吉村昭の動物小説短編集。
珠玉の4つの短編が載っていますが、冒頭の「海の鼠」は、約半分のページを使った中編に近いものです。
「海の鼠」
瀬戸内海の島に突如沸いた鼠の大群の駆除に苦労する人たちの話です。
解決できない問題が埋もれていく怖さ。
今の日本にも、ところどころに潜んでいる問題点を静かに示唆した作品です。
「蝸牛」
農家で密かに飼育されている新種の食用蝸牛。
農業への危険が無いか調査を行う農林省。
危険は無く、美味な蝸牛は、その美しさとおいしさがなんとなく不気味な雰囲気につつまれていました。
サイレントホラー。
「鵜」
鵜飼いの鵜は、海にいる鵜だということを初めて知りました。
こういうゆがめられた人と動物の関わりを書くのはうまいですね。
「魚影の群れ」
映画化もされたようですが、男の寂しさと孤独を書いた作品です。
吉村昭は、男の姿を書くのがやっぱりうまいです。
戦いに勝って、廃墟に立ちつくす感じのラストがむなしさ無限大。