田中雄二の「映画の王様」

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ポール・マッカートニー日本公演1990

2020-08-16 19:35:01 | ビートルズ

ポール・マッカートニー日本公演(1990.3.3.東京ドーム)

 来日前の日程変更で、またか…という不安を抱かされたが、ついにポール・マッカートニーの日本でのコンサートが実現した。となれば、こちらにとっては中止となった75年、80年以来、3度目の正直、足掛け15年にもおよぶ思いが募り、矢も楯もたまらず、当日券で東京ドームへ駆け付けた。

 アリーナ席とはいえ、ローリング・ストーンズの時と同様に、今回も決していい席ではなかったのだが、何しろ今回は思い入れが違う。最初に俺をロックにのめり込ませたグループの一員であり、それ以来、長きにわたって自分の喜怒哀楽に併せて聴き続けてきた人、いわば恩人とも呼べる人のコンサートなのである。これが尋常でいられるはずがない。実際、この人ほど、音楽で俺を楽しませてくれた人はほかにいないのだから。

 そして、今夜のコンサートは、ポール・マッカートニーのファンであり続けて本当によかったと思えるものだったし、いまだに大看板を背負って現役として活動し続ける姿にも胸を打たれた。

 ところで、ストーンズのコンサートの時に、ミック・ジャガーとキース・リチーズの掛け合いを見て、ジョン・レノンを失ったポールが歌うビートルズナンバーを違和感なく聴けるのか、という危惧があったのだが、うれしいことにそれも杞憂に終わった。それは、ポールも年を取り、ビートルズという化け物から解放され、ビートルズナンバーを素直に歌えるようになったからなのかもしれない。

 と、いろいろとごたくを並べてきたが、正直なところ、今は夢がかなって半ば腑抜けの状態。順調にいけば、あと2回見られるので、その時はもう少し落ち着いたことが書けるかもしれない。 

ポール・マッカートニー日本公演2(1990.3.9.東京ドーム)

 あの日から1週間、その間ちゃんと公演が行われていることを確認し、それを喜びながら日々が過ぎていった気がする。そしていよいよ2回目だ。

 今回は予習ができていたので、多少は余裕が持てる、と思ったのも束の間、図らずもクローズド・サーキットなる衛星全国ネットの日ということで、多分、本公演中の最高の出来に当たってしまった。初日は、ひいき目に見ても、喉の調子があまりよくなさそうに見えたので、これはうれしい誤算であった。

 また、初日は弟と、今回は先輩後輩を含む友人たちと一緒に見ることで、改めて、自分の中にあるポール・マッカートニーという存在を振り返ることができたのも、至上の喜びとなった。

 初めて買ったビートルズのLPレコード『オールディーズ』に入っていた「キャント・バイ・ミー・ラブ」「エリナー・リグビー」、同じく初めて買ったシングル「ヘイ・ジュード」、様々な思い出とオーバーラップする「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」「ザ・フール・オンザ・ヒル」、後付けで買って聴いてぶっ飛んだ『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』『ホワイト・アルバム』『アビー・ロード』からの曲、わが青春時代と同時進行してきたウィングス時代の「バンド・オンザ・ラン」「ジェット」、そして新譜の『フラワー・インザ・ダート』からの曲が、これらと決して見劣りしないのも素晴らしい(「イエスタデイ」「レット・イット・ビー」はもはや当たり前過ぎて…)。

 これだけ並ぶだけでもすごいのに、このほかにも名曲は数知れない。だからあの曲も演ってほしい(例えば「オール・マイ・ラビング」「アンド・アイ・ラブ・ハー」「ヒア・ゼア・アンド・エブリホエア」「アイム・ダウン」「ジュニアーズ・ファーム」「あの娘におせっかい」「心のラブソング」…)というぜいたくな望みが湧いてくる。来てくれるだけでも十分だと思っていた来日前とはえらい違いだ。

 ところで、ポールを引き立てる黒子に徹していたロビー・マッキントッシュ、ハミッシュ・スチュアートたちの活躍も、感謝の意も込めて記憶にとどめておきたいと思う。

セットリスト
1.フィギュア・オブ・エイト
2.ジェット
3.ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントウ・マイ・ライフ
4.ラフ・ライド
5.バンド・オン・ザ・ラン
6.ウイ・ゴット・マリード
7.幸せのノック
8.ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード
9.ザ・フール・オンザ・ヒル
10.サージェント・ぺバーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド
11.グッドデイ・サンシャイン
12.キャント・バイ・ミー・ラブ
13.プット・イット・ゼア
14.ハロー・グッバイ
15.今日の誓い
16.エリナー・リグピー
17.ディス・ワン
18.マイ・ブレーブ・フェイス
19.バック・イン・ザ・USSR
20.アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア
21.カミング・アップ
22.レット・イット・ビー
23.エイント・ザット・ア・シェイム
24.死ぬのは奴らだ
25.ヘイ・ジュード
アンコール
26.イエスタデイ
P.S. ラブ・ミードゥ
27.ゲットバック
28.ゴールデン・スランバー/キャリー・ザット・ウエイト/ジ・エンド

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『ビートルズは眠らない』(松村雄策) リンゴ・スター&ヒズ・オールスター・バンド

2020-08-16 12:18:57 | ビートルズ

 1990年のポール・マッカートニーの初来日公演から、2002年のジョージ・ハリスンの死、そして03年の『レット・イット・ビー…ネイキッド』までに書かれた文章を集めたものを再読。

 松村さんの文章は、いつも後追いの形で読むのだが、このへんになると、ようやく自分とも同時進行になる。松村さんが「1989年からの3年間はビートルズ・ファンにとっては、信じられないような3年間だった」と書いているように、リンゴ、ポール、ジョージが次々と来日公演を行ったのだった。

『ウィズ・ザ・ビートルズ』(松村雄策)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/58a81ab4b7b1af8d0f1de72a52b7b4e5

リンゴ・スター&ヒズ・オールスター・バンド(1989.11.7.日本武道館)

 1966年のビートルズ日本公演から23年。その時をライブでは味わえなかった、俺のような遅れてきたビートルズファンにとっては、80年のポールの逮捕、ジョンの死を経て、ついにビートルズの一人であるリンゴが目の前(ではなかったが…)で歌い、演奏しただけでうれしいには違いないはずなのだが、同時に、やっぱりリンゴじゃ盛り上がらないよな、という感慨が浮かんできたのも否めなかった。

 オールスター・バンドと銘打たれた豪華メンバーが、リンゴと共にビートルズナンバーを演るたびに、ほかの3人の影が浮かんできて、複雑な気持ちになった。それはザ・バンドのレボン・ヘルムとリック・ダンコ、元イーグルスのジョー・ウォルシュにも当てはまる。その分、ビリー・プレストンやクラレンス・クレモンスたちの個人技が目立つところがあった。混成バンドの悲しさである。

 ただラストで、リンゴの、引いてはこのコンサートのテーマ曲とも言うべき「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・マイ・フレンズ」が聞こえてきたときには、さすがにグッときた。そうか、リンゴはこれでいいのかもしれないなあ。

セットリスト
1.明日への願い
2.ノー・ノー・ソング
3..イエロー・サブマリン
4.Icko Icko
5.ザ・ウェイト(レボン・ヘルム、リック・ダンコ)
6.Shine On
7.ゲット・バック
8.アクト・ナチュラリー
9.ハニー・ドント
10.ユアー・ア・フレンド・オブ・マイン(クラレンス・クレモンズ)
11.ザ・シェープ・アイム・イン(レボン・ヘルム、リック・ダンコ)
12.彼氏になりたい
13.駆け足の人生(ジョー・ウォルシュ)
14.ならず者(ジョー・ウォルシュ)
15.Raining In My Heart
16.Cripple Creek
17.ボーイズ
18.Angry
19.Candy
20.Right Place
21.A Quarter To Three
22.ロッキー・マウンテン・ウェイ(ジョー・ウォルシュ)
23.ナッシング・フロム・ナッシング(ビリー・プレストン)
24.想い出のフォトグラフ
25.ユア・シックスティーン
26.ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンド

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