無料HPの先駆けであるヤフーのジオシティーズ終了に伴い、マイホームページをニフティに統合しました。
ついでなので、20年間、更新がなかったショートストーリーのページを更新しました。
内容は、投稿作品と、ブログ作品をプラスしたものです。
冬になると、外へ出かける機会が減るのか、創作意欲が湧いてきます。
某文学賞から、優秀賞受賞者懇親会のお知らせが届きました。
受賞者には、脚本家やイラストレターなどクリエイティブなお仕事をしている人たちも多いので、参加すると面白そうだなぁと思うのですが、田舎住まいの身にとっては敷居が高いと思っています。
この類のイベントは東京でやることが定番ですからね。
案の定、東京都渋谷区です。
お知らせの最期に、次の一文がありました。
「○○事務局のオフィスが東京にあるという事情で、東京での開催の運びとなりました。関東在住以外の方にとって参加が難しい環境となってしまい大変申し訳ございません。」
東京でやるのが当たり前、参加したいなら来ればいいという態度が、発信者、受け手双方にあった時代は終わったかなと思いました。
確かに、今でもこの種のイベントは東京中心ですが、それでも、それが当たり前という風潮は変わりつつあります。
地方の人間が東京へ出て行く時代から、その逆である東京の人間が地方へ来る時代へと徐々に移行しつつあるのでしょうか。
通信機器、流通システムの発達により、地方でも不便が少なくなってきています。
田舎に住む者にとって、チャンスの芽が大きく膨らんできている予感がします。
クリスマスまで1日1話ショートストーリーを書いて盛り上がろうという企画ですが、あるブログのパクリです。
何の準備もなしに衝動的に始めてしまいました。
ここ1年くらい、ネトゲ(艦これ)にはまっていて創作らしい創作から離れていたのでこのチャンスにリハビリを兼ねて書こうと思ったのです。
もう一つは、クリスマスのショートストーリーは、O・ヘンリーの「賢者の送りもの」をはじめ、「マッチ売りの少女」「クリスマスキャロル」など名作がひしめいているので、腰が引けて今まであまり書いていなかったこともあり、この機会に挑戦してみたくなりました。
その瞬間に書き始めれば、5本の掌編ができあがるはずです。
1日1本というペースは無謀であることは、これまでの経験上、よく分かっていましたが、「まあ、多少変な話になってもいいか」という年の甲的脱力を用いてなんとか乗り切りました。
とはいえ、人様に読んでいただくものですので、時間を損したなどと思われるようなレベルではいけません。
ちゃんと、小説としてストーリーがあるものでないといけない。
ただのスケッチで終わらないようにというこだわりはありました。
お陰様で、1本毎にアクセス数が伸びたので、それなりに楽しんでいただけたかなと思います。
お気に入りの1本があったら、ほんとうにうれしいです。
ありがとうございました。
作品リスト
「サンタのノック」
幼い頃からサンタを信じていない男の心の扉をノックしたのは……
「マッチ」
コンビニにはマッチがおいてあるのです。コンビニ店員のクリスマスイヴ。
東京のホワイトクリスマスは観測史上皆無なのです。
プレゼントはその人を思った時間。
「海に浮かぶツリー」
日本海に浮かぶ石油プラットホームの秘密。
新潟県胎内市から四キロメートル沖に浮かぶ光のタワーは、岩船沖油ガス田のプラットホームだ。夜に海岸に沿って走る国道三四五号線から見るとさながら巨大なクリスマスツリーのように見える。海面からの反射も相まってまばゆいくらいに輝いるのだ。
まだ、幼い頃のおぼろげな記憶にあるのは、親父が運転する車の中で驚いた僕に親父が言った言葉だ。
「あれはサンタクロースの基地だ。クリスマスイヴには、あそこでソリに給油してアジア中の恵まれない子供たちにプレゼントを届けるんだ」といい加減な話を聞かされたのだ。
そう言われても、信じてしまえるような風格がその光の塔ににはあった。
今日、会社の命令で、その光の塔へ向かうことになった。通常は八人体制で泊まり込みいで行っているらしいが、クリスマスイヴは、人手が足りなくなるのだそうだ。
新入社員の僕は、作業体験も兼ねて抜擢されたこということだろう。
へりに乗り込んで、日本海に浮かぶプラットホームに到着した。
僕はその大きさに驚いた。海面からの高さが約九十メートルの塔が立ち、大型のヘリポートは、貨物船を何隻か並べられるくらいの大きさだ。強風でフードがはずれないように手で押さえながら、上司が指さした方向を見る。
西の水平線に日が沈みかけていた。
「いいか、クリスマスは二十四日の日没から始まり二十五日の日没に終わる。今夜が正念場だ。気合いを入れてかかれ」
クリスマスには、石油や天然ガスのエネルギー消費が増えるとでも言うのだろうか?
周りにいる先輩たちも水平線の方向を凝視しているのに気がついた。
冷たい風がほおをなで、オレンジ色の光と紫色の雲で彩られていく。
太陽が沈む瞬間、大きな声に包まれた。
「メリークリスマス!」「メリークリスマス!」「メリークリスマス!」
皆、お互いにクリスマスの始まりを喜んでいる。宴会でも始まるのだろうか。
水平線の方向からかすかな鈴の音が、聞こえてきた。やがて、その鈴の音が大きくなりトラックがヘリポートに降りてくる。
「もたもたするな、すぐに給油だ」先輩たちの怒鳴り声が響く。
何でトラックが空を飛んでくるんだ。そんなことを考えている暇はない。直径十センチはあるホースをトラックにつなぎ給油を開始する。
トラックの窓からのぞく顔は、白いひげに赤い帽子のサンタクロースだ。
給油が終わると、すぐにトラックは飛び立ち、次のトラックが降りてきた。
給油を待つトラックの影が基地の上空を何台か旋回しているのが見えた。
なんてこった。サンタクロースの極東基地ってのはほんとうだったのだ。
「おい、おまえ、トオルじゃないか」
トラックの運転席から声をかけられ、見上げた窓には半分白いひげをはずした親父の笑顔があった。
「お前、こんなとこで働いていたのか」
おいおい、それはこっちのセリフだ。母さんには、親父は運送業で世界中を飛び回っているって聞いてたぞ。
「親父がサンタクロースって! トナカイは?」(かなり僕は混乱しているようだ)
「ん、トナカイ? 今、馬車に乗っているヤツいるか? みんなトラックだ」
「ここって、基地だったの?」
「見ての通りだ。このことは内緒だぞ」
「そんなこと言ったって……」
「これは国際秘密だ。自分の子供以外にはしゃべってはいけないことになっている」
給油が終わり、親父は窓ガラス越しに手を振りながら星空に舞い上がっていった。
ほら、メリークリスマス!