今年は猛暑、残暑が続いたため、秋冬物のPOP UP STOREの開催を後ろ倒しにするメーカーがあった。お客としては通販サイトなどで先買いしても、実際に着るのは随分後になる。だから、在庫さえあれば十分なのだが、メーカーはそうはいかない。すでに抱えている在庫はできるだけ現金化しないと運転資金が枯渇する。さらに顧客の先買いで卸先で完売したものは、追加オーダーされる可能性もある。だが、バイヤー側は期末に売れ残る可能性もあるから、時期的な見極めが難しい。11月に入っても暖冬が続いている点が非常に悩ましいのだ。
だから、自らPOP UP STOREを開催して、お客に現物を試着してもらうなどして、卸先とバッティングしないエリアで新規客の発掘や購入に誘うところもある。いわゆるDtoC(ダイレクトツーコンシューマー)だ。以前ならメーカーは取引先のショップに配慮して直販することはなかったが、そうした業界の不文律も少しずつ変わってきている。メーカーが体力を無くせば商品供給が滞って、店側も売るものが無くなるリスクがある。多くのお客さんに商品を知ってもらうには、小売店に卸すだけでは限界がある。共存共栄、ウィンウィンとなるには、長年の慣行も少しずつ見直す必要があるようだ。
卸先とバッティングしないエリアのお客さんを開拓することも重要だ。先日もあるメーカーのPOP UP STOREが開催されたので行ってみた。東京、名古屋、大阪などの主要都市を巡るキャラバン型で、福岡でも2日間にわたって開催された。担当者の事前説明では、「自社の通販サイトでは、10月の末くらいに秋冬物の全ラインナップが完了します。でも、ネットでは素材感や着心地はわからないので、ぜひPOP UP STOREで現物を見て確認して欲しい」とのことだった。
このメーカーはエッジを効かせたデザインではなく、あくまで上質な国産素材を使用したミニマルなアイテムを創り出している。POP UP STOREにラインナップした商品については、その路線を継続しているものの、生地にもう少し組織変化があってもいいのではと感じた。デザインに特徴がないので生地があまりにフラットだと、着た感じがペタとしてメリハリのない体型の人間には少し厳しい。それでも人気があるようで、多くのお客さんがつめかけていた。
福岡というエリアは地勢学的に韓国を中心にしたアジアからの旅行者も多く、その中には国内の専門店系アパレルの服、いわゆるドメスティックブランドを好んで買っていく人が増えている。今回のPOP UP STOREにも、韓国の旅行者らしき若者が数人来ていた。外国人からすれば、メジャーなブランドなら東京や大阪のファッションビルでも買うことができるが、地域のセレクトショップが好んで扱うようなアイテムは足で探さなければならない。
だから、まずはメーカーのサイトでめぼしいアイテムをピックアップし、取り扱いショップ情報を入手する。そして、旅行で来日した時に立ち寄って現物を確認し、気に入れば購入することがあるようだ。そうした商品を製造販売するメーカーがPOP UP STOREを開催してくれると、いちいちショップを巡る必要もなくダイレクトに商品を見たり、試着したりすることができる。だから、旅行ついでに効率よくウィンドウショッピングを楽しめるわけだ。そして、
気に入ったのなら、帰国した後に通販サイトで購入すればいい。
最近では訪日外国人でも若者は日本の古着を買うようになっているが、中でも洋服好きは日本人と同じように専門店系アパレルが作るアイテムに惹かれている。まあ、日本人の若い女性が比較的近い韓国を訪れ、化粧品やファッションを購入するのだから、逆に韓国の若者が地理的に近い福岡を訪れ、モード感のあるミニマルな服を買うことは当然あり得るだろう。
POP UP STOREを開催したメーカーだが、地域のセレクトショップを中心に卸してきたきたため、価格より質を追求している。そのため、海外のメジャーブランドよりは安いが、日本のSPA系に比べると割高に感じる。プライスゾーンは秋冬物のシャツで20,000円~30,000円、パンツが18,000円~23,000円、ジャケットが30,000円~40,000円、コートが50,000円~60,000円になる。海外のラグジュアリーブランドに比べると手頃なのだが、デフレが続いた日本の金銭感覚からすると、やはり割高さは否めない。
それでも、わざわざ韓国の若者がPOP UP STOREに合わせて日本を訪れているのだから、単に商品を見るだけというよりは、明らかに購入目的ではないか。日本は生活必需品の物価高騰で実質賃金が目減りしている中、政治は103万円の壁だの、税収が7億円減少だのと賑やかしい。だが、韓国の若者の中にはそんな日本とは違って、欲しい商品には惜しげもなくお金を使うものがいる。それは景気が良くて収入がアップしているのか、それとも元々富裕層なのかはわからない。ただ、単にメジャーで高額なブランドを購入するのではなく、上質な素材を使った服に惹かれるのは、洋服好きが本物志向に移っている証左と言える。
地勢学的なメリットを生かし市場を拡大
訪日外国人が日本製の服を購入する具体的な理由は、価格に対してクオリティが良いことだ。例えば、東京の銀座や表参道のメーンストリートで見かけるのは、海外のラグジュアリーブランドがほとんど。だが、商品の価格はシャツでも最低で50,000円台。パンツは同80,000円~100,000円。ジャケットになると150,000円を下らない。いくら円安とは言え、よほどの富裕層でない限り手が出せない。ブランドだからと飛びつくのは、ファッションに対し成熟していない中国人の富裕層くらいではないか。
それに訪日外国人はリピーターになってきている。福岡を訪れる韓国人もそうだ。海外旅行というより、少し遠出する感覚で買い物やグルメを楽しんでいる。リピーターになれば、ショッピングについても学習する。ブランドだからとか、高級品なら安心という条件は薄れていく。どんなアイテムが自分に相応しいか。実際に自分の目で確かめる。もちろん、予算の範囲内というか、この価値でこの価格なら買いか、買いでないかを判断する。そんな感じだろう。
だから、前出のメーカーのようなアイテムだと、商品の価格はラグジュアリーブランドの半額以下から3分の1だ。おまけに生地は上質で、デザインはミニマルだから、色んなアイテムとコーディネートしやすい。それだけお値打ち品に感じるはずだ。そう考えると、日本を何度も訪れたことがある韓国人ほど、理にかなった服の買い方に移っていると思う。韓国に近い福岡は、洋服の購入について学習し成熟してきたお客を捉えるには、絶好の立地。メーカーや小売り側にも外国人向けの対応が求められる。
福岡天神周辺は新型コロナウィルス感染が5類に移行して以降、観光客が以前にもまして増えているように感じる。天神ビッグバンの仮囲い前で立ち止まっているのは、スマホの地図アプリで目的地を探す外国人ばかり。再開発の槌音と飛び交う外国語が福岡天神の今を象徴する。大名界隈の古着ショップを訪れる若者の中に外国人が増えているというのは前にも書いた。一方で、あるセレクトショップのオーナーは、店の売上げの1割ほどを訪日観光客が占めるようになったので、来年は2割くらいまで伸ばしたいと語っていた。
そのために何をするのかと尋ねると、「店のHPを英語のほかに韓国語、中国語のバージョンも作らないといけないかもね」と、オーナーは答えた。以前に日本のショップを紹介する韓国のHPがあったが、それを翻訳機能で変換するとぐちゃぐちゃな日本語になった。その逆のパターンもあるだろうから、正式な外国語版のHPは検討する余地があるだろう。以前、福岡アジアファッション拠点推進会議が活動していた時には、福岡におけるファッション情報の発信を目的にポータルサイトが制作されたが、全く機能することなく数年で閉鎖された。
やはりサイト制作は各個店が独自でやるべきだ。自治体などが費用を拠出すると、利害関係者が事業を目的化してしまう。地元ファッション産業の振興などどうでもよく、利権を得られればいいからだ。福岡は小売りの街である。アパレル関連では、地元に根ざした専門店やセレクトショップなどが鎬を削っている。オーナーバイヤーが市場の動向に目を光らせ、トレンドが合致すると感じたら、迅速に品揃えに反映させていく。そうしたショップやアイテムを訪日観光客の洋服好きは見逃さない。でも、仕入れた商品だけで目の肥えたお客を捉えるのは限界がある。メーカーのPOP UP STOREの定期開催は必要だろう。
福岡のファッション市場がアジアに広がっているという点は好ましい傾向だ。米国ではトランプ大統領が米国ファーストを公約に二度目の政権に就いたことで、いろんな経済対策に乗り出していくようだが、日本で一番注目されるのは為替の変動だ。就任直後は円安、ドル高のままで、大きな変化は見られなかった。今後も円安で推移していけば、訪日外国人の活発な消費は続くと見られる。ただ、アパレルについては買い方の変化が見られるだけに、自店の品揃えの中で、外国人をどう捉まえていくかが重要になる。
加えて一時的なトレンドを追いかけるだけでは、長続きしない。韓国人はともかく、中国人のブランド買いが今後も続くとは限らない。日本、福岡の市場でも、メガヒットが生まれなくなっているからこそ、先のメーカーのように卸だけでなくDtoCのチャンネル整備も必要だ。トレンドはブームが去るのも早いが、熱狂的なブランドのファンが残り続けても、市場がそれ以上広がることはない。SNSでのファンコミュニティ内で収まってしまうからだ。
日本の消費者は食品の値上げで衣料品への支出をセーブしている。2023年12月の国内消費者物価指数の被服及び履物、いわゆる服と靴は前年同月比3.0%増だった。この数値は総合指数の上昇率(同2.6%)を上回った。暖冬で秋冬衣料が苦戦する一方、薄手の夏物やスニーカーが消費を牽引したと見られる。それは消費者がどこにお金をかけるか、それだけシビアになっている証左でもある。
コアなブランドファンと一般消費者の服に対する熱量は明らかに差があるわけで、これ以上拡大することはあり得ない。もちろん、ユニクロのように万人受けするブランドはもう必要ではない。だからこそ、価格対価値に軸足を置き、マスにはならなくとも地道にファン客を掘り起こす商品や品揃えがカギになるわけだ。ミニマムなコミュニティ市場の発掘というべきか。それには日本人だけでなく、外国人のファンも捉えていく。
日本のアパレルの価値を知り始めた外国人に積極的にアプローチしていくことは、これからますます重要になる。自社のものづくり、自店のアイテムを好んで買ってくれるのなら、日本人も外国人も関係ないのだから。
だから、自らPOP UP STOREを開催して、お客に現物を試着してもらうなどして、卸先とバッティングしないエリアで新規客の発掘や購入に誘うところもある。いわゆるDtoC(ダイレクトツーコンシューマー)だ。以前ならメーカーは取引先のショップに配慮して直販することはなかったが、そうした業界の不文律も少しずつ変わってきている。メーカーが体力を無くせば商品供給が滞って、店側も売るものが無くなるリスクがある。多くのお客さんに商品を知ってもらうには、小売店に卸すだけでは限界がある。共存共栄、ウィンウィンとなるには、長年の慣行も少しずつ見直す必要があるようだ。
卸先とバッティングしないエリアのお客さんを開拓することも重要だ。先日もあるメーカーのPOP UP STOREが開催されたので行ってみた。東京、名古屋、大阪などの主要都市を巡るキャラバン型で、福岡でも2日間にわたって開催された。担当者の事前説明では、「自社の通販サイトでは、10月の末くらいに秋冬物の全ラインナップが完了します。でも、ネットでは素材感や着心地はわからないので、ぜひPOP UP STOREで現物を見て確認して欲しい」とのことだった。
このメーカーはエッジを効かせたデザインではなく、あくまで上質な国産素材を使用したミニマルなアイテムを創り出している。POP UP STOREにラインナップした商品については、その路線を継続しているものの、生地にもう少し組織変化があってもいいのではと感じた。デザインに特徴がないので生地があまりにフラットだと、着た感じがペタとしてメリハリのない体型の人間には少し厳しい。それでも人気があるようで、多くのお客さんがつめかけていた。
福岡というエリアは地勢学的に韓国を中心にしたアジアからの旅行者も多く、その中には国内の専門店系アパレルの服、いわゆるドメスティックブランドを好んで買っていく人が増えている。今回のPOP UP STOREにも、韓国の旅行者らしき若者が数人来ていた。外国人からすれば、メジャーなブランドなら東京や大阪のファッションビルでも買うことができるが、地域のセレクトショップが好んで扱うようなアイテムは足で探さなければならない。
だから、まずはメーカーのサイトでめぼしいアイテムをピックアップし、取り扱いショップ情報を入手する。そして、旅行で来日した時に立ち寄って現物を確認し、気に入れば購入することがあるようだ。そうした商品を製造販売するメーカーがPOP UP STOREを開催してくれると、いちいちショップを巡る必要もなくダイレクトに商品を見たり、試着したりすることができる。だから、旅行ついでに効率よくウィンドウショッピングを楽しめるわけだ。そして、
気に入ったのなら、帰国した後に通販サイトで購入すればいい。
最近では訪日外国人でも若者は日本の古着を買うようになっているが、中でも洋服好きは日本人と同じように専門店系アパレルが作るアイテムに惹かれている。まあ、日本人の若い女性が比較的近い韓国を訪れ、化粧品やファッションを購入するのだから、逆に韓国の若者が地理的に近い福岡を訪れ、モード感のあるミニマルな服を買うことは当然あり得るだろう。
POP UP STOREを開催したメーカーだが、地域のセレクトショップを中心に卸してきたきたため、価格より質を追求している。そのため、海外のメジャーブランドよりは安いが、日本のSPA系に比べると割高に感じる。プライスゾーンは秋冬物のシャツで20,000円~30,000円、パンツが18,000円~23,000円、ジャケットが30,000円~40,000円、コートが50,000円~60,000円になる。海外のラグジュアリーブランドに比べると手頃なのだが、デフレが続いた日本の金銭感覚からすると、やはり割高さは否めない。
それでも、わざわざ韓国の若者がPOP UP STOREに合わせて日本を訪れているのだから、単に商品を見るだけというよりは、明らかに購入目的ではないか。日本は生活必需品の物価高騰で実質賃金が目減りしている中、政治は103万円の壁だの、税収が7億円減少だのと賑やかしい。だが、韓国の若者の中にはそんな日本とは違って、欲しい商品には惜しげもなくお金を使うものがいる。それは景気が良くて収入がアップしているのか、それとも元々富裕層なのかはわからない。ただ、単にメジャーで高額なブランドを購入するのではなく、上質な素材を使った服に惹かれるのは、洋服好きが本物志向に移っている証左と言える。
地勢学的なメリットを生かし市場を拡大
訪日外国人が日本製の服を購入する具体的な理由は、価格に対してクオリティが良いことだ。例えば、東京の銀座や表参道のメーンストリートで見かけるのは、海外のラグジュアリーブランドがほとんど。だが、商品の価格はシャツでも最低で50,000円台。パンツは同80,000円~100,000円。ジャケットになると150,000円を下らない。いくら円安とは言え、よほどの富裕層でない限り手が出せない。ブランドだからと飛びつくのは、ファッションに対し成熟していない中国人の富裕層くらいではないか。
それに訪日外国人はリピーターになってきている。福岡を訪れる韓国人もそうだ。海外旅行というより、少し遠出する感覚で買い物やグルメを楽しんでいる。リピーターになれば、ショッピングについても学習する。ブランドだからとか、高級品なら安心という条件は薄れていく。どんなアイテムが自分に相応しいか。実際に自分の目で確かめる。もちろん、予算の範囲内というか、この価値でこの価格なら買いか、買いでないかを判断する。そんな感じだろう。
だから、前出のメーカーのようなアイテムだと、商品の価格はラグジュアリーブランドの半額以下から3分の1だ。おまけに生地は上質で、デザインはミニマルだから、色んなアイテムとコーディネートしやすい。それだけお値打ち品に感じるはずだ。そう考えると、日本を何度も訪れたことがある韓国人ほど、理にかなった服の買い方に移っていると思う。韓国に近い福岡は、洋服の購入について学習し成熟してきたお客を捉えるには、絶好の立地。メーカーや小売り側にも外国人向けの対応が求められる。
福岡天神周辺は新型コロナウィルス感染が5類に移行して以降、観光客が以前にもまして増えているように感じる。天神ビッグバンの仮囲い前で立ち止まっているのは、スマホの地図アプリで目的地を探す外国人ばかり。再開発の槌音と飛び交う外国語が福岡天神の今を象徴する。大名界隈の古着ショップを訪れる若者の中に外国人が増えているというのは前にも書いた。一方で、あるセレクトショップのオーナーは、店の売上げの1割ほどを訪日観光客が占めるようになったので、来年は2割くらいまで伸ばしたいと語っていた。
そのために何をするのかと尋ねると、「店のHPを英語のほかに韓国語、中国語のバージョンも作らないといけないかもね」と、オーナーは答えた。以前に日本のショップを紹介する韓国のHPがあったが、それを翻訳機能で変換するとぐちゃぐちゃな日本語になった。その逆のパターンもあるだろうから、正式な外国語版のHPは検討する余地があるだろう。以前、福岡アジアファッション拠点推進会議が活動していた時には、福岡におけるファッション情報の発信を目的にポータルサイトが制作されたが、全く機能することなく数年で閉鎖された。
やはりサイト制作は各個店が独自でやるべきだ。自治体などが費用を拠出すると、利害関係者が事業を目的化してしまう。地元ファッション産業の振興などどうでもよく、利権を得られればいいからだ。福岡は小売りの街である。アパレル関連では、地元に根ざした専門店やセレクトショップなどが鎬を削っている。オーナーバイヤーが市場の動向に目を光らせ、トレンドが合致すると感じたら、迅速に品揃えに反映させていく。そうしたショップやアイテムを訪日観光客の洋服好きは見逃さない。でも、仕入れた商品だけで目の肥えたお客を捉えるのは限界がある。メーカーのPOP UP STOREの定期開催は必要だろう。
福岡のファッション市場がアジアに広がっているという点は好ましい傾向だ。米国ではトランプ大統領が米国ファーストを公約に二度目の政権に就いたことで、いろんな経済対策に乗り出していくようだが、日本で一番注目されるのは為替の変動だ。就任直後は円安、ドル高のままで、大きな変化は見られなかった。今後も円安で推移していけば、訪日外国人の活発な消費は続くと見られる。ただ、アパレルについては買い方の変化が見られるだけに、自店の品揃えの中で、外国人をどう捉まえていくかが重要になる。
加えて一時的なトレンドを追いかけるだけでは、長続きしない。韓国人はともかく、中国人のブランド買いが今後も続くとは限らない。日本、福岡の市場でも、メガヒットが生まれなくなっているからこそ、先のメーカーのように卸だけでなくDtoCのチャンネル整備も必要だ。トレンドはブームが去るのも早いが、熱狂的なブランドのファンが残り続けても、市場がそれ以上広がることはない。SNSでのファンコミュニティ内で収まってしまうからだ。
日本の消費者は食品の値上げで衣料品への支出をセーブしている。2023年12月の国内消費者物価指数の被服及び履物、いわゆる服と靴は前年同月比3.0%増だった。この数値は総合指数の上昇率(同2.6%)を上回った。暖冬で秋冬衣料が苦戦する一方、薄手の夏物やスニーカーが消費を牽引したと見られる。それは消費者がどこにお金をかけるか、それだけシビアになっている証左でもある。
コアなブランドファンと一般消費者の服に対する熱量は明らかに差があるわけで、これ以上拡大することはあり得ない。もちろん、ユニクロのように万人受けするブランドはもう必要ではない。だからこそ、価格対価値に軸足を置き、マスにはならなくとも地道にファン客を掘り起こす商品や品揃えがカギになるわけだ。ミニマムなコミュニティ市場の発掘というべきか。それには日本人だけでなく、外国人のファンも捉えていく。
日本のアパレルの価値を知り始めた外国人に積極的にアプローチしていくことは、これからますます重要になる。自社のものづくり、自店のアイテムを好んで買ってくれるのなら、日本人も外国人も関係ないのだから。