HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

バリエーションに復活を託しては。

2014-07-09 13:16:28 | Weblog
 先日、当コラムでデニム素材の混紡率について書いた。目紛しくトレンドが変化するファッション業界にあって、ジーンズがベースアイテムの地位にあるのは揺るがず、話題には事欠かないということだ。

 そんなことを考えていると、先日、フランスのプレタポルテ連盟から、「現代のフランス人女性とモード」なる調査リポートが発表された。これはフランス全土に住む15歳から65歳までの女性1003人を対象に、今年5月、8日間に渡ってインターネットで実施されたアンケートをまとめたものだ。

 質問は「フランス人女性はどのようにファッションを着ているのか」と「日常とファッション」という2つのテーマで構成されている。アンケート結果は、後者でトレンドの必要アイテムでは、「ウエア」が52%とトップで、次に靴の13%、そしてバッグが9%と続く。
 
 中でも、必要不可欠なアイテムという問いには、「ジーンズ」が22%とローブ(ドレス)の9%、ビジュー(ジュエリー)の9%、バッグの7%を抑えてダントツだった。しかも、ホームやオフィス、バカンスでも60%の支持を得たというから、プレタポルテ連盟にとっては意外な結果だったようである。

 もともと、フランスがプレタポルテで行うモード発信は、世界市場に向けてのこと。国内マーケットはいたって質素倹約で、合理的なニーズが主流を占めてきた。そこに北欧からのファストファッションが乱入し、一時は「安いトレンド」が市場を席巻したかに見えた。

 ところが、やはりフランス人女性は共稼ぎが多く、家事や子育てにも前向きに取り組むことから、見栄張りのワンナイトパーティドレスより、疲れないジーンズをメーンで選択するということだろう。アンケート結果の人気度を見ると、それを如実に表している。

 ジーンズ人気が実用ファッションへの回帰を示すという点では、アパレルメーカーがエスラタン混のストレッチ系ジーンズを売り出していることからも説明がつく。ただ、それに甘んじていたのでは、アパレル側のプロダクトアウトは意味をなさない。



 メーカー側もいろんな企画を提案しており、ここには疲弊している日本のジーンズ業界にとっても、参考になる部分もあるのではないだろうか。

 ジーンズはまずデニムの厚さや色、そしてシルエットで、種別を出す。それに前加工や後加工が加わり、バリエーションが広がっていった。しかし、日本ではジーンズ=メンズ、アメカジという固定観念が根強いことで、レディス市場でのデザイン展開が広がっていないのである。

 数年前、某大手ジーンズブランドがモデル出身の有名女優を使って、オーセンティックな型番をスキニータイプにアレンジして、販促キャンペーンを展開した。しかし、いくらメンズの定番ブランドと言えど、レディスへの浸透とまでにはいかず、プロモーションは徒労に終わった。

 日本のレディス市場は、ジーンズとてデザインのバリエーションがなければ、攻略は難しいということだろう。その意味では、フランス人女性のジーンズ人気、またアパレル側の企画バリエーションは、日本でも参考になるのではないか。

 この春、筆者が懇意にするフランスのアパレルメーカーが出展した展示会の資料から、デザインを整理してみたい。まず、シルエットはスリム、スキニーが主流でこの傾向は当分変わりそうにない。ただ、キャリア、中高年向けでは「ブーツカット」、いわゆるフレアも復活の気配だ。

 また、股上が深い、ハイウエストも登場している。これはファッションライターの南充浩さんが日経ビジネスオンライン「糸へん小耳早耳」で書かれているように、「下腹を圧迫するので着用すると苦しさを感じる。だから、その世代にまで普及するのはなかなか難しいのではないかと感じる」が万国共通とすれば、一過性で終わるかもしれない。



 フランスでもジーンズのバリエーション上、キャリアや中高年向けにハイウエストを出したようだが、依然としてローライズが主流であることに変わりはない。でも、フランスが日本と違うのは、ローライズに「コクーン(妊婦向け)」デザインがあることだ。

 南さんが仰る「ローライズジーンズは腹が出たオヤジに最適のパンツだそうだ。なぜなら、腰骨のところで止めるわけだから出ている腹を圧迫することはなく、逆に腹をジーンズの上に乗っけられるから楽なのだそうだ」をそのまま解釈すると、むしろ妊娠中の女性に向くということになる。

 妊娠中はあまり身体を圧迫させない方が良いという医学的な見地からすれば、スキニージーンズは身体を締め付けるので母胎に悪影響を及ぼすかもしれない。でも、フランスではストレッチでコクーン仕様のジーンズを発売すれば、妊娠中の女性は颯爽と穿きこなせるということ。これもお洒落大国のフランスたる所以だろうか。

 ならば、日本でも最近富みに増えてきている妊娠発表のモデルを起用して、日本版コクーンジーンズを仕掛けても面白いのではないだろうか。いくつものファッション雑誌が廃刊している現状を考えると、モデル側も四の五の言っていられる立場ではないと思うからだ。



 他のアイテムでは、デニム段階からプリント柄を施したものや共地を使ったウエストマークと側帯「ライン」。カラーデニムを利用した「パッチワーク」、そのパッチワークのワンブレイク。単なるブリーチアウトだけでなく、さらに大胆な塗り加工を施した「ペイント」などがある。

 これから秋冬にかけて、フランスは黒を基調としたコーディネートに移行する。そうした中、ボトムスに差し色的なジーンズをもって来ることはフランス女性なら考えうることだ。ならば、日本でも数年来続くスカート主流の着こなしから、デザインバリエーションでジーンズの復活に掛けてみるのも面白いのではないかと思う。
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