フランスの裁判官であるフェルマーは、罪人を火あぶりにしたり、無罪放免にしたりしていたのですが、暇を見つけては、古代ギリシアの『算術』に読みふけり、そこから得た着想を余白に書き残しておく趣味を持っていました。余白への書き込みであり、どこへ発表しようと言うのではないため、それらの定理・予想の証明は、省略して書かれているのです。
フェルマーの死後、それらをまとめて長男が本にしたことで、その後、3世紀以上、数学者を悩ます難問が生まれてしまったのです。
フェルマーが残した定理や、予想は、多くの数学者の並々ならぬ努力で一つずつ証明されて行き、最後に残った定理が、フェルマーの最終定理と呼ばれるものでした。
フェルマーが証明済みとした定理でしたが、その証明自体が不明だったのです。
それを証明するため、数学者たちの3世紀を超える戦いが始まったのでした。
ピタゴラスの定理(三平方の定理)を思い出してください。
「直角三角形において、各辺の長さをX、Y、Z(長辺)とすると、
Xの2乗+Yの2乗=Zの2乗が成り立つ」
この定理は、義務教育を受けていれば簡単に証明できるものでした。
フェルマーの最終定理とは、
「Xのn乗+Yのn乗=Zのn乗は、nが2より大きい場合、整数解は存在しない」
この一見、単純な定理を証明しようとした数学者は、その一生を棒に振るほどの難問で、実に3世紀以上のときを費やしたのです。
その過程をドラマチックに追ったのが本書となります。
わたしは理系人間ですが、数学にそれほど興味がなく、ほとんど覚えていませんが、ついていけたので、文系の人でも大丈夫だと思います。
最後のカギを用意したのが、日本人の数学者で、それが「谷山-志村予想」と言い、すべての楕円方程式は、モジュラーと対応するという、まったく違う分野を統合する画期的な予測であり、それが証明されるとフェルマーの最終定理が証明されることになります。日本の読者としては、テンションが上がる場面です。
高校時代に、休み時間も楽しそうに数学の難問を解いていた同級生が居て、不思議に思いましたが、これを読んでその謎が解けました。
こんな楽しそうなことをしていたのか! と。