みちしるべの伝説

音楽と希望は刑務所でも奪えない。

天から降る音の粒子

2009年11月12日 | 音楽
日経の夕刊、経済欄は素通りしても、文化欄はなるべく読むようにしているのでした。
今日は、名フィル(名古屋フィル)の公演の感想で、改めて、音楽っていいなあと思うのでした。

2009/11/12日経夕刊 天から降る音の粒子(音楽評論家:上田智美)
思いもかけず私のうち深くを揺るがしたのはリャードフと武満徹の作品である。
 まず前者の『魔法にかけられた湖』の第1フレーズが奏でられたとたん、キラキラ繊細にさざめく音のヴェールにすっぽり包みこまれてしまった。オープニングは日常から非日常への懸け橋を担う大切な場面だが、今回ほど瞬時に魔法をかけられたようなワクワク感を味わうのもめずらしい。指揮者の卓越した業か曲の抱く魔力なのか、おそらく双方がみごとに調和した幸せな例だろう。
 ゆらゆら揺らめく水面に反射する光のスペクトルがあまたの鈴のように一斉に鳴り響き、細かく砕けた音の粒子が天から降り注いでくるようだ。このふしぎな感覚は、次の武満の『ア・ストリング・アラウンド・オータム』において、もはや音楽という枠を超えた次元に私をいざなう。
 ふと思い浮かんだのは、この宇宙のすべてを11次元の空間のなかで震える「ひも」の調和振動と考えるストリング理論だ。物理学者ブライアン・グリーンいわく、極微小なストリングは時間と空間の「破片」であり、ストリングの存在する規模では時間も空間も溶けてつかみどころのないものになってしまうらしい。今井信子のヴィオラ=ストリングが、オーケストラの響き=宇宙のなかで静かにたたずみ沈黙し、ふたたび沈黙をやぶって絶え間なく揺れ動く。その緻密なゆらぎとともに宇宙のなかに溶けこんでしまうかのような玄妙な趣に包まれた。


音楽評論の正しき姿。
素晴らしい音楽から、より素晴らしい世界への誘い。
音楽の果ては、物理学や数学との境界もおぼろげになって、宇宙と溶けていくのだ。

「時間と空間の破片」とか、「時間と空間が溶ける」とか、最先端の物理学が詩の世界に近いのはふしぎ。

いつの日か、こんな境地で、音楽を楽しめる日が来るといいなあ・・・。
ピアノを続けることの楽しみは、こういう世界に近づけること。

また音の魔法にかかってみたい。

アルバムの綴り~ロシア・ピアノ小品集
トロップ(ウラジーミル)
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このアルバムに入っていたリャードフの小品、好き。

超弦理論・・・な、な、な、なんじゃらほい???
コメント (2)
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