むぎわら日記

日記兼用ブログです。
野山や街かどで見つけたもの、読書記録、模型のことなどを載せております。

『芸術的創造は脳のどこから産まれるか?』大黒達也 (光文社新書)

2024年09月28日 | 読書
ついに、ここまできたか、脳科学とAI(人工知能)と言った内容です。
人工知能に人間のような創造性を持たせるため、脳の機能を解析していき、体系化する研究が進められています。
記憶の組み合わせから、新しいアイデアが生まれてくるらしい。
その記憶には、潜在記憶と顕在記憶があり、その記憶の仕方は、パソコンファイルのような圧縮にあるのです。
記憶の圧縮とは、統計的に予測可能な記憶を一つのパターンとして記憶してしまうことを言います。例えば「ドレミドレミドレ〇」と音階が来たとして、〇に入ると予測されるのは「ミ」であり、「ドレミ」が一つの潜在記憶となります。
ここで「ドレミドレミドレソファミレ」となれば、ここで脳は緊張し、新しい記憶を作り出していきます。
その深度が深くなればなるほど、高次の潜在記憶となり、それが組み合わせられると、高度なピアニストのテクニックにつながっていくと言うのです。
この予測可能な記憶と、予測困難な現象の間が、創造性が生まれるところとなります。
創造性は、多くの高次の潜在記憶と、顕在記憶が揺らぎを示したときに発揮されるというのです。
面白い理論ではありますが、唯一無二の創造性は、作家の生い立ちからそれまでの多くの経験からなった記憶が元になっていますので、いくらコンピューターの記憶が人間の何億倍もあろうとも、再現できるのか疑問ではあります。
しかしながら、ありきたりな個性(矛盾した言葉ですが)や、創造性程度なら簡単に模倣される時代が来ています。

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『滔々と紅』志坂圭(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

2024年09月24日 | 読書
本のサナギ賞受賞作。
天保の大飢饉で、全滅寸前の村から、女衒(ぜげん)に買われ、吉原に連れてこられた9歳の少女が、遊郭で生き残り、花魁まで出世します。
しかし、いくら出世しても借金が増えるばかりのシステムが遊郭にはあるのです。
そこで生きている限り、最期は病魔に侵されるか、火事で焼け死ぬか、年老いて無一文同然で遊郭を出ていくか、悲惨な末路を辿ることになるのです。
大金を積んで見受けされるか、足抜け(脱走で重罪)するかの道しかないのでした。
主人公の駒乃が、じゃじゃ馬気質であることと、周りのドタバタ劇やユーモアのある演出、また、遊郭の厳格なルールの裏側などをコミカルの描いているので、テンポよく読めました。
江戸時代末期の今と比べると粗末な生活の中で、生きることに命を燃やすエネルギーを感じられる小説となっています。

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『輪廻の蛇』ロバート・A・ハインライン(グーテンベルク21)

2024年09月20日 | 読書
『夏への扉』や『宇宙の戦士』で有名なSFの巨匠ハインラインの短篇集です。
アメリカ文化が色濃く出ていて、O・ヘンリーをSF風、ファンタジー風にした雰囲気でした。

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『筒井順慶の悩める六月』中南元伸(文芸社)

2024年09月16日 | 読書
筒井順慶は、本能寺の変~山崎合戦における脇役というか補欠となってしまい、今一輝きが鈍い武将です。
織田信長を討った明智光秀と深いつながりがあり、信長の家臣でもある立場であるため、明智に味方をするか、信長の仇を打つか非常に悩めるところです。
せめて、謀反の前に相談してくれていれば……
と、慌てて悩む順慶をよそに、家臣は明智に味方せよという者も多く、迷いに迷います。
その姿を、関西弁の商人口調でしゃべる登場人物たちが、コミカルに描かれていました。
関ケ原の戦いで名を馳せる島左近も順慶の側近として活躍するので、有名どころが好きな人は、それも楽しめる要素になっています。
また、「元の木阿弥(もとのもくあみ)」の語源となった木阿弥も登場して笑わせてくれます。
戦国の世でも、戦をしないで生き残ることは、尊いことだと思いました。

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『どうせ死ぬんだから』和田秀樹

2024年09月14日 | 読書
老齢者医療の最前線で働いていた医師である著者(62、3歳くらい)が考えた老後の生き方です。
死に方は自分で決めた方が良い。延命治療が自宅療養か看取り施設か、その他いろいろです。
ある程度、しっかりしているうちに決めておかないとこんなはずじゃなかった最後が待っています。
よく医者が言っていますが、ガンの治療も善しあしで、副作用に苦しみながら延命するより、副作用無しで生きるだけ生きて、最後に短い間苦しんで死ぬ方が良いかもしれないということもあります。
数値にこだわり過ぎず、自分の基準を見つけて、その範囲で好きに生きた方が幸せと言うことです。

この何でも自分で決めるということが普通の人にはしんどいのですが、それができないとそれなりの状況の死が待っているということです。

死を恐れすぎず、今、やりたいことをして生きられるとベストなのでしょうが、それができない生き方もまた乙だと思うのです。
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『優しい日本人が気づかない残酷な世界の本音』(ワニブックス)

2024年09月11日 | 読書
 - 移民・難民で苦しむ欧州から、宇露戦争、ハマス奇襲まで - 
川口マーン恵美×福井義高の対談集となっていました。
ドイツ生活が長い川口マーン恵美と、リアリストの大学教授福井儀高が、ほんとうの欧州・中東、世界の本音を語ります。
マスコミで報道されている表側のトレンドにまったく臆することなく、反対から見た世界を知ることができました。いつも見ている世界地図を上下(南北)を逆にして見たり、北極海を中心に見たりすると、全然違う印象になるように、違った場所から世界を見ると見え方が違います。
移民を受け入れると、ほとんどの国民が損をする。
ポーランドはヨーロッパでは大国でドイツ・ウクライナとは仲が悪い。
イギリスはヨーロッパではなく、アメリカやロシアと同じ立ち位置。
ハマスを育てたのはイスラエル。
アメリカ・ロシアは食料・エネルギーを自給できる大国だが、中国はレアメタルくらいしか自給できない小国。
ドイツで猛威を振るう環境NGO。
など。
違った方向からの見方を知っておくと、より世界情勢を理解しやすくなると思います。

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『裁判官の爆笑お言葉集』長嶺 超輝 (幻冬舎新書)

2024年09月07日 | 読書
ネタは良いのだが、料理がまずく笑えませんでした。
著者は、エンタメとしての笑いを理解していないようです。
裁判中の緊迫した場面で、このような言葉を裁判官が述べれば、緊張が緩和され笑いが起こるでしょう。
緊張と緩和が笑いの原点です。
しかし、この本では、最初に唐突に裁判官の言葉(つまりオチ)が記されていて、そのあとにどんな事件の裁判か解説がある編集になっていました。
これでは、オチを最初に聞かされて、なんのオチか後で解説されることになります。
読者は、なるほど、そういう背景があったからこの言葉が面白いと思えたのですね。と納得させられる構図です。
どうして面白くないか納得させられるくらい面白くない本としては特筆すべきです。

作者さん、ユーモアのセンスがないけど真面目な人なんだね。

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『日御子』帚木蓬生(講談社文庫)

2024年09月04日 | 読書
日本の古代ロマン。
邪馬台国の存在はもとより、場所までも諸説あり、日本のどこかではあるものの定説はないようです。
この物語は、弥摩大国(邪馬台国)の日御子(卑弥呼)とすることにより、小説として思い切ったアプローチをすることでリアリティの高い世界観になっています。
九州の一部を邪馬台国、他の国々は、現在の市町村程度の小国であり、それをまとめて倭国としています。実際の地図にそれらをちりばめることにより韓、漢、魏、晋などとの交流もその場にいたように感じられました。
(こう、これ、定説で良いよ~くらいの世界観です)
主人公は、あずみという使譯 (通訳)の家の何代にも渡る人々になります。数々の小国に使えながら、漢、魏、晋などの中国との交流を描いていきます。
邪馬台国の記録は三国志の魏志倭人伝のみなので、作者の大胆な創作技術に恐れ入りました。

あずみの家に代々伝わる3つの教え 「人を裏切らず、人を恨まず、戦いを挑まない。良い習慣は才能を越える」が生きる世界であれば、理想となるのでしょうが、その後の世界はそれを実現できていないようです。 

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『前頭葉バカ社会』和田秀樹(アチーブメント出版)

2024年08月29日 | 読書
他の動物の脳と人間のそれの大きな違いは前頭葉の発達の具合です。言うまでもなく、人間の前頭葉は、他の動物に比べ大きく発達しています。
しかし、人間は、前頭葉を使わなくても社会的生活を普通にやっていけるのです。
前頭葉は、変化に対応できるように発達しているため、環境などが大きく変化したとき活発に働き危機を乗り越えるための働きをします。
つまり、現状維持、日々の変わらない生活の繰り返し、思考停止に陥っていると、知らず知らずのうちに「前頭葉バカ」になってしまいます。
このように前頭葉を使わない暮らしをつづけている人が日本人には9割いると言うのです。
前頭葉を使っている人でも、油断をすると前頭葉を使わない生活に入ってしまいますし、危機感があれば前頭葉バカも治ってしまうこともあります。
それだけ、日本は平和で治安もよいことになりますが、作者は、自分がバカになることが怖いと言います。
「前頭葉バカ」に陥らないように、思考停止状態を避けるため、変化を欲し、挑戦をし続けたいと言います。とは言え、油断をするとすぐに「前頭葉バカ」になってしまうのです。
誰でも「前頭葉バカ」の状態になる時間があり、その時間を少なくしていくことは、意識をして前頭葉を使っていく、また、前頭葉を使わなくなったことに気が付くことが大切だとしています。

変化を恐れず、挑戦をし続けるには、というテーマの本はたくさん出ていますが、この本は前頭葉の働きから、そこにアプローチしています。
しっくり来る方は一読を。

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『地図にない町』フィリップ・K・ディック(グーテンベルク21)

2024年08月26日 | 読書
ブラッドベリ風のSFファンタジー短篇集。
おかしな機械を発明したり、超能力者たちが全面戦争を止めようとがんばったり、パラレルワールドが混じることになり、都市計画が廃止されて作られなかった町が侵食してきたり、1950年代の未来に対する期待と不安、そしてノスタルジーが混じり合う、今となっては古典のようなSFです。
米ソ冷戦時代の話は、子供のころ、よく触れていたので、読んでいるだけで、昔の感覚を思い出してきます。
夏休みにピッタリ。

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