ピーター・フォンダが亡くなった。父ヘンリーに反発し、一時は反体制の旗手とも言われた人だが、来日時に、淀川長治先生が「あなたのお父さんの映画では何が好き?」と聞いたら、『荒野の決闘』と答えたそうだ。そういえば、監督・主演した佳作『さすらいのカウボーイ』(71)も西部劇だった。久しぶりに姿を見掛けた『3時10分、決断のとき』(07)では、年を取って父ヘンリーそっくりになっていて、時の流れを感じさせた。
でも、代表作となるとやはりこれになるのかな。『イージー・ライダー』(1974.1.13.日曜洋画劇場)
(2009.9.18.)
何年ぶりかで見たのだが、まさかこんなにつまらなく感じるとは思わなかった。ニューシネマはあの時代の空気に敏感だった分、風化するのも早いのか。ファーストシーン、腕時計を捨ててバイクで旅に出る2人、そこに流れるステッペンウルフの「ボーン・トゥ・ビー・ワイルド=ワイルドで行こう」、モニュメントバレーにかぶるザ・バンドの「ウェイト」カッコいい。
ところがいいのはここまで中盤はひたすらだれる。まるで出来の悪いイメージビデオを見ているような印象すら受ける。それを救うのが脇役時代のジャック・ニコルソンと唐突だが衝撃的なラストシーンということになる。
ただ、今回はこの映画のバイクを馬に乗り換えたら西部劇っぽいところもあると感じた。中でも、モニュメントバレーの風景や馬小屋でバイクのタイヤを代えるシーンは象徴的だ。ピーター・フォンダのキャプテン・アメリカことワイアット(アープ?)、デニス・ホッパーのビリー(ザ・キッド?)という役名も含めて。
もっともこの旅は、西部開拓時代のように、東から西に向かうのではなく、西から東に向かうという意味では逆走なのだが。
ところで、ビートルズの「シー・セッド・シー・セッド」は、1965年にジョンがピーター・フォンダの家でLSDを服用してトリップした際の出来事をモチーフにしているという。そういう時代だったのだ。