『コクーン』(85)(1986.1.15.日劇プラザ)
昔々、アトランティス大陸の沈没とともに海底に没したコクーン(まゆ)を連れ戻すため、エイリアンが地球にやってくる。彼らと心を通わせた老人たちが、コクーンの不思議なエネルギーで若さを取り戻し、不老不死の惑星へ旅立つか否かの選択を迫られる。
『スプラッシュ』(84)に続くロン・ハワード監督作。スピルバーグ的なものを感じさせながらも、彼とはひと味ちがう温かさを持った監督が現れたことを喜びたい。この映画に見られる老人たちを映すカメラの優しさ、劇中に悪人が一人も出てこないのに違和感を抱かせない作劇のうまさから、老練な映画監督というイメージすら浮かんでくる。そして、どうもハワードは水しぶきが大好きなようだ。
そんなハワードとスピルバーグとの決定的な違いは、主人公が現実からいなくなってしまうラストシーンに象徴される。『スプラッシュ』では泳げない男が人魚と共に海中へ、この映画では老人たちが船ごと宇宙へという、何も知らない者が見たら、単なる自殺と思っても不思議ではない描き方をしているからだ。そこに、苦さを感じさせられて、スピルバーグの『未知との遭遇』(77)や『E.T.』(82)とは、またひと味違った感慨が浮かんでくるのだ。
それにしても、ドン・アメチー、ヒューム・クローニン、ジェシカ・タンディ、ウィルフォード・ブリムリー、モーリン・ステイプルトン、グウェン・バードン、ジャック・ギルフォード…、この映画に出たアメリカの超ベテラン俳優たちがあまりにも見事過ぎて言葉にならない。