イギリスの女性旅行家である著者が明治初期に日本を訪れ、単独で西洋人未踏の地である日本の奥地へ足を踏み入れます。
横浜→江戸→日光→南会津→会津坂下→津川→新潟→米沢→山形→秋田→青森→函館→室蘭→紋別の北日本の旅が前半3/4を占めており、これが圧巻でした。
特に峠越えをする地域の風土や、アイヌとの暮しなど、文献が乏しいド田舎の庶民の暮しの様子が歯に衣を着せぬ描写で書かれています。明治初期の日本の田舎(6~7月)では、男は、ほどんど素っ裸で暮していたことや、畳にはノミがたくさんいて、そのままでは眠られず携帯用折り畳みベットと蚊帳を持ち歩いていたことなども、予想以上に衛生状態が悪いことがわかりました。宿屋ではプライバシーが皆無で、障子に穴を開けて常時除かれていたことや野次馬が多く警官が来て追い払ってくれたことなども面白いです。
逆に、治安がよく、西洋人の女一人が旅をしていても、襲われたり騙されたりすることがないことや、祭りなどの大勢の人が集まる場でも、驚くほど警官の数が少ないことなどがあげられていました。
日本の近代化が急速に進んだのも治安の良さが大きく貢献しているのでしょう。
北海道ではアイヌとともに生活し、彼らの生活をよく観察して、記録に残しており、貴重な資料になっているはずです。
また、スケッチによる挿絵も精密で、写真よりわかりやすく感じました。
北海道の噴火湾から室蘭・紋別の絶景をほめたたえていたので、北海道に行ったら、よってみたい場所に加わりました。
後ろ1/4は、東京より神戸・大阪・京都・奈良・伊勢神宮などを巡っていますが、置く日本の記録より希少価値が低く感じます。それでも、10年くらい前までは攘夷だと刀を持って殺気だった侍が闊歩していた土地が、安全に旅をできる土地に変わったのには驚かされます。
当時の日本の財政状況や、政治のあり方などが総括的に書かれており、なりふり構わず西洋化に進んでいく様子が垣間見れました。