すずりんの日記

動物好き&読書好き集まれ~!

ねねはママ?

2005年02月10日 | 
以前、ちぃがうちに来た時の話を載せましたが、書き忘れてたことがありました。みんなが、厩舎の子猫(ちぃ)を発見して、口々にこう言うんです。
「ねねの子がいますよ。」
は?「ねねの子」って、どういうこと?
「ねねが牝猫に産ませたんですよ。毛色がそっくりだもん。」
そんなはずあるわけないじゃん!だって去勢してるんだよ。
「いやぁ、去勢してても、ねねならやりかねない。」

・・・というふうなやりとりがあったんです。
まあでもそれは、みんなが私のとこにちぃを持って来る口実だったんでしょうが、当の本人(ちぃ)は、ほんとにねねを親だと思っているみたいなんです。
経緯はわからないけど、ちぃは、発見時、まるっきり一人ぼっちでした。違う場所で産まれて、ちぃだけここに来たのか、それとも、ここの野良が産んで、兄弟はみんな死んでしまったのか。親らしき猫も近くにいなかったらしいです。
そのせいか、うちに来た時から、他の4匹にとにかく付いてまわって甘えてました。特に懐いてるのが、ねね。ねねをママだと思ってるのか、体の毛を、チューチュー吸うんです。他の4匹には、じゃれたり甘えて体をすりすりしたりするけど、チューチューはしません。
やっぱり、猫も毛色とかで、私と似てるわ~とかって親近感沸くんでしょうかね~
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小説「幼稚な殺人」⑦

2005年02月10日 | 小説「幼稚な殺人」
先輩は、2階建ての小さなアパートに住んでいる。1階、2階とも4戸ずつ入居できるようになっていて、先輩の部屋は、2階手前の角部屋だ。他のどの窓も、明るい日の光を中に取り込んでいたが、先輩の部屋の窓は、2ヶ所とも、まだカーテンが閉じられたままだった。
 先に階段を登って行く園田さんのゆっくりとした足音を聞きながら、僕は階下に1人残り、先輩の部屋の真下に当たる管理人室のドアを叩いた。僕は、自分の身分を名乗り、先輩の部屋の鍵を受け取って、上へ向かった。

 「管理人さん、何か言ってたか?」
玄関で無造作に靴を脱いだ園田さんの背中越しに、僕は返事をした。
「帰って来た姿は見ていないそうです。物音も、特にしなかった。だけど、普段家に居る時もそんな様子で、あの日だけ特別なことは無かった、って。」
「カーテンも閉まったままだし、電気も点いてる。あの日もこんな感じだったら、あいつはここに居たように思えるんだがなぁ。」
園田さんは、がらんとした8畳間の真ん中に立ち、蛍光灯の電気を消した。
「あいつ、あやちゃんのものを全部処分したんだなぁ。」
隣の、何も置いていない4畳半の和室を覘いて、園田さんは、寂しそうに呟いた。
「車はあったか?」
「裏の駐車場に止めてありました。」
「そうか・・・、車はあるのに、タクシーを使ったか。」
洋服箪笥と木目調の机と椅子に、僕の背よりもはるかに高い本棚(車の月刊誌、青少年の犯罪関係の本、釣りの本などがびっしり詰まっている!)だけの、何の生活臭の無い部屋を出て、帰る前に先輩の車を点検したが、エンジンもちゃんとかかるし、何かにぶつかったようなへこみや傷も無い。少し駐車場の中を走らせてみたが、車体はいたってスムーズに動き出し、そして、今まで居た場所にすんなりと止まった。念のため、近くの修理工場をいくつか回ってみたが、先輩の車が持ち込まれた形跡は無かった。


 「園田さん、僕ちょっと気になることがあるんです。」
僕は署に戻る車の中で、心の中に引っかかっていた事をゆっくりと吐き出した。若林先輩の、取調べから来る疲労感とは別ものの、あの無気力な顔、生き甲斐を失ったような、何かが燃え尽きてしまったような・・・。
「・・・あんな先輩の顔、初めて見ました。」
「おれは、・・・ずーっと昔、一度、見たことがある。・・・もう、20年も前になるかなぁ。昇進したばっかりの孝志が、ちょうどあんなんだった頃があったっけなぁ。」
「・・・孝志?誰です、それ?」
「古岸だよ。」
「古岸?古岸・・・、えっ!?課長ですか!?」
課長が新人として署に配属された時、教育係としてコンビを組んでいたのが、園田さんだったらしい。それから、20数年来の付き合いだそうだ。
「あいつが最初の昇進試験で一発合格したのを祝って、2人で飲みに行った時、あいつ、“ソノさん、おれだってもう1人前の刑事なんだから、もうみんなの前で、孝志!孝志!って呼ぶの、止めてくださいよ”なんて、生意気なこと言いやがってなぁ。」
独り言のように、穏やかに、目を閉じながら呟いていた園田さんは、まるで眠りに就くかのようだった。
「あいつ、前の年に、奈津美ちゃんっていう、かわいい娘と結婚したばっかりで、・・・人懐っこい娘でなぁ。孝志と同期の婦人警官で、人前でかっこつけたがる孝志を、いつも、ニコニコ笑って見てた・・・。」
園田さんは、長い溜め息をついた。
「初めての結婚記念日に、あいつの家の近くの銀行に、強盗が入ってな。犯人が、裏口に止めてた現金輸送車に就いていた警備の2人を撃ち殺して現金を運んでいる最中に、奈津美ちゃん、そこに居合わせちまって。犯人の顔見ちゃって、殺されてしまった。
 2人の犯人は、そのまま逃走して、見つかったのは、5年も過ぎてからだった。孝志は、その5年間、死に物狂いで捜査をした。強盗犯人を捕まえるため、でなく、最愛の妻を殺したクズに、復讐するためだ。
 奈津美ちゃんが死んでからのあいつは、人が変わったみたいで、おれはもう、気軽に、孝志、なんて呼べなかった。・・・必死、なんてもんじゃない。悲愴な感じがしたよ。5年間、1日も気の休まることは無かったろうな。・・・でもな、おい、長井、聞いてるか。本当に孝志が変わっちまったのは、そっからだったんだ。」
 僕はずっと、話の腰を折るまいとして、相づちを打たないように気をつけていたが、いつの間にか、相づちを打つのを忘れてしまっていた。
 「あいつの、5年にも及ぶ執念が実って、犯人は2人とも見つかった。しかし、あいつは、復讐を遂げることができなかった。3人の人間を殺した罪悪感に押し潰された1人が自首しようとするのを、もう1人が撃ち殺した後、自殺したんだ。
 あいつは、・・・5年間、確かにかわいそうだった。でも、その5年間は、あいつにとっては、すごく充実してたと思う。奈津美ちゃんを殺した犯人を捜し出すことが生き甲斐だったからな。あいつの生きてる証は、もう、それしか無かった。でも、それさえも無くしてしまった。あいつは、生きる屍になっちまった。・・・ちょうど、今の若林みたいだったよ。」
右折して、署が遠くに見え始めると、園田さんは、目を開けて大きく伸びをした。
「あいつは、奈津美ちゃんが死んだ時、自殺しかねなかったのを、復讐のおかげで、5年間、命を延ばした。そして、その5年間の活力となったものを見失ってから、ようやくこの仕事が次の生き甲斐になるまでには、その倍以上かかったよ。」
「園田さん、課長がもし、犯人を逮捕して、課長の復讐心が少しでも癒されていたとしたら、課長はもっと早く普通の生活に戻れていたでしょうか?」
「例えあいつが、その2人の犯人を自分の手で殺してたとしても、その後は同じように、“自分がこれから何をするために生きればいいのか”、わからなくなってたろうな。
 でも、人間は、その復讐心が燃え尽きる時が来なきゃ、復讐を忘れて、それからの人生を生きていくことはできないんだ。」


(つづく)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする