亡くなった桑田次郎の漫画は、登場人物のシャープなボディラインや洋画を思わせるような風景に魅力があった。その最たるものは、やはり『8マン』(エイトマン)だろう。
捜査中に瀕死の重傷を負った刑事・東八郎は、天才科学者・谷博士によって、精神をロボットの電子頭脳に移植される。そして、超高速で疾走する鋼鉄のスーパーロボットで、警視庁捜査一課にある七つの捜査班のいずれにも属さない八番目の男「8マン」として復活する。
東は、通常は私立探偵として生活しているが、ひとたび事件が起き、警視庁の田中課長から要請を受けると、8マンに変身し、事件に立ち向かうのだった。
平井和正の原作で『週刊少年マガジン』に連載された漫画は、後から秋田書店のコミックスにまとめられたものを読んだので、どちらかと言えば、8マンのイメージは繰り返し放送されたテレビアニメの方が強い。
新幹線の横を疾走し追い抜く8マンが映る、耳に残る主題歌(作詞・前田武彦、作曲・萩原哲晶、歌・克美しげる)にまずやられ、本編にも、「鉄腕アトム」や「鉄人28号」などと比べても、とにかく画がシャープでかっこいい、という印象を受けた。加えて、タバコ型の強加剤を模したココアシガレットや、丸美屋のふりかけのパッケージやおまけのシールなど、今で言うタイアップ商品も子供心をくすぐった。
ところで、ずっと後になって『ロボコップ』(87)を見た時に、「これって『8マン』じゃん」と、懐かしく思ったものだが、日本でも実写映画『8マン・すべての寂しい夜のために』(92)という珍品があった。8マン=東八郎を宍戸開、谷博士を宍戸錠、田中課長を高橋悦史が演じていた。