緑と赤と金色のクリスマスデコで華やぐ町。十二月も半ばを過ぎるとサンタとトナカイのコスチュームも目立ち始めた。
今日も会社帰りにゲームソフト屋をはしごしている。子供が欲しがっていた人気ソフトを手に入れるためだ。動き出したのが遅かったのか、どこの店でも売り切れだった。次第に通勤コースから外れて、今日は会社の事務所から自宅と反対方向の店まで足を伸ばしていた。
世の中の親は、みんな、こんなに苦労しているのだろうか。要領が良い親は、発売日前から予約していたに違いない。
妻の言葉が頭をよぎる。
「少しは子供のことも気にかけてください」
仕事が忙しいと言っていたのは本当だ。しかし、その穴埋めをクリスマスに、子供が一番欲しがっているものをプレゼントすることで補おうと考えていたのが甘かったのだ。
子供の頃のことを思い出す。クリスマスの朝に枕元に置いてあったピット星人の人形だ。クリスマスプレゼントに仮面ライダーの人形をねだったのだが、それが悪役のピット星人。子供心にショックだったが、丸い頭に丸い目に硬質な顔面と共通点は確かにある。大人の観察力はそんなものだと笑い話にしていたものだ。
今、思い返すと、親父は仮面ライダーの人形を探し回ったのではないだろうか。人気の仮面ライダーはすべて売り切れ。替わりにやむを得ず一番似ている怪獣の人形を買ったのではないか。
そんな気がした。
ここのオモチャ屋でも売り切れだった。
角に小さな中古ソフト屋の看板を見つけた。新製品なので中古はないだろうと思ったがだめ元で入ってみた。
店員は細い目をさらに細くして、「今、入ったばかりですよ。運が良いですね」と言って、両手でソフトを差し出した。
値段は定価より高いが、これ以上、探しても見つかりそうにない。
代金を払って、外へ出て星空を見上げる。
いつか、ラジオで聞いた「プレゼントとは、その品物の価値より、それにかけた時間……その人のことを思った時間の方に意味があるのです」という言葉を思い出していた。
何時間、かけたかな。
俺にしてみれば上出来のプレゼントじゃないか。
家に着くと子供は大いに喜び、飛び上がりながらはしゃいだ。
そして、「お父さん、いつもありがとう。ママといっしょに選んだプレゼント」と、子供が包みを差し出してくれた。
「おおっ、これは良い財布だな。どこで探したんだ?」
「ママといっしょにアマゾンで選んだの。一番人気のプレゼントなんだって」
ま、それでも、とてもうれしいんだけどね。