HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

ギャップがまたも路線変更。

2008-04-10 16:49:07 | Weblog
 世界一のカジュアルチェーン網を敷いていながら、売上げ低迷を続けるギャップ。数年ごとにトップが交替するものの、売上げ回復から成長への足がかりはいまだ築けていない。日本ではアメカジが安定した人気を誇るのに、世界的にみるとこの状況なのだから、何とも皮肉な話だ。
 そのギャップが再生を賭けて外部からデザイナーを招聘し、08~09年秋冬商品で新コレクションを発表した。質感のあるウールやコットン、革などを使い、アーシーを基調とした多彩なカラリングで、イージーだがスリムなシルエット。1940年代のヨーロッパファッションを現代風にアレンジしたのが特徴だ。
 それはギャップが得意としてきたベーシックなアイテムに高級品を加えることで、売上げ低迷から脱却しようという意図を感じさせる。デザイナーは米国のアン・クラインやペリー・エリス、伊のG・アルマーニのホワイトレーベル、仏のパコ・ラバンヌなどを手がけており、上質な素材使いと繊細なパターンづくりで豊富な経験をもつ。そのセンスと技術が今回のギャップに生かされた格好だ。
 思い起こせばギャップの誕生は1969年、ジーンズが自由の象徴として広く一般に定着し始めたその時期だった。サンフランシスコのショッピングモールの一角に、ジーンズとレコードを販売する1号店をオープンする。サンフランシスコが選ばれたのは、ファッションをはじめとする多くのアーチストが住み、トレンドに敏感なゲイコミュニティが最も大きいからだ。
 その後、ジーンズに加え、オリジナルのシャツやジャケットの販売をスタート。アン・テイラーから有能なスタッフを引き抜き、マーケティングにも取り組む。そしてアイテムを絞り込み、本社で決めたデザインをXSからXXLまで様々なサイズにして大量生産するSPA(製造直売小売り業)スタイルを確立した。
 また米国で伝説にもなった「Individuals with Style」という、ライフスタイルを提言する広告キャンペーンもスタート。アイテムはベーシックながら、広告で売るという米国ファッションの力を誇示していった。これは無印良品やユニクロの広告づくりにも大きな影響を与えている。
 ところが、90年代以降は消費者が多様化し、市場が成熟したこともあり、ベーシックなギャップは低迷を余儀なくされた。社長が数年おきに交代しては新人デザイナーを起用。ベーシック路線とファッション路線を交互に繰り返すものの、定着したブランドイメージから脱却しきれず、売上げアップには至らなかった。
 ギャップはアメカジを象徴するブランドだが、それ以上に迫力ある店構えやインパクトのあるビジュアルづくりが得意だ。こればかりは欧州ブランドには真似できない米国のDNAである。その中で、アイテムづくりというファッションの原点に返るデザイナー起用と路線変更。これまでと同じ轍を踏まないように願うばかりである。…続く。
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