新年最初のテーマとして良いかもしれない。2019年にリニューアルオープンした渋谷パルコの快進撃とパルコ地方店の課題についてだ。新生渋谷パルコは開業時点で200億円の売上目標を設定したが、新型コロナウィルスの感染拡大による外出自粛で出鼻を挫かれたものの、23年2月期には229億円と対目標値二ケタ増。さらに24年2月期は359億円と対前期比57%の大幅増を達成し、一人勝ちの様相だ。このペースが続けば、来期も対前期比プラス100億円をクリアするかもしれない。
新生渋谷パルコは商業部分が地上9階(10階は一部)、地下1階。延床面積は約4万2000㎡。テナント数は192店で、2019年11月22日に開業した。令和の時代に相応しい次世代の都市型ショッピングセンター(SC)を標榜し、ファッションからアート&カルチャー、エンターテインメント、フード、テクノロジーまでの5つの要素をミックスして一つの館を作り上げた。中でも新たに加わったテクノロジーとは買い物のスタイルを進化させたもので、それらを活用する戦略は以下の3つを軸とした。
◯デジタル技術を活用したオムニチャンネル対応の売場「CUBE」
◯売場面積130坪に10坪程度の小型店11店舗を集積
◯品揃えは限定商品や戦略アイテムに限り、EC購入に軸足を置く
快進撃の背景には、CUBEで導入されたショールーミングやクリック&コレクト。ここにしかないブランドやわざわざ見に来てもらう品揃え。尖った商品を扱うショップを集積したがゆえに面を広げるために小ぶりにしたことがある。実店舗を集めたのは、渋谷パルコにしかないからわざわざ来てもらうのと、限定商品や戦略アイテムを揃えるがゆえに「現物」を見て、「商品」に触れてほしいということだ。
渋谷は国内外から多くのお客が訪れる。だが、遠隔地からの場合はそう何度も訪れることはできない。だから、パルコで見つけた商品が気に入った場合、再度訪れなくてもECで購入できるのはお客にとってのメリットだ。さらに限定や戦略がつく商品は、店で直に見てもらわなければ衝動買いを誘えないし、お客がこうした商品の現物を見てその時は購入しなくてもECで購入できるなら、その後に販売に結びつく可能性は格段に高くなる。こうした手法が渋谷を訪れる外国人にも響いているようで、渋谷パルコの2024年2月期の売上高に占めるインバウンド取扱高は32.1%で、パルコの中ではダントツだ。
元々、パルコは渋谷という立地で誕生し、先端ファッションの情報発信、斬新なテナントの孵化器という要素が相まって、若者に対する絶大なブランド力を発揮した。2000年代にはその威光に翳りが出た時期もあったが、大きく羽ばたきたいと願うファッションブランドや新業態は、テストケースを含め「出店するならまず渋谷パルコ」というスタンスは揺るがなかったと思う。新生パルコの1階で展開される海外ブランドは別としてCUBE以外の各ショップも、パルコに店を出すからこそバリュをあげられるという思いは強いはずだ。
もっとも、10数年前には若者マーケットの捕捉を目指すJフロントリテイリングとイオングループの間で、パルコ株の激しい争奪戦が繰り広げられた。結果は前者が2012年3月、株式の33.2%を取得して持分法適用子会社化し、8月にはTOBで株式を追加取得して連結子会社化。19年12月27日から20年2月17日にもTOBを行い、1株1850円で取得して完全子会社化した。パルコに8%を出資していたイオングループも、TOBには賛同している。
都市型SCのビジネスモデルは土地を確保して器を作り、開発コストはテナントに按分した保証金で賄い、情報を発信して広域から集客し歩率家賃で稼ぐもの。しかし、新規開発には時間を要し、開業しても順調に収益を上げられる保証はない。ならば、既存の企業を手っ取り早く買収すれば良い。Jフロントリテイリングもイオングループも考えたことは同じだ。
ただ、買収劇から十数年、パルコを取り巻く環境は激変した。JR東日本が運営する駅直結のルミネは24年3月期の全館売上高が過去最高を記録し、同アトレは2024年度上半期の売上高が目標を超える好業績で推移している。JR西日本のルクア大阪も24年度の全館売上高が1000億円台になる見通しだ。大手百貨店は小売り事業を縮小し、不動産活用や都市開発に重点を置くSC化を進める。パルコとしては若者層を捉えることが生き残りのカギになるが、それが順調に進むかは予断を許さない。
ただ、渋谷パルコに限って言えば、バランスシートの数値では測れない格と文化をもつ。それは新生渋谷パルコにも受け継がれており、売れているテナントやニーズがあるブランドを誘致する他の都市型SCの正攻法とは一線を画する。渋谷パルコは「このブランドが時代を切り拓く」と考えれば、アバンギャルド、マニアック、カルトなどのテイストに関わらずインキュベーションに全力をあげる。
また、好調の背景には注力する販促が奏功した面もあるようだが、それとシンクロしてニンテンドーやポケモンといった海外でも人気のキャラクターを扱うテナントが、多くの訪日外国人を集客していることもある。つまり、コンテンツにこだわり、売上げはあくまで結果という経営の自由度が渋谷パルコの格と文化を支えている。コロナ禍明けからの快進撃は、他の都市型SCにはない渋谷パルコの本質をまざまざと見せつけている。
老朽店舗は閉店、都内近郊や隣県の店舗は苦戦
一方、地方のパルコでは開業からかなり経年した店舗で閉店が続く。津田沼店は2023年2月末で営業を終え、46年の歴史に幕を閉じた。新所沢店も24年2月で閉店し、松本店も25年2月末で営業を終える。ともに41年という長きにわたり地元に愛されてきたが、店舗が老朽化していたことでブランドから出店を敬遠され競争力を欠いていた。静岡店は開業から17年と比較的新しいものの、近年は若者を十分に取り込めず苦戦続きで、24年11月に閉店した。
営業店舗でも、新型コロナウィルスの5類移行で人流が回復したにも関わらず、十分な売上げアップに結びつけられないところがある。Jフロントの2024年2月期業績説明資料によると、ひばりが丘店は同72億9100万円で、対前年比7.3%増。調布店は同188億5100万円で、同8.3%増。浦和店は同284億4000万円で、同10%増。3店とも前年よりは伸びてはいるが、札幌店(35.5%増)、仙台店(15%増)、福岡店(23.5%増)に比べると、明らかに見劣りする数値だ。
池袋店は2023年2月期の対前年比が28.7%増だったが、24年2月期は21.5%増と伸びは鈍化している。錦糸町店も同25.4%増から同19.7%増と、同じ傾向だ。売上高に対するインバウンド取扱シェアも渋谷店が32.1%と3割以上を占めるのに対し、池袋店はわずか6.4%と大きく水を開けられている。福岡はアジアからの訪日外国人が圧倒的に多いが、福岡店のインバウンド取扱高シェアは8%と意外に低い。やはり都内近郊や主要都市にパルコがあっても、訪日外国人を含め若者は「行くなら渋谷パルコ」派が圧倒的に多いという証左ではないか。
福岡店は2024年2月期の売上高は243億7100万円で、対前年比は23.5%増と、地方店では札幌(売上高135億2200万円、対前年比35.5%増)、仙台(同199億600万円、同15%増)、広島(同132億2500万円、同10.9%増)を引き離している。再開発プロジェクトの天神ビッグバンにより、競合店の天神コア、天神ビブレ、イムズが解体されたため、残存者利益を享受している面もある。ただ、福岡店とて本館が入居する旧岩田屋本館ビルは建設から90年近くを経過し老朽化が激しい。周囲の西鉄福岡駅ビル、新天町と一体で再開発が計画され、26年にも解体が始まるとの観測だ。工事が始まると、数年は休業しなければならない。
熊本店は23年4月、パルコ運営のHAB@(ハブアット)にリニューアルした。熊本では17年に都市型SCのココサ、19年にバスターミナル直結のサクラマチ熊本が開業。JR九州も熊本駅にアミュプラザ熊本の建設を進める中、パルコは19年2月28日、入居ビルの建て替えを理由に熊本店を20年2月末で閉館すると発表した。その後、HAB@は先行する3店に有力テナントを奪われてしまい、外食、サービスを主体とした3フロアへの縮小を余儀なくされた。そのため、パルコから出向する店長はおかず、社員が東京本社からリモートで店内をチェックするなど、定期出張だけに止めて運営コストを削減している。
都市型SCはテナントの歩率家賃で稼ぐのだから、デベロッパーの収益はテナントの数とその売上げに比例する。HAB@のようにテナント数が少なければ、運営のコストダウンを図らなければならない。それでも、パルコが地方店を次々と閉店しているのは、地域によっては規模を縮小しても採算が合わないとの経営判断ではないか。その意味で熊本のHAB@は例外だが、地方店を存続させる目的では試金石になる。
今後のパルコを見ると、大都市と地方で格差がつく可能性は高い。渋谷パルコは今後も新ブランド、新業態の孵化器として都市型SCの頂点に君臨していくだろう。都心部、主要都市の店舗も足元商圏が広いことから有力テナントさえ集められれば、集客力を発揮できると思われる。だが、地方店はそうはいかない。足元の人口減少が続いているし、ショッピングならネット通販で事足りる。単なるSCという位置付けならパルコより後に開業した店舗の方がテナントリーシングでも優位だ。
パルコ側が地域に即した対応をすると言っても、老朽化した店舗は再開発しなければならない。仮にオーナーなどがビルの建て替えを行なったにしても、従来のような地下1階、地上8階というフロア構成のままで再入居するのは難しいだろう。マーケットの実情、競合店の状況、テナントの意向などを鑑みながら判断せざるを得ないだろう。
ただ、SCに出店するテナントの中には、すでに顧客の加齢に合わせて店名(業態名)を変えたり、MDをエージアップして存続させているところもある。スイートテイストのヤング&ヤングアダルト業態が10年もたつと、顧客はミセスになっていくからそのミセス客を離さずにしっかり繋ぎ止めるテナントもある。デベロッパーとしては契約上の問題もあるだろうが、テナントに引き続き居てほしいのなら、柔軟な対応も必要になるのではないか。果たしてパルコがそれをできるかである。
さらにメーンの客層である若者がどう判断するか。渋谷にあって、自由でカオスな店作りで、見るだけで楽しい。だから、いつの間にかお金を使ってしまう。それが渋谷パルコだと思う。とすれば、他のパルコが単にテナントを集めただけなら、他のSCとの違いが見えなくなる。ましてネット空間には世界中のブランド、アイテム、そしてあらゆるコンテンツが溢れている。買いものし、サービスを享受するだけならそれで十分だ。今年は改めてSCにおける実店舗のあり方、SCそのものの自由度が問われるのかもしれない。地方では特に。
新生渋谷パルコは商業部分が地上9階(10階は一部)、地下1階。延床面積は約4万2000㎡。テナント数は192店で、2019年11月22日に開業した。令和の時代に相応しい次世代の都市型ショッピングセンター(SC)を標榜し、ファッションからアート&カルチャー、エンターテインメント、フード、テクノロジーまでの5つの要素をミックスして一つの館を作り上げた。中でも新たに加わったテクノロジーとは買い物のスタイルを進化させたもので、それらを活用する戦略は以下の3つを軸とした。
◯デジタル技術を活用したオムニチャンネル対応の売場「CUBE」
◯売場面積130坪に10坪程度の小型店11店舗を集積
◯品揃えは限定商品や戦略アイテムに限り、EC購入に軸足を置く
快進撃の背景には、CUBEで導入されたショールーミングやクリック&コレクト。ここにしかないブランドやわざわざ見に来てもらう品揃え。尖った商品を扱うショップを集積したがゆえに面を広げるために小ぶりにしたことがある。実店舗を集めたのは、渋谷パルコにしかないからわざわざ来てもらうのと、限定商品や戦略アイテムを揃えるがゆえに「現物」を見て、「商品」に触れてほしいということだ。
渋谷は国内外から多くのお客が訪れる。だが、遠隔地からの場合はそう何度も訪れることはできない。だから、パルコで見つけた商品が気に入った場合、再度訪れなくてもECで購入できるのはお客にとってのメリットだ。さらに限定や戦略がつく商品は、店で直に見てもらわなければ衝動買いを誘えないし、お客がこうした商品の現物を見てその時は購入しなくてもECで購入できるなら、その後に販売に結びつく可能性は格段に高くなる。こうした手法が渋谷を訪れる外国人にも響いているようで、渋谷パルコの2024年2月期の売上高に占めるインバウンド取扱高は32.1%で、パルコの中ではダントツだ。
元々、パルコは渋谷という立地で誕生し、先端ファッションの情報発信、斬新なテナントの孵化器という要素が相まって、若者に対する絶大なブランド力を発揮した。2000年代にはその威光に翳りが出た時期もあったが、大きく羽ばたきたいと願うファッションブランドや新業態は、テストケースを含め「出店するならまず渋谷パルコ」というスタンスは揺るがなかったと思う。新生パルコの1階で展開される海外ブランドは別としてCUBE以外の各ショップも、パルコに店を出すからこそバリュをあげられるという思いは強いはずだ。
もっとも、10数年前には若者マーケットの捕捉を目指すJフロントリテイリングとイオングループの間で、パルコ株の激しい争奪戦が繰り広げられた。結果は前者が2012年3月、株式の33.2%を取得して持分法適用子会社化し、8月にはTOBで株式を追加取得して連結子会社化。19年12月27日から20年2月17日にもTOBを行い、1株1850円で取得して完全子会社化した。パルコに8%を出資していたイオングループも、TOBには賛同している。
都市型SCのビジネスモデルは土地を確保して器を作り、開発コストはテナントに按分した保証金で賄い、情報を発信して広域から集客し歩率家賃で稼ぐもの。しかし、新規開発には時間を要し、開業しても順調に収益を上げられる保証はない。ならば、既存の企業を手っ取り早く買収すれば良い。Jフロントリテイリングもイオングループも考えたことは同じだ。
ただ、買収劇から十数年、パルコを取り巻く環境は激変した。JR東日本が運営する駅直結のルミネは24年3月期の全館売上高が過去最高を記録し、同アトレは2024年度上半期の売上高が目標を超える好業績で推移している。JR西日本のルクア大阪も24年度の全館売上高が1000億円台になる見通しだ。大手百貨店は小売り事業を縮小し、不動産活用や都市開発に重点を置くSC化を進める。パルコとしては若者層を捉えることが生き残りのカギになるが、それが順調に進むかは予断を許さない。
ただ、渋谷パルコに限って言えば、バランスシートの数値では測れない格と文化をもつ。それは新生渋谷パルコにも受け継がれており、売れているテナントやニーズがあるブランドを誘致する他の都市型SCの正攻法とは一線を画する。渋谷パルコは「このブランドが時代を切り拓く」と考えれば、アバンギャルド、マニアック、カルトなどのテイストに関わらずインキュベーションに全力をあげる。
また、好調の背景には注力する販促が奏功した面もあるようだが、それとシンクロしてニンテンドーやポケモンといった海外でも人気のキャラクターを扱うテナントが、多くの訪日外国人を集客していることもある。つまり、コンテンツにこだわり、売上げはあくまで結果という経営の自由度が渋谷パルコの格と文化を支えている。コロナ禍明けからの快進撃は、他の都市型SCにはない渋谷パルコの本質をまざまざと見せつけている。
老朽店舗は閉店、都内近郊や隣県の店舗は苦戦
一方、地方のパルコでは開業からかなり経年した店舗で閉店が続く。津田沼店は2023年2月末で営業を終え、46年の歴史に幕を閉じた。新所沢店も24年2月で閉店し、松本店も25年2月末で営業を終える。ともに41年という長きにわたり地元に愛されてきたが、店舗が老朽化していたことでブランドから出店を敬遠され競争力を欠いていた。静岡店は開業から17年と比較的新しいものの、近年は若者を十分に取り込めず苦戦続きで、24年11月に閉店した。
営業店舗でも、新型コロナウィルスの5類移行で人流が回復したにも関わらず、十分な売上げアップに結びつけられないところがある。Jフロントの2024年2月期業績説明資料によると、ひばりが丘店は同72億9100万円で、対前年比7.3%増。調布店は同188億5100万円で、同8.3%増。浦和店は同284億4000万円で、同10%増。3店とも前年よりは伸びてはいるが、札幌店(35.5%増)、仙台店(15%増)、福岡店(23.5%増)に比べると、明らかに見劣りする数値だ。
池袋店は2023年2月期の対前年比が28.7%増だったが、24年2月期は21.5%増と伸びは鈍化している。錦糸町店も同25.4%増から同19.7%増と、同じ傾向だ。売上高に対するインバウンド取扱シェアも渋谷店が32.1%と3割以上を占めるのに対し、池袋店はわずか6.4%と大きく水を開けられている。福岡はアジアからの訪日外国人が圧倒的に多いが、福岡店のインバウンド取扱高シェアは8%と意外に低い。やはり都内近郊や主要都市にパルコがあっても、訪日外国人を含め若者は「行くなら渋谷パルコ」派が圧倒的に多いという証左ではないか。
福岡店は2024年2月期の売上高は243億7100万円で、対前年比は23.5%増と、地方店では札幌(売上高135億2200万円、対前年比35.5%増)、仙台(同199億600万円、同15%増)、広島(同132億2500万円、同10.9%増)を引き離している。再開発プロジェクトの天神ビッグバンにより、競合店の天神コア、天神ビブレ、イムズが解体されたため、残存者利益を享受している面もある。ただ、福岡店とて本館が入居する旧岩田屋本館ビルは建設から90年近くを経過し老朽化が激しい。周囲の西鉄福岡駅ビル、新天町と一体で再開発が計画され、26年にも解体が始まるとの観測だ。工事が始まると、数年は休業しなければならない。
熊本店は23年4月、パルコ運営のHAB@(ハブアット)にリニューアルした。熊本では17年に都市型SCのココサ、19年にバスターミナル直結のサクラマチ熊本が開業。JR九州も熊本駅にアミュプラザ熊本の建設を進める中、パルコは19年2月28日、入居ビルの建て替えを理由に熊本店を20年2月末で閉館すると発表した。その後、HAB@は先行する3店に有力テナントを奪われてしまい、外食、サービスを主体とした3フロアへの縮小を余儀なくされた。そのため、パルコから出向する店長はおかず、社員が東京本社からリモートで店内をチェックするなど、定期出張だけに止めて運営コストを削減している。
都市型SCはテナントの歩率家賃で稼ぐのだから、デベロッパーの収益はテナントの数とその売上げに比例する。HAB@のようにテナント数が少なければ、運営のコストダウンを図らなければならない。それでも、パルコが地方店を次々と閉店しているのは、地域によっては規模を縮小しても採算が合わないとの経営判断ではないか。その意味で熊本のHAB@は例外だが、地方店を存続させる目的では試金石になる。
今後のパルコを見ると、大都市と地方で格差がつく可能性は高い。渋谷パルコは今後も新ブランド、新業態の孵化器として都市型SCの頂点に君臨していくだろう。都心部、主要都市の店舗も足元商圏が広いことから有力テナントさえ集められれば、集客力を発揮できると思われる。だが、地方店はそうはいかない。足元の人口減少が続いているし、ショッピングならネット通販で事足りる。単なるSCという位置付けならパルコより後に開業した店舗の方がテナントリーシングでも優位だ。
パルコ側が地域に即した対応をすると言っても、老朽化した店舗は再開発しなければならない。仮にオーナーなどがビルの建て替えを行なったにしても、従来のような地下1階、地上8階というフロア構成のままで再入居するのは難しいだろう。マーケットの実情、競合店の状況、テナントの意向などを鑑みながら判断せざるを得ないだろう。
ただ、SCに出店するテナントの中には、すでに顧客の加齢に合わせて店名(業態名)を変えたり、MDをエージアップして存続させているところもある。スイートテイストのヤング&ヤングアダルト業態が10年もたつと、顧客はミセスになっていくからそのミセス客を離さずにしっかり繋ぎ止めるテナントもある。デベロッパーとしては契約上の問題もあるだろうが、テナントに引き続き居てほしいのなら、柔軟な対応も必要になるのではないか。果たしてパルコがそれをできるかである。
さらにメーンの客層である若者がどう判断するか。渋谷にあって、自由でカオスな店作りで、見るだけで楽しい。だから、いつの間にかお金を使ってしまう。それが渋谷パルコだと思う。とすれば、他のパルコが単にテナントを集めただけなら、他のSCとの違いが見えなくなる。ましてネット空間には世界中のブランド、アイテム、そしてあらゆるコンテンツが溢れている。買いものし、サービスを享受するだけならそれで十分だ。今年は改めてSCにおける実店舗のあり方、SCそのものの自由度が問われるのかもしれない。地方では特に。