HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

スニーカーに競争力はあるか。

2011-10-05 17:55:30 | Weblog
 リーバイスのシューズラインに来年の初夏から日本向けのコレクションが加わるという。デニム地を使ったスニーカーなどをメンズ、ウィメンズで揃え、セレクトショップからディスカウントストアまでラインを分けて販売するそうだ。

 リーバイスと言えば、ジーンズでは世界的なブランドだし、日本でもNBのカテゴリーに入る。ただ、日本市場ではここ数年、デフレの中でマーケティング、価値創造ともに後手後手となっており、苦戦状態が続いている。
 まあ、最近の若者からすれば、それほどのブランドでは無いようだし、安くてトレンドを打ち出すものがたくさん出てきているのだから、リーバイス離れはしかたないかもしれない。だから、今度はスニーカーで離れたお客を取り戻したいのかもしれないが、果たして勝算のほどはどうか。
 リーバイスのシューズは、本国の米国ではカジュアルチェーンやディスカウントストアに並び、年間500万足以上も売れている量販系のマスプロブランドである。
 ところが、欧州向けは企画やマーケティングを同社のミラノオフィスが行ない、各国のブティックや仏PPRの通販会社レッドキャッツなどが扱っている。いわば、ファッションスニーカーのカテゴリーに入るお洒落アイテムだ。

 日本向けはシューズ卸しのマコトインターナショナルが「欧州発のファッショナブルなデザインは、日本でも可能性が高い」と販売を決めたようだが、筆者は欧州デザインでも量販店向けはともかく、セレクトショップでは難しいのではないかと思う。
 なぜなら、日本の若者向けシューズ、特にスニーカーはABCマートなどの量販系、ジャパン社別注によるセレクト向け、DCブランドとのダブルネームなど、巧みなマーケティング戦略のもとで企画生産されたものがしっかり市場を抑えている。
 すでにマスマーケットはナイキやアディダス、プーマを筆頭にブランドシューズが制圧しており、ミニマムのセレクトショップ市場はイタリア製なんかのスタイリッシュなデザインでないと、バイヤーにもお客にも見向きもされない。その間をダブルネームのキャラクター系が埋めるという状況だ。

 そこにジーンズでもブランド力を失いつつある、リーバイスが立ち向かってどれほど戦えるというのか。写真は現在、フランス国内で販売されているリーバイスのファッションスニーカーである。しかし、日本人の感性からしてすぐに飛びつくようなデザインとは思えない。値段もキャンバス地で55ユーロ、レザーで85ユーロと、いくらユーロ安(1ユーロ=101円強)といっても中途半端は価格帯である。
 一応、マコトインターナショナルが企画も手がける契約にはなっているようだが、得てして海外ブランドは「自分たちがデザインしたものを売れ」という態度を取りたがる。いくらライセンス契約で日本向けに売れる商品を企画しても、世界戦略の効率経営からそんな契約はたちまち反故にされてしまうのだ。
 マコトインターナショナルがそのまま輸入販売するにしても、日本向けデザインを企画するにしても、難しい舵取りを迫られることだけは間違いないようである。
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信憑性に?がつく接客調査。

2011-10-01 14:08:35 | Weblog
 9月30日、キャナルシティ博多の新館イーストビルがグランドオープンした。九州初出店のH&Mをはじめ、天神からキットソンをリーシングし、ザラ、フランフランを館内移動させて大型業態中心の16店で、博多駅、天神との流通戦争に挑む構えだ。
 地元メディアはご多分にもれず天神、博多駅の流通戦争と、ワンパターンのテーマで報道合戦を繰り返すばかり。取材を受ける商業施設も新規のテナント・ブランド導入やハウスカード連携による顧客の囲い込みなどいったルーチン戦略以外に打つ手なし。報道側の切り口、流通側の戦略ともに新鮮さを欠いている。正直、もっと目を向けるべきことがあるだろうと、言いたいくらいだ。

 商業施設の経営者側は戦略面での手詰まり感が否めず、商品政策で差別化ができないなら、接客・サービスを向上しようという手段に打って出ている。博多大丸と福岡パルコのロールプレイングコンテストは公なものだったが、今、各商業施設が水面下で行なおうとしているのが接客調査である。
 「ミステリーショッパー」「覆面調査」など、呼び名はいろいろあるが、商業施設のサービス部門やCSの部署が調査会社に依頼し、いろんな項目ごとに販売スタッフの接客をチェックして、結果内容を報告するものだ。商業施設側はこのデータをもとに、販売員教育やCSに生かしていこうという考えだろうが、果たしてどれほどの効果が期待できるかは疑わしい。
 なぜなら、まず調査会社のレベルがどの程度がわからないからだ。いろんなサービス業を担当しているのか、それともファッション販売に特化した会社か。それによって調査のスキル、項目設定、内容の深堀の程度が変わってくる。

 最近の接客調査は、店舗の客層に近い年齢のアルバイト調査員を雇い、それをお客に仕立ててマニュアルに沿って、調査をさせている会社があまりに多い。調査側がファッション販売に素人なのだから、当然、細かな点までチェックして報告できるはずもないのである。
 実は先日、友人がとある地場の調査会社が商業施設の接客調査をやるらしく、調査スタッフを求人サイトで募集していたと教えてくれた。この会社の代表はTV-Qの経済番組にも出演していたらしいが、メーンはパチンコ企業の接客サービスコンサルティングだという。
 ならば、ファッション販売の接客調査に関する細かなノウハウはお持ちでないだろう。こんな会社が調査するのだから、内容の信憑性には?が付くし、データが接客サービス教育に生かせるなんて到底思えない。

 そもそも、われわれファッション業界人が接客調査に携わったのは、DCアパレルが直営店展開を始めた80年代。経営側がブランドだけで売れていくのを恐れていたし、スキルの高い販売スタッフ(当時はハウスマヌカン)育成をしていかないと、じり貧になるとの危機感もあった。
 筆者は販売会社の接客調査、友人は業界誌の「接客Gメン」として、調査に参加したことがある。それは単なる調査ではなく、調査費を用意して実際に買い物をし、外側の接客シーンからスタッフ、お客の心理洞察までこと細かく採点し、接客内容を詳しく報告書に描写した。
 調査項目もまず販売のプロとしての自己育成面(人を引きつける魅力、清潔感、華やかさ)から、お客の魅力をずぐに見つけられる能力、身のこなしや所作などを徹底的にチェックする。次ぎがアプローチ、声かけのタイミングである。いくら今のお客はスタッフからすぐにアプローチされるのを嫌がると言っても、タイミングを観察できなければプロではない。
 そして、お客の物質的情報の観察力。まず持ち物をチェックし、職業・属性、嗜好、購読しそうな雑誌といった情報を得るているか。体からはサイズ、表情、チャームポイントを探っているかである。
 そして、次ぎはお客の動作的情報の観察眼に移る。さらに説得力あるトーク、苦手なタイプ度…、調査項目は計り知れない。字数に限りがあるし、企業秘密なので、この辺にしておくが。

 筆者が調査で優秀販売員に選んだケースではこんなことがあった。報告書にはあえてスタッフの名前を書かず、履いていた靴のブランド「卑弥呼」のみを記載して素性を明らかにしたが、報告書の内容を読んですぐに自分だと気づいたらしく上司を通じて知らせが入った。さすが優秀販売員に選ばれるだけあって、勉強熱心だと感心したのを今でも憶えている。
 翻って、福岡流通戦争下における接客調査はどうか。商業施設側はルーチンで調査会社に丸投げ。受けた調査会社もファッション販売に対するノウハウは持ち得ない。こんなことに時間とお金を使っていても、激化する流通戦争で勝ち残る優秀な販売スタッフなど育成できるはずがないのである。
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