結核が死の病だった時代のサナトリウム文学の傑作。
幾多の類似小説が姿を消していった中で今の時代までに読み継がれているだけに、芸術的な苦悩が見える文学作品である。
舞台は軽井沢らしい長野県の高原の山荘とサナトリウムであり、貧しい日本の中で、若くして余生を送ることになった結核患者の恋と生と死の風景である。
山々の自然の中で、生きることと死ぬことしか考える必要が無い若者というのはある意味、哲学者になる以外無いのかもしれない。
限られた世界の中で、時間だけ十分にあるのだから、思考は巡り、ある種の息苦しさを募らせながら、時が過ぎていく。
悲劇の快感に身をゆだねるなら、それもよい余興となろう。