田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

ピーター・フォンダが亡くなった『イージー・ライダー』

2019-08-17 20:30:41 | 映画いろいろ
 
 
 ピーター・フォンダが亡くなった。父ヘンリーに反発し、一時は反体制の旗手とも言われた人だが、来日時に、淀川長治先生が「あなたのお父さんの映画では何が好き?」と聞いたら、『荒野の決闘』と答えたそうだ。そういえば、監督・主演した佳作『さすらいのカウボーイ』(71)も西部劇だった。久しぶりに姿を見掛けた『3時10分、決断のとき』(07)では、年を取って父ヘンリーそっくりになっていて、時の流れを感じさせた。
 
 でも、代表作となるとやはりこれになるのかな。『イージー・ライダー』(1974.1.13.日曜洋画劇場)
 
(2009.9.18.)
 
 何年ぶりかで見たのだが、まさかこんなにつまらなく感じるとは思わなかった。ニューシネマはあの時代の空気に敏感だった分、風化するのも早いのか。ファーストシーン、腕時計を捨ててバイクで旅に出る2人、そこに流れるステッペンウルフの「ボーン・トゥ・ビー・ワイルド=ワイルドで行こう」、モニュメントバレーにかぶるザ・バンドの「ウェイト」カッコいい。
 
 ところがいいのはここまで中盤はひたすらだれる。まるで出来の悪いイメージビデオを見ているような印象すら受ける。それを救うのが脇役時代のジャック・ニコルソンと唐突だが衝撃的なラストシーンということになる。
 
 ただ、今回はこの映画のバイクを馬に乗り換えたら西部劇っぽいところもあると感じた。中でも、モニュメントバレーの風景や馬小屋でバイクのタイヤを代えるシーンは象徴的だ。ピーター・フォンダのキャプテン・アメリカことワイアット(アープ?)、デニス・ホッパーのビリー(ザ・キッド?)という役名も含めて。
 
 もっともこの旅は、西部開拓時代のように、東から西に向かうのではなく、西から東に向かうという意味では逆走なのだが。
 
 ところで、ビートルズの「シー・セッド・シー・セッド」は、1965年にジョンがピーター・フォンダの家でLSDを服用してトリップした際の出来事をモチーフにしているという。そういう時代だったのだ。
 
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『引っ越し大名!』

2019-08-17 12:55:55 | 新作映画を見てみた

 姫路藩が幕府から日田への国替えを言い渡される。書庫番から引っ越し奉行に任命された片桐春之介(星野源)は、幼なじみで武芸の達人の鷹村源右衛門(高橋一生)、前任の引っ越し奉行の娘・於蘭(高畑充希)の助けを借りながら、何とか引っ越しを成就させようとするが…。
 
 原作・脚本『超高速!参勤交代』(14)の土橋章宏、監督『のぼうの城』(12)の犬童一心による“ニューウェーブ時代劇”の一種。「引っ越し唄」をバックにミュージカル風の趣向も凝らしながら、現代の転勤族やリストラにも通じる悲哀をコミカルに描く。
 
 引きこもりのような春之介が段々と侍になっていく変化を体現した星野、豪快な侍を演じた高橋の意外性にも増して、年下の高畑の見事な女っぷりが印象に残る。時代劇の生き残りを考えれば、こうした変化球映画があってもいい。
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