高麗橋桜花店主 徒然日記ー料理人はどこまでできるのか ー

「高麗橋桜花」店主森田龍彦の思ったことを綴る日記のようなものですので個人的感想にとどまるということご了承下さいね。

上野修三先生のお料理

2005-10-25 | 料理日記

 この日のために上野先生は食事とお酒を用意してくださいました。
 只でも上野先生とお話させていただくだけでも嬉しいのに、料理までいただけるなんて本当に料理人冥利に尽きます。
 お献立
  ◇戻りかつおの山掛けと蛸ぶつ
    良いかつおが手に入ったからと割鮮にしていただきました。長芋ではなく、山の芋を擦っているため粘りが強く、味も濃厚です。また、山葵も本山葵をしようしているので香りの高く、鼻にくる辛味も気持ちよくスッと抜けていきます。このかつおの山掛けを焼きのりで巻いて食べるとまた違った美味しさです。烏賊や海胆などはよくしますが、まさかかつおとこんなにも相性が良いとは思いませんでした。 特に秀逸なのが、造り醤油です。 以前、先生の勉強会で「造り醤油は火を入れずに寝かします」と教えて頂いたことがありました。造り醤油は酒やたまり醤油などを加えるためどうしても濃厚になるのですが、とても後味がすっきりしていてすごく魚の味を引き立てます。また、ひとつ目標と課題を与えてもらいました。
  ◇柿と紅白膾の白酢和え
    蕪、人参、胡瓜の膾を白酢で和えていました。ここでもひとつ大きな勉強が。晩秋になるとよく柿を膾に加えるのですが、そのときは比較的若くて硬いものを混ぜます。ところが、上野先生はこの柿を土佐酢を薄めたものに漬けることにより、他の食材と同化させているのです。しかも、柿の甘味はほどほどの抑えられ風味や食感はとても良い。和え物ひとつでここまで違うのかと感嘆させられました。
  
  ◇豆腐の味噌漬け
木綿豆腐をしっかり水切りした後、味噌床にガーゼで包んで(酒で1度洗います)10日ほど漬けます。水が出ているようだったら味噌を加えて更に寝かせます。
    食感がねっとりして、まるでチーズのような感じです。とても美味で、酒肴には最高です。
  
  ◇蓮根の焼き物
    蓮根でチーズ、卵黄などを混ぜたものを挟み、焼き上げたもの。
  
  ◇東浦さんのトマト 寒天塩で
    能勢の東浦さんの畑のトマトはとても肉厚です。寒天塩は普通の塩より味が少し丸い感じがしました。寒天は高槻の名産品ですし、どちらも大阪産の食材です。
  
  ◇海老芋と穴子、水菜の焚き物
    海老芋は大阪のものではなく、山城産のものでした。ある方が先生に1度味を見てほしいと持ってこられたそうです。かなりの大きさだそうで、特有の粘りはなく、ポクポクした感じの食感でした。これも薄味なのだけれど、しっかり風味は口の中で広がるんですようね、悔しいくらいに。
   
  ◇おかみさん特製ちりめんじゃこ
    上野先生が「わしよりうまく炊きます」とおっしゃられるだけあり、ほんとに美味しく炊けてます。調味料がからからになるまで炊いているそうですが、色も濃くなくて山椒の実もしっかり効いてます。

   ◇栗御飯と漬物
     これは以前にもこのブログでも紹介しました。以前に教えていただいているので、しっかり身に付けました。昆布出汁の塩加減ともち米を加えることがポイントですね。

  上野先生の手料理を頂きながら、料理の事にも話が及びました。
  先生はご自身で「包丁はそんなに上手くはないけど、料理のことわりみたいなのは知っているつもり。だから、今までやってこられた。」とおっしゃってました。
  その他ににも、素材にどこまで手を加えるかが思案のしどころ。
  料理人をはじめ、多くの人が意見交換できる場を作りたいともおっしゃっていました。

  話の流れで、私が料理監修をしたささゆりの里の献立を見て頂くことになり、なかなかの出来だと褒めて頂きました。
これはほんとうに嬉しかったです。

 上野先生はとてももてなし上手で、とてもお話が面白くて博学。料理の腕はもちろんだけれでども、上野先生の人柄こそが多くのお客様を喜ばせ、ここまで慕われるようになったのではないかと思いました。いくらでも話を続けたかったのですが、さすがにお暇する時間になりました。上野先生もおかみさんもわざわざ路地まで見送りに出てくださいました。
 帰り道に上野先生が私の肩をぽんとたたかれて、「がんばってや」はとてもありがたいひと言をかけてくださいました。
 今の自分の取り組みが間違ってないのかな、と幸先不安ながらも少し自信がもてました。
 自分の目標を持つことが出来、それを応援してくれる人がいる私は本当に幸せ者だとしみじみ思うひとときでした。

 
    

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