東西冷戦下のポーランドを舞台に、戦後設立された民族合唱舞踏団で出会ったピアニストのビクトル(トマシュ・コット)と歌手のズーラ(ヨアンナ・クーリグ)が、15年にわたって東西両側で揺れ動き、別れと再会を繰り返す様子を、音楽を媒介にして描く。ポーランドの体制の変化に加えて、2人が関わる民族音楽、伝統音楽、ジャス、ロック、映画音楽などから近代音楽の変遷が垣間見えるところもある。
ポーランド、ベルリン、ユーゴスラビア、パリと舞台を移しながら繰り広げられる男女の腐れ縁の話だが、パヴェウ・パヴリコフスキ監督は自らの両親をモチーフにしたという。モノクロスタンダードの画面が新鮮な印象を残し、冗漫になりかねない話を88分にまとめた省略法にも見るべきところあり。