田中雄二の「映画の王様」

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『新聞記者』

2019-08-09 11:29:38 | 新作映画を見てみた
 
 ある日、東都新聞の記者・吉岡(シム・ウンギョン)のもとに、大学の新設計画に関する極秘情報の匿名FAXが届く。一方、内閣情報調査室の杉原(松坂桃李)は、政権のために情報操作を行う仕事について葛藤していた。そんな中、大学の新設計画に関わった杉原のかつての上司・神崎(高橋和也)が投身自殺をする。日韓のハーフの新聞記者とエリート官僚が事件の闇に迫っていくが…。
 
 現政権のスキャンダルにも似た設定であり、よくぞ作ったという言い方もできるし、インターネットやSNSの存在によって、新聞はもとより、ジャーナリズム全体が変容したことがよく分かる。ただ、情報の操作は形こそ違え、昔から行われてきたことなので、これは普遍的な問題だとも言えるだろう。
 
 監督の藤井道人は難しい題材をよく頑張って描いたとは思う。ただ、登場人物たちの不安感や揺れる心を表すためなのかもしれないが、やたらと画面を揺らすのはいかがなものかと感じたし、新聞記者の仕事の描き方も雑な気がした。
 
 ウンギョンは新聞記者を演じるに当たって『スポットライト 世紀のスクープ』(15)を参考にしたというし、彼女もまたよく頑張って演じたとは思うが、主人公を日韓のハーフにする必然性はあまり感じられなかった。これはキャスティングの影響なのだろうか。
 
 かつて日本にも、山本薩夫や熊井啓といった社会派監督と呼ばれる人たちがいた。もし彼らが今の時代にいたとしたら、こうした題材をどう描いただろうかという興味が湧いた。
 
コメント
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