田中雄二の「映画の王様」

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『いのちの紐』

2019-08-30 11:20:34 | 映画いろいろ
『いのちの紐』(65)

   

  

 NHKのニュースで、自殺防止のための、SNSでの相談の様子をリポートしていた。それを見ながら思い出したのがこの映画だった。
 
 自殺防止の電話緊急相談所でボランティアをしている 大学生のアラン(シドニー・ポワチエ)。所長(テリー・サバラス)が留守のある晩、彼は睡眠薬を飲んだという女性(アン・バンクロフト)からの電話を受ける。アランは、何とか名前や住所を聞き出して女性を助けようと懸命に話を続けるが…。
 
 テレビドラマ出身のシドニー・ポラックの映画監督デビュー作。それ故、舞台劇やテレビ、ラジオドラマの発展形という感じもするが、挿入される女性の回想、サスペンスを高める電話局や警察による逆探知の様子、舞台となったシアトルの夜景などに、映画的な工夫が見られる。もっとも脚本のスターリング・シリファントは、原作のルポルタージュから映画用に話を広げるのには随分苦労したようだが。
 
 とにかく身のこなしがかっこいいポワチエ、エキセントリックなバンクロフト、珍しく悪役ではないサバラスによる演技合戦、そしてスティーブン・ヒル、エドワード・アスナー、ダブニー・コールマンといった脇役たちも好演を見せる。
 
 今の目から見ると、回想の挿入の仕方のまずさが目に付き、バンクロフト演じるヒロインに感情移入しずらい面があるなど、人物描写にも多少の難があるのは否めない。むしろ、大いなるお節介といってしまえばそれまでだが、一人の自殺志願者の命を救うために、施設、電話局、警察、消防、病院…など、これだけ多くの人々が懸命に努力している姿に感動させられる。
 
 ジャズ風の音楽はクインシー・ジョーンズ。ポワチエ、シリファント、クインシーの組み合わせは『夜の大捜査線』(67)につながる。
 
 ところで、近作の『THE GUILTY ギルティ』は、多少なりともこの映画から影響を受けているのではないだろうか、という気がした。
 
【ほぼ週刊映画コラム】『THE GUILTY/ギルティ』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f7ef5962e0a6c392c351fd57afc4232e
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