが。

 また、出店料が歩率制であるため、昨年のようにクリエーター、出店者の金銭的な負担は少なくなる。凡庸な頭で自己の責任を回避する術をひねり出したかたちだ。学習効果は働いているようである。

 ただ、どのクリエーターがどこの売場を確保できるかは、受け入れる商業施設側の裁量に委ねられている。自分が出したい店舗と施設側が出してほしい商品が合致すればいいが、果たして地場にそれほどの実力派がいるかどうかである。

 イベント期間は昨年より短く8日間。タイトル通りのウィークに落ち着いた。でも、期間すべてで売場展開ができるかどうかは、現時点ではっきりしていない。受け入れる側次第ということだろうか。詳細は13日のマッチングミーティングで説明されたと思う。

 でも、専門学校生の作品に毛の生えたような商品では、まず百貨店は受け付けないだろう。せいぜいイムズやキャナルシティ博多、 ソラリアプラザ、JR博多シティなどファッションビルや駅ビルのイベントスペースがいいとこだ。

 逆にファッションビルは百貨店の集中レジではないから、金銭のやり取りは自店で行うことになる。フリマならまだしも、ファッションビルで手提げ金庫じゃ興ざめである。

 要はいくら期間限定催事といっても、昨年のようなオープン会場にテントを張ったフリマもどきではない。クローズドスペースで、しかもれっきとした主要商業施設なのだから、きちんとした売場づくりを行わなければ、「店」足らないということになる。

 12月に岩田屋で展開された「YOHJI YAMAMOTO LIMITED SHOP」は、まさにエスカレーターサイドで開催された期間限定催事だった。ウエアから小物、雑貨のVMDまで考えられ、専用のフィッティングルームも完備していた。

 ショップ展開するブランドだから当たり前なのだが、単にものづくりばかりやっているクリエーターがどこまで「小売り」を考えきれるかは、懐疑的だ。

 所詮、専門学校が大名あたりでやらせている「リアルショップ」の場所を変えただけじゃんと、言われるとどう抗弁するのだろうか。

 正直なところ、イベントに無理矢理引っ付けた期間限定催事がクリエーターにとって、どれほどのメリットがあるのか。また、受け入れる商業施設側には相乗効果があるのか。答えは否。どちらともほとんどないと言っていいだろう。

 自分の作品を商品として、ショップのバイヤーにつけてほしい。また、お客さんに買ってもらいたいのなら、常日頃からの情報発信や営業活動が不可欠である。

 インターネット環境が整い、SNSが当たり前の時代。まずブログやFacebookなんかで積極的にアピールするのが先だ。クリエーターの中には実践しているものもいるだろうが、地場ファッションの現場ではほとんど伝わってこない。

 一人で発信力が乏しいと思うなら、共同のポータルサイトなんかに参加すれば良い。それである程度、作品の認知度が高まれば、期間限定催事もさらなるアピールになる。

 卸として取引先が決まっている商品やブランドなら、直に販売することは難しい。そうした商慣習を破ることが新たなファッションムーブメントでもあるのだが、言うは易し行うは難しである。あくまで取引先のバイヤーがそれを飲んでくれればの話だ。

 だから、こうしたイベントに参加するクリエーターは、そこまでのビジネスポジション、売上げ規模を持たないということになる。筆者が専門学校生に毛の生えたと言うのは、そうした理由からだ。

 尤も、場を提供されただけでは、クリエーションの発信なんかにつながるはずはない。ファッション業界で仕事をしている人間なら多くが知る所。プロでさえ、展示会で増えるのは「名刺」のみで、「取引口座」ではないと言うくらいである。

 だから、受け入れる商業施設側も大して期待してないのは、想像に難くない。商工会議所や行政側から企画を持ちかけられたから、「しかたない。協力しますか」というのが本音というところだろう。

 推進会議の企画運営委員長は専門学校のファッション部長。自校の現役学生、またOBで地場で活動するに人間に対するメンツがあるはず。また、イベント実績を予備軍へのプロモーション、入学勧誘のギミックにしたいのは想像に難くない。

 それは他のファッション専門学校にも言えることだが、クリエーションの視点、商品のレベルが学生や専門学校に毛の生えたレベルで、「市販」「量産」クラスに達しないのであれば、いくら「場」を提供したところで本末転倒である。

 しかし、話はそんな単純なことではない。この事業にはいろんな問題点が隠されている。まず、2008年に福岡アジアファッション拠点推進会議が発足し、事業が始まった時点で、「クリエーターたちの情報を発信する」は柱のひとつだったはずだ。

 そして、10年には「国の緊急雇用基金2700万円」を利用して福岡県が公募した「福岡ファッションビジネス情報発信システム」が制作された。これにも「クリエーターと企業とをマッチングさせるコンテンツ制作」が必須条件になっていた。
 
 しかし、この事業をゲットしたRKB毎日放送の子会社であるWEB制作会社は、全く情報リサーチもコンテンツ制作の能力も欠いていた。

 そもそも、クリエーターのアトリエなどに足を使って出向く「勧誘活動」も、一切行っていない。第一、そんなファッション情報など全く収集していないから、できるはずもないのだ。

 でき上がった「ファッションサイト福岡」は、最初からファッションビジネス情報を発信する機能を全く有せず、たった4年の稼働、2年目以降は更新されないゴーストサイトとして、昨年閉鎖された。

 2700万円もの公金はいったいどこにいったのか。SEやWEBデザイナーの雇用につながったと言い訳しても、機能しないサイトに何の価値もない。再度、海外向けのコンテンツにリニューアルされるという話だったが、制作される気配は一向に見えない。

 まあ、前回は緊急雇用基金を利用した「単年度事業」だった。コンテンツ制作のみならず、更新やメンテナンスの費用もかかることから、多年度事業の予算が確保できないところで、ペンディングしているものと思われる。

 もし、「ファッションサイト福岡」がまともなもので、ファッションビジネス情報を発信できていたなら、クリエーターの広報活動やプロモーションにも大いに貢献できたはず。また、今回のイベントもそれらと連動されれば、いくらでも販促につながるだろう。

 つまり、推進会議のすべての事業企画が場当たり的な思いつきでブツ切れなのだ。あるいは丸投げされる業者の脳みそレベルでしかない。どちらにしても一番の根本原因は、企画運営委員長がおつむてんてんなのだからだ。

 とても変革とリ・クリエーションが求められるファッション業界に向けたものではない。所詮、事業はこんな輩の利権の巣窟にすぎないのである。

 FWFは2年前、名前にそぐわず1ヵ月強の期間で実施された。昨年は予算の関係から、それが半分くらいに短縮された。そして、今年はほぼ1週間。その名の通りだが、「お客さんに福岡に来て、商品を買ってもらう」という目的とは遠い内容だ。

 主催者側は未だに「試行錯誤の段階」と言い張るだろうが、要は企画力がないだけの話である。

 そして、事業予算の大半がRKB毎日放送の事業、「福岡アジアコレクション(FACo)」に流れていることもある。ああ、それと代理店のBDが仕切る「カワイイ区」があった。

 今年は東京のタレント事務所所属のミカエラなんちゃらって区長は、ゲスト出演はしないのだろうか。それとも、シークレットゲストとやらでサプライズか何かをやらかすのか。企画運営委員長は、 FWFにやたら「カワイイ区との連動」を勧めていたが。

 ただ、BDとの契約では、ミカエラなんちゃらが福岡でのイベントに参加するたびに、「営業」として扱われギャラが発生する。それを昨年、福岡市議会で市の担当者がかなり追及されていたが、企画運営委員長もトーンダウンしたのか。

 まあ、今年の事業をルーチンでゲットしている代理店のHにすれば、「何でよその代理店のアカウントになる仕事をしないといけないのか」が本心のはずだから、そんなこと滅相もないことだろう。

 どどのつまり、すべての事業がファッション音痴によって何の連携もなく、場当たり的な思いつきで行われていることだけは確かである。メディア、専門学校、代理店、その子飼いの業者など、利害関係者の思惑が絡んだ安っぽい事業に成り下がっている。

 どうやら今年のFWFも代理店は香具師まがいの飲食やストリートパフォーマンスを組み合わせて、マージンをはねる魂胆のようだ。本音のところ、こんなもので福岡のファッションが盛り上がると思っているわけでもないだろう。

 昨年8月に開催された事業報告会を兼ねた「福岡ファッションフォーラム」では、FWF2014については、企画運営委員長は「約250もの商業施設や個店が連携し、イベントやセールを行った」と強弁を振るった。

 しかし、これはパンフレットに無償で掲載された店舗までカウントした数字で、行政が公共事業で報告する手合のいい水増しデータである。実際にどれほどの販促効果があったのか。客観的な検証は全くなされていない。

 まさにイベントを実施したいがゆえのまやかし。でも、企画運営委員長の取り繕いもそろそろ随所に綻びが見えて来たようである。

 本当に福岡のファッション産業にとって、春先の販促につながる企画にしたいのなら、FACoなんて客寄せ興行を即刻止めればいい。そして、その分を予算を「福岡市の全店で利用可能な買物券」にすればいいだけの話である。

 今年の初売りで、新天町商店街が発行した「1万円で1万2000円分の買い物ができる(セールにも使える)お買い物券」は、お客で長蛇の列ができ完売する人気だった。まさか推進会議のお歴々、企画運営委員長がご存じないはずはあるまい。

 集客力で大型商業施設に劣る個店には、買い物金額のパーセンテージでハンディをつければいい。一商店街でこれほどの人気なのだから、福岡市全体ならどれほどの販促につながるか。

 それなら商業施設に出店するクリエーターにとっても、商品の購買につながるきっかけになるかもしれない。

 ただ、それには少なくともお客が買うに足る「商品の完成度」が条件となる。単なるプリントTシャツをクリエーションと言われ、高い金を出してまで買うのは、身内などでない限りありえないからである。

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