『マネー・ピット』(86)(1987.8.5.)
弁護士のウォルター(トム・ハンクス)と恋人のアンナ(シェリー・ロング)は、大邸宅を破格の安値で手に入れる。ところが、次から次にトラブルが発生する。欠陥だらけのマイホームを悪戦苦闘しながら改修するカップルの大騒動を描いたドタバタ・コメディ。「マネー・ピット」とは金食い虫のこと。製作はスティーブン・スピルバーグのアンブリン・プロ、監督は俳優出身のリチャード・ベンジャミン。
今年(86年)の正月映画の中では大コケしたようだが、実は大受けした『トップガン』よりも面白いのでは…などと、ひねくれた期待をしていた。見てみると、なるほど大作ではないし、ベンジャミンの初監督作ということもあってか、いささかギャグが空回りしているところもあるが、セックスに対する潔癖ぶりや、ハートウォームのハッピーエンドに捨て難い魅力があった。
洋の東西を問わず、住宅難は存在するようで、欠陥住宅の改修と一組のカップルの愛の行方を対比的に描くアイデアはなかなか面白い。スピルバーグとしては、『1941』(79)の失敗を例に出すまでもなく、事コメディに関しては、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)やこの映画のように、製作に回って、他の監督に撮らせた方がいいと思う。
昨日、同じくアンブリン製作の『世にも不思議なアメージング・ストーリー』を見たばかりなので、プロデューサーとしてのスピルバーグの才能の豊かさを改めて知らされた思いがする。
【今の一言】やられ役コメディアンとしての、若き日のトム・ハンクスの魅力が存分に楽しめる映画。当時、スティーブン・ビショップが歌ったエンディング曲「The Heart Is So Willing」のシングルレコードを見付けるのに苦労した覚えがある。